第39話 ホロダイで来たことのある場所、本物で来てみた
午前八時。
俺は、最寄り駅で白波さんと待ち合わせていた。
白波さんは、八時ちょうどに来た。
今日の服装は、ダンジョン探索用の本格的な装備だった。動きやすい黒のパンツに、軽い革のジャケット。リュックは前より大きめ。腰に長めの直剣をちゃんとした鞘で提げている。
仮資格の時とは、明らかに装備が違う。
……正規の探索者、っていうのは、こういう感じなのか。
「おはようございます」
「おはよう」
「あの、装備、ちゃんと揃えてみました」
「うん。似合ってる」
「……っ、ありがとうございます」
白波さんが、ちょっと、頬を赤くした。
俺はノアを肩に乗せて、いつも通りの黒パーカーと、虚空断ち。
白波さんが、俺の格好をじっと見ていた。
「あの、蓮さんって、いつも、その格好ですよね」
「うん」
「探索者になっても、変わらないんですね」
「うん。慣れてるから」
「……装備、もうちょっと、ちゃんとしたものにする予定はないんですか?」
「えっと」
『マスター(笑)。つむぎさんが、遠回しにコーディネートの提案をしてくれてますよ』
「あ、そう?」
『はい。今度、一緒に買い物に、お付き合いいただいた方がいいかもしれません』
「……うん、考えとく」
白波さんが、ふっと、笑った。
◆ ◆ ◆
目的のダンジョンは、千葉県の山の中にあった。
駅から電車を乗り換えて、バスに乗って、登山道をしばらく歩いた先。
観光地化はされていないけど、それなりに探索者が出入りする、中規模のダンジョン。
「ここです」
白波さんが、ダンジョンの入口を、指差した。
岩肌に空いた、人ひとり通れるくらいの穴。
中から、ひんやりした空気が、流れてくる。
苔の匂い。湿った土の匂い。
俺には、見慣れた光景。
でも、白波さんは入口の前でしばらく立ち止まっていた。
「……」
「白波さん?」
「……ここ、ホロダイで、何百回も来ました」
「ふうん」
「『翡翠の樹海』。ホロダイの中盤の、人気フィールドです」
「ふうん」
「私、このダンジョンを、世界で一番早くクリアしたプレイヤーの一人なんです」
「すごいな」
「……でも、本物の入口を見るのは、今日が、初めて」
白波さんは、入口の岩肌に手を触れた。
しばらく、撫でていた。
ホロダイの中で、何百回も、見たはずの景色。
でも、本物の質感は、たぶん、初めて感じる。
「蓮さん」
「うん」
「これ、本当に、入っていいんですよね」
「うん」
「もう、私、仮資格じゃないから、入っていいんですよね」
「うん。白波さんの判断で入れる」
「……はい」
白波さんは、深呼吸を、ひとつした。
それから、一歩、前に踏み出した。
ダンジョンの入口に、初めて自分の意思で足を入れた。
◆ ◆ ◆
「ノア、配信回す?」
『はい。準備できてます』
「白波さん、配信回していい?」
「はい。今日は回してください」
「うん」
ノアが、目から淡い光を出した。
光が、ふわっと、空中に配信用のカメラを構成した。
ダンジョンの中で、配信が始まった。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
LIVE
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
>【草の民】キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!
>【攻略ガチ勢】RENの久しぶりの配信。今日はコラボか?
>【ノア推し】白波さんと一緒だ! しかも、ダンジョン!
>【holodive_master】あれ、これ、翡翠の樹海じゃない? ホロダイの中盤の人気フィールド
>【ルカたん】¥30,000「お二人とも、気をつけてください」
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
「こんにちは。今日は、コラボです」
「白波さんが、正式に探索者になったので、その、お祝いっていうか」
『マスター(笑)、つむぎさんも、ご挨拶どうぞ』
「あ、はい。白波つむぎです」
白波さんが、カメラに、ぺこっと、お辞儀した。
今日の白波さんは、ホロダイの配信のときとは、ちょっと、違う雰囲気だった。
ホロダイの配信は、明るく、テンション高めで解説が丁寧。
今日は、もう少し、緊張感がある。
たぶん、本物の探索者としての、初めての配信だからだ。
>【草の民】白波さん、いつもと雰囲気違くない?
