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賢者と役立たずの違いは大きいみたいです

さて、宰相さんは一通りのお話を終えたあと


「このままでは人間は魔族に虐げられ、ゆくゆくは支配されてしまいます。私たちはそれを阻止するには賢者である貴女のお力がどうしても必要なのです。どうかっ!!どうか我々に力を貸していただけないでしょうか!!」


と、由梨乃ちゃんに懇願していた。


もし私が由梨乃ちゃんの立場なら丁重に(表面上)かつ徹底的に固辞していたところだけど。おざなりに扱われた立場と手厚く迎えられた立場の違いか、それとも元々持っていた正義感の違いか、由梨乃ちゃんは


「私にできることなら精一杯お手伝いします。」


とあっさり承諾した。


そもそも後から考えたら


召喚されて元の世界に帰してもらう術がない

=問答無用でこちらの世界で暮らさなければならない

=断ったとしても最終的に「魔族からの支配」に巻き込まれる

=選択の余地ないじゃん。


ということに気がついたけど。それについて故意的なのかそうでないのかは聞く機会を逃したのでわからないままだ。



宰相さんの口ぶりは由梨乃ちゃんに対して話しているのであって私のことは基本的に空気扱いみたいだったし、さっきみたいに質問して馬鹿にしたような態度を取られるのは私の気のせいだったとしても傷つくので余計なことは言わないことにしていた。


でも


『その初代賢者は一連の騒動の後、最終的に元の世界に帰られたのですか?それともずっとこちらの世界に残ったのですか?』


これだけははっきりさせておきたかった。



この質問に対して宰相さんは少しバツの悪そうな表情を浮かべる。


「当時のあらゆる文献を調べてみてもその後の賢者に関する記載は見つかっておらず、そこは今でも研究や議論の対象になっています。しかし元の世界に帰す手段があるならそれも召喚の方法と一緒に記載されているはずなので、今のところはこちらの世界で一生を送ったというのが一番有力な説です。人々に語り継がれている話としては一般市民と結ばれて生涯幸せに暮らしたというのが一般的なものとされております。」


「帰れないんですか!?」

『なんでそこで一般市民なんですか?』


由梨乃ちゃんと私が疑問を発したのは同時だった。

私の内容は頭の悪そうな感じMAXだったけど。あ、なんか宰相さんの視線が一層冷たくなったような…。


「役目さえ果たしたら後は帰れるのかと思った…」


由梨乃ちゃんの声は消え入りそうだった。


「それに関しては本当に申し訳ないと思っております…しかしこちらがあなたにとって暮らしやすい場所になるべく、できる限りの手助けはさせていただくつもりです。世話を任せる者の配置も決定しておりますし、衣・食・住もこちらで保証いたします。」


という宰相さんの説明に由梨乃ちゃんは少々納得のいかない表情ではありつつも、最終的には


「帰れないのなら…仕方がないですね。迷惑をおかけすることもあると思いますがよろしくお願いします」


と、承諾した。迷惑をおかけするって言うか、むしろ現時点で迷惑かけられてるの私たちだけどね。


宰相さんの説明に対象を表す言葉が“あなた”となっていた時点でうすうす感じてはいたけれど…その対象に私は入っていないらしい。後日、魔王討伐について行かなければ国から追い出すと言われたとき、当然この宰相さんの発言について申し立ててみたら


それは“賢者”に対しての話であって、“賢者”でないお前の面倒などなぜこちらがみなければならないのか。


というような感じのことをあれこれと言われた。

勝手に呼び出した人間に対して、せめて住む場所と職くらい提供するのはマナーなのではないのか?…それとも利用価値ゼロな役立たずに選択肢を与えてる時点でまだマシなのか?大人の言うところの“ゆとり世代”の私には不満タラタラだったけど、男性の方々は腰に剣を携えている方も多かったので、余計なことをして殺される前に首を縦に振りました。こんなところで死んでたまるか。


帰れないことにショックを受けて未だに少し動揺と落胆を隠せない由梨乃ちゃんを心配した宰相さんはこれでお話を終わりにして、今日はもうゆっくり休むようにと部屋に案内された。




あれ、私の疑問無視された?


…別にいいけど。


説明ばっかりの文章でごめんなさい…

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