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聖女を召喚したらスキル『馬鹿』が来た王国の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/06/21

 異世界から聖女を召喚して国を富ませるのは良く聞く話だ。

 聖女の力によって小国が中堅、病身の大国は現状維持ぐらいにはなる。


 聖女の平均寿命は10年くらい。酷使されるが。

 異世界では道ばたの石ころぐらいの価値の平民女を聖女として崇めてやるのだから当然と言えば当然の話だ。



「陛下・・・聖女召喚は失敗です・・・」

「ほお、王宮魔道師でも失敗はある。誰も来なかったのか?」

「いえ、・・それが確かに異世界から女が来ました」


「何が来た?」


「髪は茶髪で黒目ではありません。伝承とは違います。鑑定の結果、何よりもジョブ無し。スキル・・・馬鹿です」


「馬鹿だと!・・・」

「謁見しますか?」

「良い。会うまでもない。処遇が決まるまでどこかで飼っておけ」

「「「御意」」」



 ふむ。政策に失敗はつきものだ。むしろ失政を隠すのが政治の本質だといえる。

 次善の策だ。臣下に命じた。



「魔王軍の対策、魔物の対策、外交・・、次は国内の農業の順で対策をせよ・・・」


「「「御意」」」



 少なくない予算を使って聖女召喚をした・・・失敗をごまかせねばならない。

 増税だ。


「あの聖女モドキをさらし者にせよ。市場にでもつないでおけ。我が王国は真心を込めて召喚をしたが、馬鹿がきた。生活が苦しいのは馬鹿のせいだとせよ」


「「「御意」」」




 数ヶ月後、報告が来た。


「父上、魔王軍は我が王国軍を恐れ国境から数十キロ後退したと報告が来ました」

「うむ」


「お父様、各国から賢者が入国していますわ」

「ほお、我が王国の秘伝の召喚魔法以外は開示せよ」

「はい!」


「父上、豊作の見込みとの報告が民事卿からです。魔物も前年と比べて減少しています」

「そうか」



 全く、一時はどうなるかと思ったが子供達が優秀で助かった。



「うむ。巡幸でもしようか・・・」

「「「御意」」」


 馬車に乗り妃を伴い王国を回ろうとしたら、王都の大通りを群衆が塞いでいた。



「な、何と。王の馬車を塞ぐとは・・」

「陛下、王都広場で、・・・・異世界から来た聖女が・・・『配信』なる物をしております」


「何?」


 我は興味を持った。あの廃棄聖女がどのように民衆に扱われているかと。

 民に交じって広間まで行った・・が。


 茶髪の女が広間の中央で両手を広げて挙げ。天から聖魔法を降らしている・・・

 エリアヒールか?


 みるからに怪我人、病人が治っていく。

 何だ。馬鹿ではないのか?



「のん♪のん♪!次は豊作の舞なのん♪」


 奇妙に踊っている。光の粒子が彼女の異世界の紺色のドレスからこぼれている。

 あれは伝承にある異世界の10代が着るという制服と言うものか?


「「「メルル様ァ~!」」」

「メルル様!」


 民は熱狂している。

 な、何だ。まるでコンサートみたいではないか?

 踊りが終わったら・・・群衆に語り出した。


木原きはら芽留留めるるだのん♪芽留留に質問をしてみるのん♪投げ銭ヨロだのん♪」



「はい、メルル様は、どうして異世界から来たのに濃い茶髪で淡いブルーの瞳なのですか?伝承と違います・・・失礼だったら申訳ありません」


 あれは・・・他国の賢者だ。賢者が大勢最前列にいる。



「お父様が日本人でお母様がフランス人なのん♪」

「フランス・・・」

「この世界と似た人種がいるのん♪」



「メルル様、世界の原理を教えて下さい!」

「震えるヒモなのん♪世界は震えるヒモなのん♪それを知れば、物理原則を全て統一出来るのん♪」



 異世界でも全て解明できていないのん♪

 私達の一般の生活はニュートンというおっさんの物理原則で大丈夫なのん♪

 でもミクロの粒子の世界は中二病大好きの量子論の世界になるのん♪

 確率でしか分からないのん♪


 でも、物質の最小単位を弦にすれば分かるのん♪



「メルル様の力の源は、そこからですか?」

「そーなのん♪」



「分かりませんが、魔法も異世界の魔道具も原理が同じ・・ということですな」

「これもわからないのん♪数学的に証明できた理論なのん♪実験には宇宙規模のエネルギーが必要なのん♪」


 証明のない科学は宗教と同じで信じるか信じないかしかないのん♪

 まだ、不確定なのん♪



「物質の最小単位が震えるヒモだなんて、信じられるのは『馬鹿』なのん♪」




 ・・・我はここで介入した。これは魅了かなにかに違いない。

 捕まえて解剖して調べるべきだ。



「あれは魔女だ!捕まえろ!」

「「「御意!」」」



「のん♪のん♪鹿さんカモンのん♪」


 何だ。いきなり空間から鹿が出てきた。


「・・・」



「陛下、これは馬なのん♪」



 馬鹿な。鹿を指で差して馬と言っている・・・・・


「鹿に決まっておろう!我は見た物しか信じないぞ!そのヒモとかも嘘に決まっておろう!」


 我は捕らえるように命じたが、騎士達は足を止めた・・・


「陛下、馬ですか?」

「陛下、病気でございますか?」

「あれはどうみても、馬でございます・・」


「卿らは、頭がおかしくなったか!」


「陛下、王宮に戻りましょう」



 ・・・あれ、あれは馬だったか。いや鹿だよな。


 一瞬、空間がグルッと回ったような気になった。


「陛下はご病気だ。王宮で療養してもらおう」


「おい、気が狂ったか?」


「・・・陛下、馬でございますわ」


妃もおかしくなった。




 それから王国は崩壊に向かうことになるとはこの時は思ってもみなかった。



「召喚魔法陣は壊すのん♪」

「はい、メルル様!」


「これからは自分たちで肥料を作るのん♪」

「はい、メルル様」



「魔王軍は芽留留が侵略しちゃだめと言っておくのん♪後は自分たちで何とかするのん♪」


「「「はい、メルル様!」」」


「じゃあ、帰るのん♪」



 メルルは一瞬、震えて消えていなくなった・・・異世界に帰ったのか。





 ☆☆☆50年後



「ちょっと、誹謗中傷したでしょう!」

「証拠を出せ!」


 あれから我は監禁されたままだ。スキル馬鹿は我の子孫に呪いかかけた。

 今、我の孫、廷臣達がくだらないことで論争しているが・・・・本当に馬鹿になったのだ。


 今は敵国の軍隊が城下に迫っている最中だ。

 なのに、どうでも良い事で論争をしている。


 

やがて王都は陥落し敵兵達が我の貴族牢にまで来た。


「これが、前前の王か・・・通称、気狂王・・・」

「馬を鹿と言い放ったから病気療養していると聞いたが・・・」


 我は笑った。笑うしかない。


「アハハハハハハハハハ!」


「狂っている」

「将軍、如何しますか?」


「放って置け。子と孫を皆殺しにされても笑っているとは、狂わなくてはやっていけないのだろう」


 我は外に出た。これからどうするか。考えるのをやめた・・・

 あの時、馬だと言ったら、どうなっていたか、それだけが気がかりだ。







最後までお読み頂き有難うございました。

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