>【holodive_master】ホロダイの白波さんは、もうちょっと、明るい感じだよ
>【攻略ガチ勢】これは、リアル仕様の白波つむぎ、ということか
>【ノア推し】緊張してる感じが伝わる
「白波さん、今日のダンジョン紹介してくれる?」
「はい。ここは、千葉県の山中にある、C級ダンジョンです」
「ホロダイ的には、『翡翠の樹海』っていうフィールドに設定されています」
「リアルのこのダンジョンを、ホロダイの開発チームが取材して、ゲームの中に再現したらしいです」
『ほう。ホロダイは、リアルのダンジョンを取材してるんですね』
「はい。ホロダイは、リアル志向のVRゲームなので」
『ほう、リアル志向、ですか』
「……あの、ノアちゃん、なんで、ちょっと、含み笑いみたいな声出してるんですか」
『気のせいです、つむぎさん』
>【草の民】ノアちゃんの含み笑いwww
>【攻略ガチ勢】「リアル志向」の話題に、ノアちゃんが反応した、これは何かありそうだな
>【陰謀論者】ノアちゃんは、知ってる。全部、知ってる
>【ルカたん】……
俺は、ノアの含み笑いの意味が、半分くらいわかった。
半分は、まだわからない。
でも、白波さんは、たぶん、全部わかっていた。
白波さんは、リアルとホロダイの違いを誰よりも知っている。
でも、それを、配信中に口に出すことはしない。
……白波さんも、共犯者、だ。
俺は、なんとなく、それを感じた。
◆ ◆ ◆
ダンジョンに、入った。
通路は、緑色の苔に覆われていた。
壁から、淡い光を放つ、植物の蔓が垂れていた。
空気は、しっとりと湿っている。
深いところから、何かの鳴き声が、ぼんやり、聞こえてくる。
「……」
白波さんが、しばらく、立ち止まっていた。
「蓮さん」
「うん」
「これ、ホロダイの再現度、完璧、です」
「ふうん」
「光の蔓の色も、苔の質感も、空気の温度も、全部、ホロダイで体験したのと、一緒です」
「ふうん」
「でも、匂いだけ、違います」
「匂い?」
「ホロダイは、匂いの再現が、まだできないんです。技術的に、難しくて」
「ふうん」
「本物のここの匂い、こんなだったんだ」
白波さんは、深呼吸を、ひとつ、した。
目を閉じて、ゆっくり、息を吐いた。
……たぶん、ホロダイで、何百回もクリアしてきた場所が、本物の質感を、伴って、白波さんの中に、入ってきている。
俺は、何も言わず、横で待っていた。
>【攻略ガチ勢】白波さん、深呼吸してる。本物の感動が、伝わってくる
>【holodive_master】これ、ホロダイのプロが「リアルダンジョン」を初めて体験する瞬間か。歴史的だ
>【ノア推し】白波さんの感動、いいね
>【ルカたん】……
白波さんが、目を、開けた。
「行きましょう」
「うん」
白波さんは、剣を、抜いた。
仮資格時代に使っていた剣じゃない、ちゃんと自分で買った新品の剣だ。
握り方が、安定している。きっと練習したんだろう。
……前のときとは、もう違う。
◆ ◆ ◆
最初のモンスター。
通路の奥から、緑色の犬のような生き物が走って現れた。
四足歩行で、背中に、苔のような毛が生えている。
「あ、フォレストハウンドです」
「うん」
「ホロダイだと、レベル30くらいのザコモンスターです」
「うん」
「現実だと、どれくらいですか?」
「うーん。C級ダンジョンの中層あたりだから、たぶん、レベル30相当かな」
「ホロダイの再現、ちゃんとしてますね」
「ふうん」
白波さんが、剣を構えた。
……俺は、横にちょっとずれた。
白波さんに、譲った。
白波さんが、ちらっと、俺を見た。
「いいんですか」
「うん。今日は、白波さんの日だから」
「……」
「自分の判断で、戦って」
「……はい」
白波さんは、剣を、握り直した。
フォレストハウンドが、突っ込んできた。
白波さんが、横に、ステップして、剣を振り下ろした。
ホロダイのフォームと、現実の動きの、ちょうど中間。
でも、ちゃんと首を捉えた。
フォレストハウンドが、光の粒子になって消えた。
「……倒した」
「うん」
「あの、今のフォーム、ホロダイのときと、ちょっと違いました」
「うん。前より、現実寄りになってる」
「やっぱり?」
「うん」
「訓練の成果、出てますね」
「うん」
白波さんは、剣を、振って、軽く汚れを払う動作をした。
光の粒子になって消えるから、剣に血はつかない。
でも、白波さんは、その動作を、ちゃんとした。
……探索者っぽい動き。
たぶん、自分で「探索者として」振る舞うことを、自分に言い聞かせている。
>【攻略ガチ勢】白波さん、フォレストハウンドをソロで撃破。フォームも、ホロダイから現実仕様に、ちゃんと修正されてる
>【holodive_master】白波さん、ホロダイのモーションじゃないな
>【ノア推し】ホロダイの腕も確かだけど、探索者としても凄い!
