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説明を聞くのもするのも苦手です

「これはね、こうやって使うんだよ」


と、第三騎士さんが柄だけの剣を右手で掴み、構えの姿勢をとったと思うと何もなかった柄の先に光の柱のようなものが現れた。パチッ、パチッ、と小さな火花がいくつも散っている。スター●ォーズの光る剣がちょっと歪んだような感じだ。


『光の剣ですか?』


「いや、雷だ」


あ~、なるほどね。雷か。っていうか、雷って基本の属性じゃないですよね。レア属性?


「こうやって自分の属性に合った魔術で剣を作って戦うんだ。」


私は初めて間近で見る魔術に感心して、雷が小さく放電しているのを凝視する。

その間、第三騎士さんはじっとそのままを保ってくれていた。


うーん…剣を使うなら別に魔術を使わなくても剣を極めればいいし、魔術を使うなら別に剣にする必要がない気がする。


「この方が状況に応じて形を変化できて使い勝手が良いからな」


騎士を否定した私の心を読まれたのか、2人はさらに説明してくれた。物わかりが悪くてごめんなさい。


ただでさえこの“美形+エリート騎士(×2人!)”のオーラにあてられているだけで居たたまれない気持ちになってくるというのに、いっそうそれが助長される。


「ちなみに俺は火と風の属性を持っているから炎の剣を振るうってワケだ」


そう言って第一騎士さんも柄を腰から抜き、その先に火柱をつくる。


炎の剣か。彼の鮮やかな赤毛にピッタリですね。(←呑気)


2人はそれぞれ柄の先に作った雷と炎の柱を徐々に大きくしたかと思うと鞭状にしたりボール状にしたりといろいろ変形させてみせてくれた。


しかしいくら使い勝手が良いと言っても、動きながら魔術を使うことは容易ではないため複雑な魔術を使って戦うことはできず、扱うには十分に技術を磨かなければならないし、接近戦で戦うにはもちろん体力も必要とのこと。そりゃそうだ。


騎士は魔術とは無関係だと思っていたけど、魔術と身体技術を組み合わせて戦うのね。


戦いながら魔術を継続させないといけないので、得意である自分の属性のものを扱わないとまともに操れないらしい。


「だから戦において、魔術に集中しなければならない魔術師は接近戦では不利で、一度に広い範囲を対象とする遠方攻撃や守備などに適している」


たぶん由梨乃ちゃんにも同じようなことを教えたんだろう。第一騎士さんは端的に要点を整理して、こっちが聞く前にいろいろと説明してくれる。


「それと魔術で止めを刺すことはできないんだ」


第三騎士さんがさらに補うように言った。


『あぁ、だから普通の剣も必要なんですね』


そういえば図書室で見つけた本にも書いてあったよそんなこと。魔術を殺しに使うことはできなかったんだ。なるほど、最終的にはやっぱり魔術だけじゃなくて剣がいるのね。


納得した様子の私をみて2人は軽く笑みを浮かべて頷いた。


『私、魔術とかない世界にいたので魔術とか想像するの難しかったんですけど…確かに普通の剣よりもいろいろな攻撃ができそうですし、魔術の組合せでいろいろ工夫できそうですね!それに、複数属性を持っていると有利ですねぇ』


私がそういうと2人が顔を見合わせる。


ん…?何か変なこと言った?


