上位互換、あるいは下位互換
サラッとイジメ描写があります。
よくある婚約破棄時の「教科書を捨てた」とか「階段から突き落とした」に毛の生えたようなレベルではありますが。
後、ちょっと主人公が俺TUEEレベルの何でもできる天才少女系なので、そういうタイプが苦手な方はお気を付けください。
「エリザベータ・マッホ公爵令嬢!私はお前と婚約破棄をし、このミリー・アンブレラと婚姻を結ぶ!」
せっかくの春舞台とも言える卒業式の日。
アホな王子が、アホな事をまた言いだしたなあ、と、私、ラズベリー男爵家の長女ミランダは、美味しいお肉を食べながらぼんやりとその様子を眺めていた。
アンブレラ男爵令嬢の腰を抱き寄せ、王子殿下と、宰相様の息子と、騎士団の息子と、魔法省に勤める公爵様の養子エリザベータ様と同い年の義弟4人が、罵詈雑言を浴びせている。
やれ、エリザベータ様が、アンブレラ男爵令嬢の教科書を破っただの、仲間外れにしただのと、なんともショボい罪状を並べている。
まあ、階段から突き落とした、はちょっと規模が大きいかな。
階段から落ちたはずのアンブレラ男爵令嬢はピンピンしてらっしゃるように見えるけど。
そんなショボい罪状で、男4人+一応王族やら高位貴族の令息達のあだ名を呼びながら恐かった!悲しかった!と鳴く令嬢が、可憐な公爵令嬢1人を責め立てるという、なんとも胸糞悪い状況だ。
せっかくのお肉の味が悪くなる、なんて思いながら眺めていると、王子がつらつらとアンブレラ男爵令嬢を褒め称える。
「ミリーはお前と違って優しく、思いやりがあり……」
うんたらかんたらグダグダと話しているのを聞いて、何か腹が立ってきた。
エリザベータ様が責められるのも貶されるのも、これ以上見たくはない。
「王子殿下!ちょっとよろしいでしょうか!?」
気持ち良くツラツラと喋っていた王子の話を遮って声をかけた。
お前は誰だ?と顔を顰める王子と、嫌そうな顔をして私を見る他男3人。
「お前は誰だ?」
「ラズベリー男爵家の長女、ミランダと申します」
一応ドレスも着ているのでカテーシーをば。
所詮男爵令嬢なので華麗に、とはいかないが、少なくともアンブレラ男爵令嬢よりは綺麗にできてるはず。
「男爵令嬢ごときが、私に話しかけるとは……」
王子殿下が嫌そうな顔をするが。
「え?男爵令嬢ごときを今隣に侍らせているのにですか?」
王子殿下の寵愛を受けていようと、私とアンブレラ男爵令嬢は末端貴族の娘という点で同じようなものだ。
「私ごとき男爵令嬢が話しかけていけないのなら、アンブレラ男爵令嬢も王子殿下に話しかけてはいけないのでは?」
「いや、ミリーは、その……」
ゴニョゴニョと言い訳を考えたようだが、上手く思い付かなかったのか、発言を許す、ととっても上から目線で言われた。
まあ、立場も向こうが上だし、壇上に上がってるから物理的にも上から目線になるのは自然の摂理なんだけど。
「先程王子殿下は、アンブレラ男爵令嬢がいじめられて可哀想だと仰いましたよね?」
「あ、ああ、そうだ。エリザベータはこんなにか弱い彼女をいじめて……」
「そんな事いっさいしておりません」
「嘘を吐くな!ミリーが泣いて私に訴えたのだぞ!」
エリザベータ様の至極真っ当な訴えを、王子殿下はアホな思い込みでばっさりと斬り捨てた。
しかし、そんなアホな王子殿下に私も訴えかける。
「いじめなら、私も受けてました!」
「え?」
「私も可哀想なのに、何故王子殿下はアンブレラ男爵令嬢ばかり庇うのですか!?」
「いや、別にミリーだけという訳では……」
どう見ても浮気をしているというのは皆が知っている状態だが、一応まだ付き合ってないという呈を成したいらしい。
苦しい事この上ないが、王子殿下は私に視線を向けた。
「き、貴様は誰にどのようにいじめられたのだ?」
その言葉に笑いそうになってから、私は王子殿下に尋ねる。
「先程、アンブレラ男爵令嬢は教科書を捨てられたと仰られてましたよね?そんないじめをした人にはどんな罰が必要だと思われますか?」
