人と魔族の事情です
私たちはこの世界に『賢者』として召喚されたらしい。
あ、そこは定番の勇者じゃないんだぁ~
なんて思ったことはどーでもいいけど一応秘密。
いきなりこの世界に引きずり込まれた私たちに、宰相さんがこの世界のことを簡単にお話してくれた。
なんでもこの世界は人族と魔族が存在していてそれぞれの領域にわかれ、普段は互いに全く干渉することなく暮らしているらしい。つまり人族の世界と魔族の世界は完全にわかれている。
個人的には『魔族』というと漫画の悪魔像みたいに角が生えていたり黒い羽が生えていたり耳が尖っていたり…もしくはモンスターといったイメージを思い浮かべたけれど、聞いたところ魔族も人族も外見はほとんど同じで、強いて言えば魔族は人よりも寿命が長く、平均的に200~300年くらい生きるらしい。
そんなに寿命が長いと大変そうだな~
なんて呑気なことを考えつつも
ん?人(私を除く)も魔術使えるんだし、じゃあ人と魔族の違いって何ぞや?
という私と同じ疑問を抱いた由梨乃ちゃんが宰相に聞いてくれた。
人族と魔族の違いというのは、魔術の使い方の違いだ。
人の使う魔術とは精霊の力を借りるもの。水、火、地、風の4つが基本的な属性で、まれに光と闇、そしてさらにごくまれにその他の属性を持つ人がいる。
普通は誰でも1人1つ属性を持つけど、2つ持つ人もたまにいる。3つ以上持っていたらすごいらしい。ちなみに由梨乃ちゃんは基本の4つプラス光属性を持っている。これは国お抱えの魔術師と同じかもしくはそれ以上のレベル。
しかし属性が無ければその属性の魔術が全く使えないかというとそんなことはなく、精霊の力の借り方は同じなので基本の4つの属性は得手不得手はあるものの、だいたい誰でも使える。
さて、ここで私の場合
無属性、しかも魔術などない世界の人間の私には精霊の力の借り方などわかるはずもなく魔術が全く使えない。
何、何なの?逆チート!?
この世界は私にとってとても優しくない。
それはさておき、それに対して魔族の使う魔術は自身の持つ魔力をイメージによって発するものらしい。
属性の無い私は実はこっちなんじゃないかとも思ったけど、私には魔力も全く感じられないとのこと。
…あ、そうですか。何となくそうじゃないかって思いましたよ、ええ。(チッ)
しかし属性無し、魔力無しの私でもやっぱりチートではあったみたいで。
その話はまた後ほど。
そして私たちが召喚されたいきさつについて、宰相さんのお話は続く。