「いや、魔術師の場合なら確かに属性の多い方が有利だが…騎士はいくら属性を持っていても戦いでは自分の得意な1つの属性しか使わないのが普通だ。そもそも俺の場合、風は実体がないから剣にできないだろう。騎士向きではない」


2人ともさも「当然だ」とでも言いたそうな雰囲気だ。また頭の弱い子と思われた気がする。


が、それはさておき、私は「風」と「剣」で“かまいたち”を連想した。


…いや、でもあれはつむじ風に乗った“かまいたち”という妖怪が自分の爪で切るから違うか。しかしファンタジーでは“風の刃”とかありそうなのに…話を聞く限りそれはあくまで想像上の話のようである。


同じ魔術でも騎士向き魔術師向きとあるのか。

そして、どうやら騎士は得意の属性1つを極めるタイプらしい。あれこれ手を出さない方がいいってことですかね。


あと、風が刃になるのかどうかは別として(そう考えれば火も雷も刃になるのかどうか疑問になってくるけど)、“竜巻”なんてイメージすれば、2人の持っているような剣にできそうな気がする。竜巻だって自然現象だもの。


「どうかしたのかい?」


あれこれ考えをめぐらせて無言になっていたらしい。第三騎士さんが焦点の合わない私の目線を遮るように覗き込んできた。


…美形に耐性ついてないんです。見とれそうになるんで目の前に顔を出さないでください。私が変人と間違われてしまいます。


内心ドキドキしてるけど、冷静になれと心の中で自分に言い聞かせて考えていたことを口にした。


『せっかく属性を持っているのにもったいないなぁ…と。風なら“竜巻”なんかイメージして剣にできないのかな、とか考えてしまって…。』


「竜巻?」

「竜巻…とは?」


なんと!この世界では竜巻がないですと!?まぁ、日本でも巨大な竜巻なんてめったに起こらないけど。


しかし一度言葉にしてしまったものを中途半端に終わりにするのは気が引ける。というより、2人の視線は私に説明を求めている。


え、説明できるほど詳しくない…余計なこと言わなきゃよかった。


『えぇっとですね、私のいた世界の自然現象のひとつなんですけど…“地面から空にまで届くほどの渦巻き状の突風”とでも言いましょうか。その中心部ではものすごい勢いで風がふいているため大きいものでは大木を根元から吹き飛ばしたり頑丈な建物でも一瞬にして崩壊させるほどの威力を持つものもあるらしいです』


正しいことを言っているのか、いささか不安ではあるけど、側に転がっていた石を使って地面にぐるぐると螺旋を描いて説明してみた。2人が納得しているのかどうかは不明である。


『上昇気流や気圧の関係で起こるみたいですけど詳しくは…』


「ジョウショウキリュウ?」

「キアツ?」


…ここの世界、もしかして化学はあまり発達していないのかも。そういえば電気を使うような文明の利器って見てないし。



“火は水に弱い”とか、“雪は炎に弱い”みたいな、属性の相性ってあるのか とか、

それらを組み合わせて使うことができるのか とか、


疑問はまだあった。しかし“騎士はいくら属性を持っていても戦いでは自分の得意な1つの属性しか使わないのが普通だ”という第一騎士さんの発言から、少なくとも騎士は魔術を組み合わせるということはしないんだろう。そして、属性に相性があったとしても、それらを使えない私には聞いても意味がないと一人で結論づけて、そろそろ話を終わらせることにした。


意外にも長くつきあってくれた2人の騎士さんにお礼を言う。

エリートなのだ。彼らは暇人ではないはずだ。


『お忙しいでしょうに延々と質問につきあわせてしまってすいません。最近人と話すことがなかったのでとても楽しかったです。ありがとうございました』


深めに頭を下げた私に、2人は嫌な感じを全く出さずに優しい言葉をかけてくれた。


「今日はもう仕事も終わってるし、気にしなくていい」

「そう言ってくれたら説明をしたこっちとしても嬉しいよ」


…!お2人ともいい人ですね。イケメンでエリートでこんな性格なんだから、ものすごくモテるんだろうなぁ。



恩人に対して、最終的にはやっぱり呑気なことしか考えない私だった。



第一騎士さんと第三騎士さんのキャラの書き分けができてませんね…。一応、第一騎士さんは堂々とした口調、第三騎士さんは語りかけるような、少しだけ柔らかい口調を意識して書いているつもりです。

あ、それと、国家試験の結果がGW明けに発表されたのですが、合格しました。

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