>【ルカたん】白波さん、すごい
◆ ◆ ◆
ダンジョンを、ゆっくり、進んだ。
白波さんは、自分の判断で、出てくるモンスターを、一匹ずつ倒していった。
俺は、ほとんど、口を出さなかった。
今日は、白波さんが主役。俺は、横にいる役。
もし本当に危なくなったら、出ようとは思っていた。でも、たぶん、その出番は来ない。
白波さんの動きを見ていれば、それは、わかった。
白波さんも、最初は、戸惑っていたけど、だんだん慣れてきたみたいだ。
二時間くらい歩いて、第三層に着いた。
第三層は、開けた森のような空間で、巨大な樹木がいくつも生えていた。
樹の幹に、淡く光る、青い結晶が、埋め込まれていた。
「……」
白波さんが、その結晶を、しばらく、見ていた。
「ここの結晶、ホロダイだと、回復アイテムの素材になるんです」
「ふうん」
「現実でも、回復薬の素材になりますか?」
「うん。なるよ」
「……採取、していいですか?」
「うん。白波さん、正規の探索者だから、ちゃんと所有権がある」
「……はい」
白波さんが、樹の幹に近づいた。
慎重に結晶を外した。
手のひらに、青く光る小さな結晶が乗った。
「……」
白波さんは、その結晶をしばらく見つめていた。
「これ、ホロダイで、何百個も、採取したことあるんです」
「うん」
「でも、本物は、初めて」
「うん」
「ちゃんと、光ってる、綺麗です」
「うん」
白波さんは、結晶を用意していたケースにしまった。
ホロダイのプロが、初めて本物の素材を自分の手で採取した瞬間。
たぶん、白波さんにとって、今日のハイライトの一つ。
>【holodive_master】白波さん、翡翠の結晶、現実でも採取できるんだ
>【攻略ガチ勢】回復薬の素材として、市場価値は一個五万円くらいだな
>【ノア推し】白波さん、嬉しそう
>【ルカたん】……いいですね
◆ ◆ ◆
昼。
第五層の、開けた場所で休憩を取った。
白波さんが、リュックから、サンドイッチの入った保冷バッグを取り出した。
ラップに、丁寧に包んである。
「あ、お弁当、自分で作ってきたんですね」
「はい。朝、ちょっと早起きして」
「……」
「あ、これ、よかったら、一個、どうぞ」
「いいの?」
「はい。多めに作ってきたので」
「ありがと」
俺は、サンドイッチを、一個もらった。
ハムとレタスとトマト。シンプルな感じ。
「おいしい」
「……ありがとうございます」
白波さんが、ちょっと、頬を赤くした。
俺は、自分が持ってきたコンビニのおにぎりも食べた。
二人で、配信を回しながら、サンドイッチと、おにぎりを食べた。
>【草の民】白波さん、手作りサンドイッチ持参!
>【ノア推し】RENにサンドイッチおすそ分け、いい関係
>【攻略ガチ勢】RENはコンビニおにぎりで草
>【ルカたん】……白波さん、手作りなんですね
「コンビニのおにぎりもおいしいよ」
「あの、蓮さん。普段、お昼は何食べてるんですか?」
「えっと、近所の人が、お弁当くれることがあって」
「……近所の人?」
「うん。優しい人で」
「……ふうん」
白波さんは、それだけ言って、もう一口、サンドイッチを食べた。
ちょっと、もぐもぐが、速くなった気がした。
>【ルカたん】……近所の人
>【草の民】ルカたん、急に静かになった? なんか落ち込んでる?
>【ノア推し】ルカたんどうしたん?