「勿論国外追放だ!」
いや罰が重すぎるのよ、と笑いそうになりながらも、私は少し顔色の悪そうな宰相の息子を視界の端に入れながら口を開く。
「では、私も教科書を破り、しかも修復できないように焼かれ、ノートも湖のど真ん中に捨てるというような事をされたので、その犯人を国外追放してください」
アンブレラ男爵令嬢より、私へのイジメの方が酷い状況である。
だから、最低でも同じ罪をきせられるという事だ。
「分かった。それは誰だ?まさかエリザベータは貴様にも……」
「この国の宰相様のご子息、シッソク・サィシヨー公爵令息です」
「え…………?」
ポカンとしている王子殿下の隣で、宰相の息子が怒鳴り出した。
「な、何を冤罪をかけようとしているのだ!わ、私がそんな姑息な真似をすると思うのか!?」
お前演技下手だな、という言葉は飲み込み。
私はニヤリと笑みを浮かべる。
「すると思いますよー?だってあなた、3年間私の成績を抜かせなかったじゃないですかあ」
宰相の息子の顔がサッと赤くなる。
私達の学年の成績は、1位2位を私とエリザベータ様で争っていたようなもの。
ちなみに1位になった回数は私の方がちょっとだけ多いくらいだったかな。
万年3位、最終的には順位を2桁にまで落とした彼が、私を恨んでいてもおかしくはない。
「王子殿下の婚約者の公爵令嬢に負けるなら、なんとかプライドが許せても、たかが男爵令嬢に負けるのは許せなかったんでしょ?でもざーんねーん。サィシヨー公爵令息は、私よりもお勉強ができないのが現実」
プルプルと宰相の息子が震えている。
もう一押しかな。
「教科書とかノートがなくなればなんとかなると思った?本当残念ですねえ。私、教科書ぐらいなら全部頭に入ってるんです。教科書やノートがあっても、3位以上になれなかった貴方と違って」
「うるさい!うるさい!うるさい!お前に何が分かる!?私は!私は……っ!」
「せっかくずっと頑張ってたのにね。それで3位にはなれてたのにね。貴方は頑張ってるよ、って、アンブレラ男爵令嬢に言われて、これだけ頑張ってるからもういっかー、って努力を辞めちゃったのよね。そりゃあ、最終試験の結果が順位2桁でもおかしくないわ」
私は、私は、と宰相の息子が膝をつきながら頭を掻きむしっている。
ハラハラと落ちる髪の毛が、妙に生々しい。
「王子殿下!サィシヨー公爵令息は自白したも同然です!国外追放してください!」
私がニッコニッコで訴えると、王子殿下が狼狽えているのが見て取れた。
多少学校の成績が落ちても、宰相の息子という大事な側近だものね。
しかも国外追放と言ったのは王子殿下本人だ。
だが。
「よ、よく考えれば、教科書を破損させただけで国外追放は酷いな。そ、そうだ!教科書の代金の返金で良いんじゃないか!?」
良い事思い付いた!みたいな顔をしているけれど。
「では、エリザベータ様も教科書代金を払うくらいで良いんじゃないですか?」
まあ、エリザベータ様はそもそも教科書を捨ててないんだから、払う必要性は0なんだけど。
「そ、そうだな。まあ、でも、……そうだ!エリザベータはミリーをお茶会に呼ばなかったり、仲間外れにしたりとしたのだ!」
「し、仕方ないんです!私が男爵令嬢という低い身分だから……っ!」
よよよ、とアンブレラ男爵令嬢が王子殿下にしなだれかかる。
そんな2人に向かい、私は元気よく手を挙げた。
「ちなみに、アンブレラ男爵令嬢を仲間外れにした方にはどんな罰をお与えの予定ですか?」
ちょっと国外追放はやり過ぎたかなとでも思ったのか、王子殿下は胸をはって自信満々に答える。
「牢屋に入れよう。しかも貴族牢ではなく、平民が入るような牢屋に……」
「はい!私もクラスにいる全員から無視をされたり、課題を教えてもらえなかったり、課題の発表日に倉庫に閉じ込められたりしました!」
私の方が可哀想です!と言えば、王子殿下もアンブレラ男爵令嬢も微妙な表情を浮かべる。
