6話 ヒカリ・ウィンガート伯爵令嬢
「『ヒカリ・ウィンガート』です!」
レオン第三王子に名前を名乗り、ようやくお互いをしっかり認知した。
だからといって突然恋愛に発展することはなく、所詮は五歳のレオン王子と四歳の僕だ。
元気にはしゃいでそれだけでお終い。
幼い子のコミュ力だけで全てを乗り切り、疲れ切った僕とレオン王子はあの後寝てしまい、そのままお開きに。
そして現在、寝起きでベッドの上でのんびりしています。
「ヒカリ、レオン王子どうだった?」
「おもしろかった!」
「そっかー、面白かったか〜!」
なんか、すごく微笑ましそうな顔をしている。
「奥様、まだヒカリ様は四歳です。婚約も候補者の一人です。決まったわけではーー」
「わかってるわよシャル! 妄想くらいは自由にさせて頂戴?」
「おかぁしゃま?」
どうやら僕とレオンが婚約を結ぶ妄想をしてたらしい。
(いや勘弁してくれぇ!?)
ヒカリちゃんの魂は高校生男子なんですよ? キツくないですか?
そんな焦りを感じていたら不意に『ガタン』とドアが開き、執事長が入ってきた。
「大変だ!」
案の定アワアワしてる。
「セルライト公爵様が明日ここにお越しなさる!」
「アリアちゃんにあえる!」
僕は思わずベッドから起き上がり、執事長の前までトテトテ歩く。
「おてがみ、みせてください!」
「……て、天使」
「執事長……」
なんかシャルが凄い呆れてる気がするけど、とりあえず気のせいということにしておこう。
「セルライト公爵様がお越しになるんです。今からしっかりおめかししましょう!」
「来るの明日ですよね……?」
執事長、もしかしてポンコツか? 手紙見せてって言ったのになんで今からおめかしなんだよ。
「よろしければ、ミューゼとお呼びくださいヒカリ様」
「みゅーぜ?」
「よし」
「何がよしなんですか? アホなの?」
なんか、シャルのツッコミ鋭くないですか?
「それより手紙ですね? 少々読むのが難しいかも知れません」
そう一言添えて手紙を渡してくれた。
ドキドキしながら手紙を開くとーー
「…………」
めちゃ日本語だ! なんだこれ、ヌルゲーか?
僕の希望叶えなかった女神見てる〜? どうにかなりそうですよ〜?
「ありがとうございます!」
一通り見終えてミューゼに手紙を返す。
「たくさん文字かいてた!」
正直なんて書いてるかわかんなかったけど、今はそれでよし。
英才教育なんてされたらたまったものじゃない。
「ヒカリ、アリアちゃんも会うの楽しみって書いてあったんだよ?」
「ほんとに?」
「本当よ?」
お母様は僕を抱き上げ、大まかに手紙の内容を教えてくれた。
「ヒカリもたのしみ!」
お母様にギュッと抱きつき、抑えられない興奮を無理やり抑える。
やばい、幼い子の好奇心とか喜びの感情って、こんなに制御効かないのか。
*
翌日。
アリアちゃんが来るのは午後かららしく、午前から落ち着かない様子のヒカリちゃん。
「おかぁしゃま! おめかししたい!」
「あらあら、随分と楽しみなのね?」
「ん!」
レオン相手におめかししたいなんて思わなかったのに、アリアちゃんと会うのは楽しみ過ぎる。
「じゃあ、お化粧してみる?」
「したい!」
抑えられない興奮を化粧にぶつけよう。
「じゃあ、ヒカリおいで!」
「あいっ!」
お母様に連れられて、いつもの自室の、行ったことのない端の空間へ行く。
「それじゃあ、今からおめかししましょう!」
僕を椅子に座らせて鏡を見つめる。
「……」
え、待って。初めて自分の姿を見たけど、ヒカリちゃん可愛くない?
五歳だよ? 超顔整ってるじゃん! 将来有望過ぎるでしょ!
なんだこの桃色のサラサラした髪は。
なんだこの白い柔肌は。
なんだこのくりくりした紺色の瞳は。
こりゃ世界一可愛いってベタ褒めするわけだ。
「それじゃあ、おめかし始めるわよ?」
気合いの入ったお母様が、見たことあるメイク道具を使って、僕に化粧を始めた。




