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1話 望み通りにいかない世界


「ヒカリ、こっちおいで!」

「うぁ!」


 新しく生まれ変わってはや九ヶ月。


 ヒカリという名前を授かった僕はーー


「きゃっ、あっ!」

「凄いよヒカリ! はいはい頑張ったね!」


 ようやくはいはいで歩けるようになった。



 少し前まで容赦なく地に足を踏み締めて歩いていたのに、今では必死に手足を動かさないとまともに動けない。


「んまっ!」


 というか、そもそもちゃんと喋ることも出来ない。


 なんだよ「んまっ!」って! 赤ちゃんじゃねーか!


 いや今は赤ちゃんなんだけど!


「ふぁ!」

「ん? どうしたのヒカリ! お腹すいちゃった?」


 まるで喋れない言葉や、ロクに動かない手足を使って必死に意思疎通を試みてるが、何も上手くいかない。


 赤ちゃんの脳じゃ、自分の伝えたいことに追いつけない。


(くっそ、モヤモヤする……)


 伝えたいことが伝わらないって、こんなにキツいのか。



 因みに前世十六歳の僕は今、お漏らしを伝えようと必死です。


(なんで……こんなことに……)


 そんなことを思っていたら、自然と涙が出てきてしまった。


 そしてーー


「おぎゃぁぁ! うぇぇぇぇぇん!」


 自分の意思に反して大声と涙が出てしまった。


「お漏らししちゃったのね! ごめんシャル、ちょっと替えのオムツ持ってきてくれない?」

「奥様、オムツ替えはメイドの私がーー」

「良いのよ、私がやりたいの? それともシャルも一緒にやる?」

「わかりました。一緒にやりましょう」


 自分は大泣きしているから状況は何一つわからないが、どうやらお母様とメイドがオムツ交換してくれるらしい。


 ガチ哀れ……。


 そんな風に心の底から沈んでいたら、メイドがオムツを持ってきた。


「奥様は初めてですか?」

「そうね、いつもシャルの見てるけど、やるのは初めてだわ?」

「なら、ゆっくりやりましょう」


 お母様とメイドが僕のオムツを変えている間に、メイドの紹介をしておこう。



 メイドの名前はシャル。


 僕の今世のお母様が子供の頃から支えているというとんでもないメイド。


 そして子持ちの既婚者。


『伯爵の奥様とそのメイド』なんて言っているが、最早双子と言った方が正しいレベル。


 因みに、お母様は時々身分を隠してシャルと二人で立場関係なくお話しているらしい。



 そんな紹介をしていたら、オムツ交換を終えたらしく「ありがとねシャル?」と優しく微笑むお母様の姿があった。


「あぁっ、んまっ!」

「奥様、ヒカリ様が抱っこして欲しそうですよ?」

「あら、甘えん坊さんね?」


 とりあえず必死にありがとうを伝えたが、果たしてこれは伝わったのだろうか……。





「……」

 少し落ち着いたところで、同室でお母様とシャルが一緒にお茶をしている。


 奥様とメイドが一緒にお茶。


 本来ならあり得なさそうな光景だが、僕が生まれてからずっとこうだったお陰で、不思議に思わなくなってしまった。


(ようやく一人で考える時間が出来た。現状を整理しよう)


 寝息を立てて寝たふりをして、それなりに冴えた頭を回転させる。


・特別な力を持っていて、自分の存在一人が国を揺るがす。

・勇者パーティに入って支援をしているが、役立たずだと思われる。

・親から無能の烙印を押され、辺境の地で無双する。


(……はぁ)


 最初に女神に望んだものは、今わかる範囲で殆ど何も手に入っていない。


 今の自分の性別が女性だから、きっと令嬢ものの世界だろうけどーー


(マジで読んでこなかったんだよな……進め方がわからん……)


 これまでずっと、男主人公が無双するラノベばかり読んだせいで、悪役令嬢ものの知識が全くない。


(どうすれば……)


 まるで指針の存在しない世界。


 考えれば考えるほどこんがらがり、気づけば僕は……。


「すーっ……すーっ……」


 寝息を立てて眠ってしまった。



 赤ちゃんの身体、体力ねぇー!

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