アンブレラ男爵令嬢はエリザベータ様1人だけを名指ししたが、私の場合は数も多いし、お茶会に呼ばれなくても何とかなるが、学校の課題の事となると、進級や卒業に関わる。
貴族の子供が留年したり、学力不足で退学なんて事になったら、この国では本当にシャレにならないのだ。
それが分かっているからか、王子殿下もアンブレラ男爵令嬢も微妙な表情を浮かべるしかないのだろう。
「まあ、クラス全員に罰を、とは申しません。ですが、その主犯くらいには罰を与えていただきたいのですが、いかがでしょう?」
「そ、そうだな。ま、まさかのその主犯はエリザベー……」
「いえ、エリザベータ様ではなく、その弟君のギッティ・マッホ公爵令息です」
「…………え?」
先程のサィシヨー公爵令息の時と同じように、王子殿下が間抜けな声を出した。
そんな王子殿下とは対照的に、マッホ公爵令息は嘲笑に近い表情を浮かべる。
「嫌だなあ。僕がそんな事をするはず……」
「まあ、仕方ないですよね。私が貴方より魔法の能力があったから、ハブるくらいでしか憂さ晴らしできなかったんですよねえ?」
ギリ、と唇を噛んでから、マッホ公爵令息が私を睨む。
サィシヨー公爵令息よりはましだが、温室育ちの坊ちゃんは我慢が足りない。
「貴方が夢物語にしかできてなかった魔法構築を、私があっさりと解明したから面白くなかったんでしょ?魔法省への就職も、私が貴方より入省試験で成績が良くて、一足飛びに主任クラスになったから悔しかったんでしょ?マッホ公爵からは何か言われたかしら?私に嫌がらせをしたからって魔力が上がる訳じゃない、とか?アンブレラ男爵令嬢に、貴方にはもっと隠れた才能があるなんて言われたのかしら?隠しすぎて全く表に出てこない才能みたいだけど」
「うるさい!うるさい!うるさい!!!僕が、僕だけが魔法省に入る予定だったんだ!それを……っ!」
「良かったじゃない。魔法省のトップの公爵様の息子だから、例年1人くらいしか採らない魔法省に、同時に2人も採る事にしてくださったんだから。これから頑張りましょう。同僚として。あ、でも、魔法省では爵位ってあんまり関係無いから、ちゃんと私を上司扱いしてくださいねえ」
瞬間に、マッホ公爵令息が大規模な魔力を練り上げる。
うーん、これが発動したら、術者もろとも死んじゃうと思うんだけどなあ。
敬愛する王子殿下とか、大好きなアンブレラ男爵令嬢を巻き込むのはいいんかい!とツッコミを入れつつ、私はパチンと指を鳴らす。
瞬間、浮かんでいた魔法陣が消えた。
「な……っ!」
「魔法詠唱している間に魔力に干渉されたら、発動しないに決まってるじゃないですか」
「魔力に干渉……」
エリザベータ様だけが目を見開きながら呟く。
ま、人の魔力に干渉って、なかなかできないみたいだけどね。
「ま、これも自白に近いですよね?って訳で、王子殿下、マッホ公爵令息を牢屋に入れてください!」
ちゃんと平民用の、臭い、汚い、危険な牢屋の方に!と私がはきはきと伝えれば、王子殿下の目が泳ぐ。
コネ入社待ったなしでも、公爵令息には間違いないし、大事な側近だものねえ。
「よ、よく考えてみれば、仲間外れで牢屋というのはおかしいな。……こ、こっちも慰謝料くらいで良いんじゃないか?」
「なら、エリザベータ様も慰謝料くらいで良いですねえ」
まあ、エリザベータ様が払う慰謝料など全く存在しない訳だが。
エリザベータ様を責めれば、それ以上の罰を側近達に与えなければいけない。
だが、これは大丈夫だろう!と、王子殿下が僅かに目を輝かせた。
「エリザベータはミリーを階段から突き落としたのだ!これは命に係わる!」
「私、本当に恐くて、痛くて……っ!でも王子が助けてくれたから、私、生きてるんです……っ!」
王太子殿下&アンブレラ男爵令嬢劇場再び。
「それは酷いですね。確かに命に係わる。どんな罰が相応しいでしょう?」
「人の命を軽んじるなど、もはや人に非ず!斬首刑が相応しい!」