◆ ◆ ◆
午後。
第七層、最深部に近いところで、白波さんが足を止めた。
「蓮さん」
「うん」
「ここのボス、ホロダイだと、フォレスト・グランドベアっていう、大きい熊なんです」
「うん」
「現実でも、同じやつ?」
「うん。たぶん、ボスは、共通かも」
「……あの、私、ボス、やってみたいんですけど」
「うん」
「いいですか」
「うん。やってみて」
「サポート、お願いできますか?」
「うん」
白波さんが、ボス部屋の前で、深呼吸をした。
「ホロダイで、何百回も倒したやつ、です」
「うん」
「でも、本物は、初めて」
「うん」
「……勝ちます」
白波さんが、剣を、構えた。
俺は、後ろで、ノアを、肩に乗せたまま、見ていた。
ボス部屋に入った。
巨大な、緑色の熊が、奥の岩に、もたれかかって、寝ていた。
高さ、四メートルくらい。前足が丸太より太い。
白波さんが、ゆっくり、近づいた。
熊が、目を開けた。
咆哮。
空気が震えた。
白波さんが、ぐっと、踏み込んだ。
>【攻略ガチ勢】フォレスト・グランドベア。C級ダンジョンの中ボス。普通の探索者なら、三人パーティで挑む相手
>【holodive_master】ホロダイだと、ソロでも倒せる難度。でも、現実だと、たぶん、ぜんぜん違うぞ
>【ノア推し】白波さん、頑張れ!
>【ルカたん】……気をつけて
戦闘が、始まった。
白波さんは、熊の周りを、走り回りながら、隙を見て、剣で、斬りつけていた。
動きは、ホロダイのままじゃない。
ちゃんと、現実の熊の動きに、合わせていた。
最初の数分は、攻撃を出来ず、苦戦していた。
熊の前足の一撃を、ぎりぎりで避けた。
防戦一方の戦いだ。
でも、白波さんは諦めなかった。
俺は、後ろで見て、手は出さなかった。
ノアが、肩の上で、ぽつりと言った。
『マスター(笑)。手、出さないんですか』
「うん」
『大丈夫ですか』
「うん。白波さんは倒せるよ」
『……どうしてわかるんですか』
「目の色」
『目の色?』
「うん。本気の目してる。負けない目」
『……マスター(笑)。あなた、たまにはいいこと言いますね(笑)』
「うるさい」
◆ ◆ ◆
十分後。
フォレスト・グランドベアは攻撃し続けてバテていた。
隙ができた瞬間を白波さんは見逃さなかった。
素早く左方に移動し、首の根元に剣を突き立てた。
熊が、地響きを立てて、倒れた。
光の粒子になって、消えた。
白波さんが、剣を降ろした。
息を、切らしていた。
でも、立っていた。
「……はあ、はあ、勝ちました」
「うん。お疲れさま」
「……っ」
白波さんが、剣を、地面に立てかけた。
膝に、両手をついて、しばらく、息を整えていた。
顔は、汗だくだった。
でも、目は、笑っていた。
>【攻略ガチ勢】白波つむぎ、フォレスト・グランドベア、ソロ撃破。これ、ホロダイのプロが、現実でも同じことができた、っていう歴史的事実だぞ
>【holodive_master】白波さん、すごい
>【草の民】ソロでボス倒した!
