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宰相さんのお話は続きます

この国の宰相さんのお話によれば


もともと800年ほど前までは人族も魔族も一緒に暮らしていた。

しかし種族が違えばそこに差別が生じ、いつの間にかお互い嫌悪の対象となっていった。

魔力により魔術を使う魔族に対抗するために人は精霊を使って魔術を使うことに成功。

しかしそれは争いを拡大させる結果になってしまい、最終的には両族の王の話し合いにより『お互いの領域を完全に分割し、干渉することなく別々に暮らしていく』という結論に至り、深い森や海を隔てて二分してそれぞれの領域とした。

しかしその際、お互いの地に魔力源は均等にという王の主張を魔王は力でねじ伏せて魔力源を奪い、その一部だけを王に渡した。

この魔力源というのが世界を満たし、安定させるほどの強力な魔力を持つ魔石である。

不満はあったものの魔力を自在にあやつる魔族、しかも魔王にかなうはずもなく、また世界の全魔力の一部といえど領域内の魔力を満たすには全く問題ないほどの魔力源ではあったので王はそのまま無理に争うことはせずに妥協した。

はじめのうちはいろいろと諸問題が生じつつも、それ以来人間と魔族は仲良くもなければ争いもしない、そうやってそれぞれ穏やかに過ごし、それぞれの国が栄えていきましたとさ。

ちなみに魔力源の魔石を代々守っていくことがそれぞれの王族の使命のひとつとなっている。


…というのがこの国、もしくは魔族の国の始まりらしい。


魔王様、精霊、魔術、魔石。なんてファンタジック!


その話が何故賢者と繋がるかというと


この話の「人間が魔術を使うことに成功した」という部分。

つまりそれまで人間は魔術を使えなかったということ。それを可能にしたのは異世界から来た賢者のおかげということらしい。


ん?人間、まだ魔術使えないのにどうやって賢者呼んできた?


という疑問がわいてきたが


実は彼(あるいは彼女)はもともと魔族が召喚した者で、賢い賢者は悪である魔族ではなく善である人間の味方についたらしい。


子どもに聞かせる教訓じみたお伽話みたいですね…というツッコミは心の中だけにしときました。ええ、空気読みました。私エライ。たぶんここで重要なのは「賢者のおかげで人間が魔術を使えるようになった」という部分のみなんだろう。


当時の王は「今後魔族との間に何かあれば、きっと賢者が知恵を貸してくれるだろう」と、召喚の術を残してそれが代々王族に伝わっていった。


…なんとも迷惑な話である。異次元レベルで無関係な人間巻き込むんじゃないよ!むしろこの世界のことを全く知らない人間にそんな重要なことの一端を任せるのは嫌じゃないのか?いや、嫌じゃないから召喚したんだろうけどさ。(ちなみに賢者以外はこの世界から集められている。)

私たちが召喚されたということはつまり、800年前の王様の言うところの「魔族との間に何かあった」ということになるわけで。


ここ数年、人が魔族に襲われる被害が相次ぎ、特にここ半年ほどで飛躍的にその数は増えているのだそうだ。襲われた人は皆、国の狭間である森の中で魔族による魔術の痕跡を残して遺体で発見されている。(魔術の痕跡でどちらによるものなのか判別がつくらしい。)襲われた人の仕返しをしようと魔族の国に近づこうとした人間が全員、さらに新たな被害者となるのが被害の増加の理由のひとつみたいだ。そうやって人間を問答無用で瞬殺するような相手なので、話し合おうにもうかつに近づくことが難しいらしい。


それに加えて、この国では魔石の魔力が徐々に低下してきているというデータが確認され、今のところは特に異常を感じることはない程度だが、放っておけばいつしか魔力が不足してしまうかもしれず、できるだけ早く手を打つ必要があるという。


しかし人間が使う魔術は魔力ではなくて精霊を使うので、無理に魔力を維持する必要はないんじゃないの?


という私の疑問に宰相さんは“やれやれ、これだから役立たずは…”というような目で私を一瞥して面倒くさそうに(きっと私の被害妄想)答えてくれた。

その魔術に必要不可欠である精霊は魔力がなければ生きていけないらしい。確かによく考えれば魔力が必要ないなら800年前に領地を分けたときに魔力まで分配する必要ないか。なるほど。


そこで王様をはじめとする国の偉い人たちは魔族に立ち向かうこととし、また、被害を減らすために彼らの魔力の低下を目的に魔石を奪い、そうすれば国の魔力の回復にもつながると考えて魔族と戦えるよう強い者たちを集めて魔王討伐チームが組まれることになり、私たちが召喚された。



宰相さんの長いお話に由梨乃ちゃんは相槌をうちながら真剣に聞いていたけれど、私は大人しく、悪く言えばぼんやりと聞いていた。このあたりが一目で賢者と役立たずと判断される人間性の差なのか。

期待されていないぶん、召喚された理由を知っても自分にはあまり現実味が持てず「ふーん、そうなんだぁ~…」というのが正直な感想だった。


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