流石に周囲が騒めく。
ここ最近は比較的周辺諸国も含めて平和になっており、刑法も少しずつだが穏便な物が採用されがちだ。
例え人一人殺しても、奴隷のように働く事が刑になるような平和なこの国で、被害者が階段から落とされただけで後遺症も無くピンピンとしているなら、ちょっとした治療費程度と慰謝料で充分すむレベルだ。
「なるほど!階段から突き落とすと斬首刑なら、剣で斬りつけられたらどうでしょうか?」
「け、剣で!?」
驚く王子殿下に見せつけるように、私はオペラグローブをゆっくりと脱ぎ、その左腕を見せた。
そこには剣でできた生々しい傷跡。
ちょっとグロいかも。
私の傷口を見た全員がグッと息を飲む。
なんてこと、とエリザベータ様が声を漏らした。
まあただ1人、若干違う顔色をしている人もいるけれど。
「私が木剣なのに対し、相手は真剣で挑んできたんです。なんとか命を取られまいと腕を犠牲にしました」
「木剣相手に真剣とはなんと卑怯な!これだからエリザ……っ!」
「その卑怯なのは、ムッスーコ・キッシー侯爵令息ですけどね」
「…………え?」
まさかお前まで?と王子殿下がキッシー侯爵令息に視線を向ける。
2度ある事は3度あるという言葉ぐらいは知っているようだ。
「俺、は……っ!」
「ま、動機は他の皆様方と同じようなものですよねえ。女だと侮って、授業の打ち合いで負けた」
「あれは……っ!」
「確かに私の奇襲が成功しただけの話。思った以上のスピードに反応が遅れただけ。まあ、再戦をすれば100%キッシー侯爵令息が勝たれると思いますよ?」
でも負けは負け。
戦場では2度目なんてない。
平和ボケしている人間が多い中、騎士団長様はちゃんと戦いという事を分かっていらっしゃる方だったようで、キッシー侯爵令息は酷く叱責も受けたし、落胆もされたようだ。
その鬱憤を晴らすべく、騎士科の何人かも巻き込んで、私に再戦を、しかも、木刀と真剣というハンデを私に背負わせてやったのだ。
私自身は再戦を何度も断っていたので、騙し討ちに近い状態で。
騎士科での練習場は魔法使用禁止だが、外に置いておいた魔道具を使用する事で、何とか魔法を使用できないようにする魔道具に干渉する事ができ、私は命からがら逃げられたというところだ。
何かあった時のために、移動ができる魔道具を持っていて良かったと、あの時は心の底から思った。
「こっちは物証も残ってると思いますよ。キッシー侯爵令息がその時使った剣は、彼の愛用のもの。私の血痕がきっと剣にも残ってるでしょうから」
「な……っ!?剣についた血は綺麗に拭き取った!何も証拠は残ってない!!!」
偉そうに仰ってるが、これが自白でなければ何になるのか。
やっちまってる~!とアホな王子殿下でも分かっちゃったし、周囲もやったんだあ、って顔になってる。
ついでに、騎士科に向けられる、お前等も共犯なんだ~、という冷たい視線に負けた何人かが、「俺はやってない!やったのはケーマだ!」とか「俺はハイボックに誘われただけだ!」と暴露大会も始まっている。
誰か料理に自白剤でも混ぜてた?と聞きたいくらいの暴露大会だ。
「せめて苦しまないように、処刑人は彼の父親にお願いしてはいかがでしょう?腕が良い方が苦しまないと聞きますし」
「…………やっぱり、斬首刑はちょっと、その、やり過ぎかなあ、って……」
お尻ぺんぺんくらいでどうかな?と、何故か王子殿下は私の方を向いて聞いてくる。
「公開でですか?」
「…………家で……」
「なら、エリザベータ様もお家でお尻ぺんぺんで良さそうですね」
まあ、エリザベータ様のご両親はお尻ぺんぺんなんか絶対やらないだろうし、キッシー侯爵のお尻ぺんぺんは、お尻ドッゴンバッゴンぐらいになりそうな気もするが。
「後、王子殿下」
「え!?わ、私は君と初対面……っ!」
「いえ。その男爵令嬢で良いのなら、私でも良いのでは?と」
いきなり何を言い出すのかと、王子殿下は目を見張り、アンブレラ男爵令嬢は醜く顔を歪めた。