>【ノア推し】白波さん、探索者としても凄いな
>【ルカたん】¥1,000「お疲れさまでした。怪我、ないですか?」
「ルカたんさん、ありがとうございます。怪我はないです」
白波さんが、汗を、手で拭きながら、カメラに答えた。
「あの、蓮さん」
「うん」
「ありがとうございました。後ろにいてくれて」
「うん」
「私、ちゃんと、自分の手で、倒せました」
「うん。すごい」
白波さんが、剣を、ぎゅっと、握り直した。
以前、ゴブリンを初めて倒したときと、似ているけど、もっと、大きな感情が入っていた。
◆ ◆ ◆
ダンジョンを出る頃には夕方になっていた。
配信を切り、俺と白波さんは、登山道をゆっくり下りていた。
「蓮さん」
「うん」
「今日、ありがとうございました」
「うん」
「ホロダイで、何百回も、来た場所を本物で見られて、本当に嬉しかったです」
「うん」
「あと、自分の力で、ボスを倒せて」
「うん」
「……これ、たぶん、私にとって、大事な日です」
「うん」
白波さんは、それだけ言って、しばらく、黙って歩いていた。
俺も、何も言わずに、横を歩いた。
ノアが、俺の肩の上で、白波さんに言った。
『つむぎさん』
「はい」
『今日のあなた、本当に強かったです』
「……ありがとうございます、ノアちゃん」
『あと、マスター(笑)も、今日は、いい横にいる役してましたよ』
「うん。蓮さん、横にいるだけで心強いです」
「……」
俺は、ちょっと、頭の中で、何かが、ぐるぐる、回った気がした。
でも、何も言わなかった。
白波さんは、それだけ言って、また、黙って歩いた。
◆ ◆ ◆
駅で、別れた。
「来週も、行きませんか?」
「うん。行こう」
「次は、もう少し、難しいところに挑戦したいです」
「うん」
「じゃあ、また連絡します」
「うん。お疲れさま」
白波さんが、改札に入っていった。
俺は、しばらく、その背中を、見ていた。
……白波さん、対等の探索者として、ちゃんと成立してる。
たぶん、もう、俺が「教える」必要はなくなった。
これから、白波さんは、自分の判断で、ダンジョンに入って、自分の手で戦っていく。
……寂しい、というほどではないけど。
でも、ちょっとだけ、何か、変わったなと思った。
◆ ◆ ◆
夜。
アパートに帰ると、ドアの前に、いつもの、淡いピンクの保冷バッグが置いてあった。
明日のお弁当。
メモには、こう書いてあった。
『今日も、お疲れさまでした。
今日は、ダンジョン、行かれましたか?
あんまり、無理はしないでくださいね。
あなたが、無事だと、私は嬉しいです。
瑠花』
俺は、メモを、しばらく読んでいた。
いつもより、ちょっとだけ、文章が、長い気がするな。
あと、なんとなく、いつもより優しい。
「ノア」
『はい』
「瑠花さんのメモ、今日、いつもと、ちょっと違う気がする」
『はい。違いますね』
「気のせい?」
『いいえ。気のせいじゃないですよ』
「うん?」
『瑠花さん、マスターのことを心配してます』
「ふうん。優しいな」
『……マスター(笑)。心配する、というのは、ただ優しいだけじゃ、ないんですよ』
「うん?」
『その人にとって、あなたが大事だってことです』
「……大事?」
『はい』
「ふうん」
「俺、瑠花さんにとって、大事なのか」
『……たぶん、あなたが思ってるより、ずっと』
「ふうん」
俺は、ノアの言葉の意味が、よくわからなかった。
でも、なんとなく、メモをもう一度読んだ。
『あなたが、無事だと、私は嬉しいです』
……嬉しい、か。
なんか、温かい、メモだな、と思った。
「ノア」
『はい』
「瑠花さんに、またお礼、言いたいな」
『……はい。それは、いいと思いますよ』
「うん」
俺は、メモを、丁寧に、机の引き出しにしまった。
なんとなく、捨てるのが、もったいない気がした。
ノアが、肩の上で、ちょっと、笑った気がした。
『マスター(笑)。メモ、取っておくんですね』
「うん。なんとなく」
『……いい、なんとなく、ですね』
「うん?」
『何でもないです』
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アーカイブコメント欄
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>【攻略ガチ勢】今日のRENと白波の配信、整理する。1) 翡翠の樹海、C級ダンジョン、ソロ向きじゃない難度。2) 白波つむぎが、フォレスト・グランドベア、ソロ撃破。これ、ホロダイのプロが、現実でも通用するっていう、世界初の証明。
>【草の民】白波さんの成長に感動した
>【holodive_master】白波つむぎは、もう、ホロダイには、戻らないかもしれないな
>【ノア推し】ノアちゃんの「マスター(笑)も、いい横にいる役、してましたよ」が、いい 可愛すぎる
>【草の民】そういえば、ルカたん、今日、途中から、ちょっと静かじゃなかった?
>【ノア推し】RENが「近所の人がお弁当くれる」って言ったあたりから、コメント減った気がするな
>【陰謀論者】……ルカたんは、今、いろいろ、考えてるんだよ
>【攻略ガチ勢】陰謀論者、お前、ルカたんの何を知ってるんだ
>【陰謀論者】知ってるんじゃない。見えてるだけだ。お前らも、見ようと思えば見える
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