表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

11話 お勉強


 勉強を始めて一時間。


 伯爵家の廊下を全力疾走という無礼極まった行動をしているユース。


『ガタン』とノックもせずに大急ぎで扉を開き、血相を変えて一言。


「オズワルド様、あの子は天才です」



 時は勉強開始時刻。


 まだ日本語一つ読めないヒカリちゃんは、ワクワクしながら椅子に座り、ユースの開いた教材をキラキラした目で眺めている。


「これは、ポーンロンド文字と言って、今この国で使っている言葉です」

「ぽーんろんどもじ?」


 曰く、ポーン王妃とロンド陛下が建国の際に用いた文字で、どの国にも存在しない不思議な文字にも関わらず、不思議な使いやすさから国中に広まった文字である。


 これが『ひらがな』


 そして、ひらがな単体だと読みにくいという問題を解決するために、同じくポーン王妃とロンド陛下で定めた文字。


 それが『カタカナ』


 更に、最初は暗号で使われていたものが、次第に風化して普段使いにも適応され始めた文字。


 いわゆる『漢字』


 ゴリッゴリに日本人が国を治めてた形跡が残ってる。


「すみません難しい話で、今のはかつての職業病……クセみたいなものなので、忘れてください」

「はい!」


 まぁ都合よく使いやすい言語で助かる程度に思っておこう。


「では最初に、文字の読み書きから」

「はい!」


 こうして幼いヒカリちゃんは文字をどんどん吸収し、元高校生の理解力も相まってあっという間に文字を覚えた。


 それがたったの一時間。



 そして現在。


「あの子は天才です」

「ユース、どうしたんだね」


 オズワルドは無礼すら忘れてユースを不思議そうに見つめる。


「たった一時間で文字を制覇しました。四歳とは思えない理解力をしています」

「うちの子……天才なのか?」

「紛れもなく天才です。今まで何度も生徒に教えて来ましたが,ここまで理解が早い子は初めてです」

「そうなのか?」

「はい。本来であれば一ヶ月かけて文字と優しい単語を教えのですが、たった一時間でその域にいるかもしれません」


 抑えられない興奮のまま弾丸で話す。



 一方僕はというとーー


「む……むずかちぃ……」

 十六歳の理解力と四歳児の脳をフル回転させ、かつて覚えていたはずの日本語に大苦戦。


 日本語ってこんなに難しかったっけ?


 なんでひらがなとカタカナがあるんだよ! どっちかだけで良いだろ! この先漢字も待ってるのマジで大変なんだけど!


「ふぁぁ……」

 ユースが休憩と言って部屋を出て行ったから、続きも出来ない。


 少し疲れてあくびをし、身体を伸ばしてユースを待つ。


 そしてーー


「すみません、ただいま戻りました……あ……」

「ヒカリ、ユースから聞いた……ヒカリ?」

「スーッ……スーッ……」


 僕は机にもたれてうたた寝してしまっていた。


「……少し、詰め込み過ぎましたかもしれません」

「子供に期待を寄せ過ぎるのは良くないね。僕も反省するよ」

「ヒカリ様は賢いですけど、その分エネルギーを使うのかもしれません」


 四歳児の脳と集中力では、キャパオーバーでした。





「はっ!」


 思い出したかのように突然目が覚め、急いで辺りを見回す。


 書斎にはユースと、ユースの子供のナツとルカ、お母様とシャルがおり、僕は少し大きいソファで母の膝枕で寝かされていた。


「おはようヒカリ?」


 お母様は優しい笑みで僕の頭を撫でる。


「ねちゃってた」

「初めてのお勉強で疲れちゃったかしら?」


 特に責めるとかもなく、微笑ましそうに頭を撫で続ける。


「ヒカリ様、申し訳ございません」

「へ?」


 そして何故か謝って来たユース。


「ヒカリ様の体力を考慮しておらず、少し急いでしまいました」

「それは……」


 むしろやる気満々の僕に応えてくれて大満足なのだけど……。


 大貴族相手だとその手の筋が通らない時もあるのかもしれない。


 なので僕はあえてこう言った。


「たのちかった!」

「楽し……かった?」

「あい!」


 ここで無神経に許しますって言うのも違うだろう、と、元高校生男子の魂が訴えてます。


「たのちかった!」


 なので、四歳児も無邪気を存分に使って『期待に応えてくれてありがとう』を表現した。


 結果ーー


「……勿体なきお言葉です。……天使だ」

「へ?」


 なんか、宗教チックになりそうで怖かった。


 そんなわけで勉強を再開しようとしたのだが……。


「ヒカリ、ナツちゃんとルカくんも一緒でもいい?」

「フィリア様!?」


 お母様がそんなことを言い出したのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