「ただの男爵令嬢が王子妃になれるなら、私にだって権利はあると思うんです」
「いや、ミリーは気立てが良く優しい子で……」
「私も権力と財力のためなら、気立て良く優しくできます!」
「男爵令嬢だが才能に満ち溢れていて……」
「私も男爵令嬢ですが、成績はトップを何回か取ってますし、魔法省に入れるくらいの能力はありますし、剣の腕もそこそこあります!」
「いじめられても、健気に強く生きて……」
「私の方がよっぽど酷いイジメにあいましたが、元気に強く生きてます!」
「ミリーは可愛いんだ!」
「私も同じくらいには可愛いと思いますよ」
ほら、と私は眼鏡を取ってその顔を見せる。
王子殿下も、そしてアンブレラ男爵令嬢までが固まった。
「…………お姉ちゃん……?」
「久しぶりね。愚妹」
私とミリー・アンブレラは正真正銘の双子の姉妹だ。
ただ、私が姉だったにも関わらず、ラズベリー男爵家に養子に出されただけ。
でも、同じ顔で同じ年で変わらないはずなのに、姉妹格差が酷く、妹贔屓ばかりする実両親より、義父母のラズベリー男爵夫妻の方がよっぽど親らしいんだけどね。
それに、義父母のおかげで私の才能も開花したと言っても過言じゃないし。
「ふふ。同じ顔で同じ男爵令嬢なら、上位互換の方が良いでしょう?」
私が笑いながら言うと、アンブレラ男爵令嬢が、はあ!?とは淑女らしからぬ鳴き声を出した。
そんな私の笑い声に重ねるように、エリザベータ様も薄く笑いながら王子殿下に向かって口を開く。
「そうですわね。どうせ男爵令嬢に婚約者を奪われるなら、中身が私より上である事を認められる相手の方がよっぽど良いわ」
「いえいえ。エリザベータ様に敵うところなんて、1つか2つですよ」
「ふふ。謙遜になってないわよ。でも、1つでもあれば尊敬に値するし、そもそも1つか2つどころじゃないでしょうに。それに、ミランダ様ならうちの養子を経てから王子殿下の婚約者として推薦しても良いと思えるもの」
「いやあ。あの王子殿下はちょっと……。私で良いじゃないとは言いましたが、私、魔法省に入れた事が何よりも嬉しいので」
「知ってるわ」
公爵令嬢と男爵令嬢という格差はあれど、何度も試験でトップ争いをしている私達は、なんだかんだで良い友人関係を築いている。
だからこそ、血が繋がってるだけの愚妹が迷惑をかけて、私はエリザベータ様に謝りまくったのだが、上手くいけば婚約解消ができるので、このままで、と女神のような寛容さでエリザベータ様は私を許してくれた。
まあ、エリザベータ様もマッホ公爵令息の事を自分の事のように謝ってくれたので、お互い様というところだったんだけど。
ただ、普通に婚約解消になるだけなら、私もツッコミは入れなかったけど、王子殿下があまりにもアホだったので、ついつい口を挟んでしまったのだ。
ついでに、アホ王子殿下の側近達への恨みもあったし。
そんなグダグダの中、卒業式パーティーは、会場の利用時間の制限の関係で幕を閉じた。
デザートを食べれなかった事だけが心残りである。
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その後、王子殿下はエリザベータ様と婚約破棄となった。
もちろん、慰謝料を払うのは王子殿下でエリザベータ様にはお咎め無し。
ついでに、アンブレラ男爵令嬢との結婚も認められた。
ただ、王子殿下がアンブレラ男爵に婿入りするという形で。
側近達も、元王子殿下、現男爵についていくように命令され、泣く泣くアンブレラ男爵領へと行かされた。
サィシヨー公爵令息は王宮で働く事もできず、マッホ公爵令息も魔法省入りは取り消され、キッシー侯爵令息も騎士団入りが取り消された。
いや、もう令息とも言えないか。
家から勘当されたし。
マッホ公爵家はエリザベータ様の結婚がなくなって、エリザベータ様がマッホ公爵家を継ぐ事になったからだ。
