異世界生活の始まりは理不尽でした
「ついに見つけたぞ!これで貴様も終わりだ魔王!!」
魔王討伐に来た勇者たちご一行が目の前に現れた魔王様に向かって叫んでいた。
私はというと
あぁ、この人が魔王様なんだ…
と、目の前の人物と成り行きをぼんやりと見ていた。
なぜ私がラスボスを目の前にこんな投げやりかというと
ことの始まりは1年ほど前。いや、本当はもっと前からなんだろうけど。
1年ほど前、私は突然この世界に召喚された。同じクラスの由梨乃ちゃんと一緒に。
もともと同じクラスと言っても由梨乃ちゃんと私は特別仲が良いというわけではなく、むしろ人と話をするのが苦手な私はほとんど話したことがなかった。
なぜそんな2人が一緒に召喚されたのか。
それはたまたま学校帰りのバス停で一緒になった瞬間と召喚される瞬間が重なったから。
あと少しで1つ前のバスに乗り遅れた私が1人でバスを待っているところに、由梨乃ちゃんが来たのだ。目が合って、同じクラスだし挨拶くらいしようと口を開きかけたところでトリップ。
召喚されたとき、周りには王様やら魔術師やら騎士などが集まっていてみんなこちらを見ていた。
そして
「賢者さま、どうか我々に力を貸してくださいませんか?」
と、イケメンな勇者様が言ってきた。…由梨乃ちゃんに。
この世界、てゆーかここの王宮、仕える人はぜったい『美形であること』が雇用条件に入っていますよね?と言いたくなるくらいみんな美形。
そんな中、見た目で器量よしの由梨乃ちゃんと不器量の私は彼らにとって既に雲泥の差があったのだろう。
ちくしょう。そりゃ私はブスだけどさぁ、鏡見れば割れるってほどじゃないぞ!むしろ私が普通レベルだ!…たぶん。
そして極めつけに、魔術の属性。由梨乃ちゃんが多数の属性を持っていたのに対して私は無属性。つまり私には魔術がいっさい使えなかった。ちなみに普通は1人1つは属性を持っているらしい。
これが明らかになったときの周りの反応は
「あぁ、やっぱり。」
という納得の顔だった。
くそ。せめて力がチートだったら、人を外見で判断した最低人間どもを見返してやれると思ったのに。何も言えないじゃないか!あぁ腹立つ!!
しかしまぁ話を聞くところ元の世界に返る術もなく、平和な世の中で暮らしてきたジャパニーズガールとして、危険なことはしないに越したことはないので期待されないならそれはそれでよかったんだけど…
王様率いる王子様、王女様、その他上層の方々が、役立たずが賢者をおいてのうのうと過ごすことが許せなかったらしい。
暮らすところが無いからと言って役立たず(しかもブス)を王宮で面倒を見るなんて邪魔なだけ。むしろ金の無駄。旅について行かなければ王宮からどころか、国から(身一つで)追い出すと言われてはお金も魔術も頼る人もいない私は頷くしかなく、従者的ポジションで旅についていくことになったのだ。
そっちが勝手に呼び出したんだから生活くらい保障しろや!せめて追い出すなら職と住む場所くらい提供しろ!!と思ったけど逆らって変なこと言ってしまえば追い出される前に命を奪われる可能性があったので言葉を飲み込んで首を縦に振った。
かくして私は魔王討伐の旅について行くことになったのであります。
これが私の異世界生活の始まりでした。
基本的に脇役主人公が好きなので、こんな話がもっとあればと思ったものを、個人的なメモ的な感じで書いてみようと思いました。
たぶんざっくりした話しか書けないので小説と呼べるものになるのかどうかもあやしいのですが、大まかな内容だけでも楽しんでいただけたら幸いです…。