少女へ寄稿
あるところに一人の少女がいた。彼女は15半ばの少女だった。
短い学校のスカートをひらめかせながら、得意げに街や駅を歩くのが常だった。
彼氏はいない。いたかもしれないが、それはつかの間のひとときだった。相手は野球部だったりサッカー部のエースだったりしたがメールのやりとりを少ししただけ。相手が本気で無いことはわかっていた。
「わりぇな、部活が忙しいんだ。今度の試合、俺の人生がかかってるんだ。いや、俺だけじゃない、チームみんなの努力がかかってるんだ」
そんな話を聞きたくない。彼女はそう思っていた。
あるとき彼女は犬が通りかかるのを見た。それは散歩中の犬だった。
「すみません。触ってもいいですか?」
彼女はしぶしぶ許可する飼い主の女性に一礼し、座り込んで犬に触れた。茶色い雑種の犬で何が魅力的かわからなかったが、彼女は動物が好きだったし、動物も彼女を好機の目でみた。愛らしい姿。コントラストの強い制服に、清潔感のある黒髪、犬が視認しやすい顔だ。
「芸とかできますか?」
「餌がないとちょっと…」
「私、犬とか好きなんです!」
「あなた、〇〇の生徒さん?気負つけてね、最近痴漢が多いらしいから…」
彼女が通り過ぎるところには会社員もいたし、おじいさんおばあさんもいたし、彼女より幼い子供もいる。でも彼女は特別な時期だった。
彼女はいつまでも子供でいたかった。
いい年をしてホットパンツをはいてかわいい化粧をして他人に媚びるのは嫌だった。
収入のある旦那をゲットしてもいっしょにいると子供っぽくて疲れるような、田舎暮らしはしたくなかった。
買い物をするときにレシートを一度も見たことないような金持ちに付き合ってバカになるのが嫌だった。
自分の子供が何かに興味を示したり、自分を出したりすると口出しして気持ちを暗くさせる鬼ばばあのような女は彼女の中では敵だった。
恋人に優しくするのに、老人や子供にきつく当たり散らすような男と結婚させられるような人生も考えたくなかった。
ここで人生を諦めてしまうというのも悲しい気持ちがこみ上げながらも彼女の選択肢の一つだった。しかし、彼女は世間知らずながらも生きようと思った。
そんな彼女のことを父親はあまり興味を示さなかった。教育は女の役割だったし、男と言うものは仕事をしていればよかった。どうせなら男の子が生まれてくればよかったとさえ思っていた。そしたら自分の人生はどれだけよかっただろうかとおさえ思っていた。女の子人生は暗すぎる。彼女の父親自身も会社で女性と関わるのは嫌だった。自分と同等の立場で女性と接するのが面倒くさかったのだ。
彼女の母親は彼女を放任した。お金がほしいと言われれば適当に金を与え、口では「勉強しろ」と言うことが主だったが、自分は高卒だった。いつも自分の美容にお金をかけ、家族旅行はみんな母親のいきたいところだった。父親の前では娘の面倒見のいい母親を演じていたが、それも夫から愛想をつかされて生活の糧を失うのが恐かったからだ。
彼女の面倒を見る者はいなかった。姉弟がいたらいいなと、姉弟のいる人の話を聞いていつも口に出していた。
(もし自分に兄がいたら、兄は妹に優しい存在になってくれる。もし自分に弟がいたら、絶対に可愛がってあげる。もし姉や妹がいたら、協力して生きていけるのに…)
彼女は看護士になった。これ以上献身的で自分が必要とされる職業はなかった。上手くいけば医者と結婚できるし、学校で学んだことを行かせることに自信を持った。
消防士が自分の命をかけて人を救う仕事なら、病気で弱ってる助けを求める人を助けるのは看護士の仕事。休日は健康な人たちと積極的に関わり視野を広げながら、保護犬を引き取って育ててみる余裕もあった。
嫌なのは老人からセクハラされることだったが、同僚が助けてくれた。
立派になった彼女をみて患者はこう思っていた。
器用な女性がいたもんだ。