本当なら、王子殿下と結婚して、一代限りの大公家として王太子殿下を支えていく予定だった。
王子殿下が公爵家に婿入りという話も出ていたようだが、その辺りは流石に所詮男爵令嬢の私には分からない。
ただ、エリザベータ様が公爵家を継ぐ事となり、ギッティ様が用無しになっただけの事。
サィシヨー家は、普通に次男であるシッソクを縁切りしただけ。
元々サィシヨー家には既に嫡男がいたし、シッソクの下には弟もいる。
現宰相の公爵様は、公爵家の当主を担いながら宰相の責務も負うというのはかなりの負担だったので、公爵家は長男に継がせ、宰相の座はいずれ次男が就くように、と思っていたのだろう。
なので、今から三男を鍛え直すだけだろう。
キッシー侯爵家も同じような感じで、元々嫡男の長男がいたので問題はない。
ただ、騎士道に反するような男を育ててしまったという後悔から、キッシー侯爵は騎士団団長の任を辞退しようとしているらしい。
まあ、そちらは人望も実力もあるため、周囲がどうにかして引きとどめようとしているらしいけど。
アンブレラ男爵領のような小さいところに、王家やら公爵家やら侯爵家で学んだ令息を押し込むのはそれなりに損失かもしれないが、あいつ等がいずれ国の中枢に位置するのはよろしくないと、あの卒業式パーティーで主張したも同然だ。
ミリーもせっかくハーレムエンドを迎えられたのだから喜べば良いのに、4人は喧嘩が絶えないと聞く。
「そりゃあ、好きな人の上位互換がいる事を知ったからじゃないかしら?」
ふふ、と笑うエリザベータ様に、なんだかなあ、と私は苦笑を浮かべた。
実際、王子殿下始め、2、3度私と付き合いたいみたいな手紙が届いている。
勿論お断りだけど。
「いやあ、顔見た途端に掌返しするのってどうなんですかね?」
私はミリーと同じ顔ってのを知られたくなくて、認識阻害がかかる眼鏡をかけて学生生活を過ごしていた。
大嫌いな妹に会いたくなかったし、貴族の中では実子ではなくて養子だと、実子より一段下と思う人が多くて、男爵家の一段下なんて無いわい!と思って、実子として振舞いたかったのもある。
ミリーと同じ顔ってのは、一目瞭然だったからね。
「せっかくだから、アンブレラ男爵領を盛り上げるぞー!みたいにならないんですかねえ?」
「世の中には、何も無い所からでも頑張れる人もいれば、ある程度環境を与えられないと才能が発揮できない人もいるのよ」
なるほど、と私はエリザベータ様の言葉に頷く。
ま、全員後者だって事だよね。
ギッテイ様とか、養子だったけど、元は伯爵令息だった訳だから、十分恵まれた環境だったし。
王子殿下も、思考はアホだったけど、王族としてはそれなりに可ぐらいの人だったんだよねえ。
ただ、【与えられた婚約者】がいた時は才能が発揮できてたけど、【一から自分で見つけた恋人】を選んだ途端に才能が発揮できなくなっただけで。
「でも、上位互換って言い方も失礼よね」
「え?」
「ミランダ様はミランダ様。アンブレラ男爵令嬢と比べるなんて、それこそ意味のない事だわ」
だって、互換なんて絶対できない、唯一無二の私のお友達ですもの、とエリザベータ様が笑う。
『例え実子じゃなくても、貴方は私達の可愛い娘よ』と言ってくださった、ラズベリー男爵夫妻の言葉もフワリと浮かび。
私は、えへへ、と照れ臭く笑うだけだった。
公爵令嬢と男爵令嬢とかだから、格差が~!とか言われるわけで。
同じ位の男爵令嬢が乱入したら、を考えた結果です。
王子殿下ももっとワガママに、お前はどうでもいい!ミリーだけが大事!とか言えるくらい突き抜けたアホならまた違ったんでしょうが、一応元はそれなりに常識があった人なのと、腐っても王族なのである程度臣下には平等にという思想があったので、主人公の掌で踊らさせれる形になりました。
試験トップならもっと目立ちそうな主人公ですが、認識阻害魔法のおかげで、割と空気に過ごしてました。
まあ、それでもイジメにはあったんですけどね。




