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【第6章】次に会うのは、デイジーの咲く頃 第9話

5分、10分と走っていくうちに、家や建物はどんどんと消え……驚くほどの緑の世界に入り込んでいく。


「田舎よ? 雪乃ちゃん大丈夫かな」

両手でハンドルを握り、真正面を向きながら春おばちゃんは言った。


「新幹線の中で、何だろ……岡山を越えた辺りから、めっちゃ緑ばっかになって……好きだなぁって」

「……へぇー……雪乃ちゃん大丈夫なんだ」

「うん。……何か……好き。上手く言えないけど」

「あははっ! そっかそっか。きっと……合ってるのかもね」

「……」

赤信号で止まっても、歩いている人もまばら。わたしの家の周りと違って、別世界に来たているような気分……。


「雪乃ちゃんはさ」

「うん」

「だいぶ頑張ってるみたいだね」

「……うん。何か……疲れたんだよね」

「疲れるんだ」

「何だろ。……人が多すぎるんだよ」

「人ねぇ……。確かに多いよねぇ、向こうはさ」


緑の世界。田んぼもいっぱいあるし……山に囲まれたエリアをどんどん進む。


「ねえ、窓開けて良い?」

「良いよ」

ガー……とゆっくりと助手席の窓が開いていく。ふわっと緑豊かな香りが心地良い。


「はぁー……空気が綺麗だね!」

「でしょ。排気ガスの臭いなんて、しないからね。ここ」

春おばちゃんは笑いながら言う。確かに澄んだ匂いしかしてこない。


「でも、うちは何にも無いからね? 覚悟しておいてよ?」

「えー……でも、それが良いなぁ」

「ふふっ……そう? あなたも『こっち寄り』なのかもね」

「もう嫌だもん。人ごみ」

「あっ、そうだ」

「……何?」

「うち、猫いるけど……猫、大丈夫?」

全く予想していなかった「猫」という単語に、一瞬驚いた。


「猫? 猫いるの? おばちゃんのとこ」

「いるっていうか、一緒に暮らしてるよ」

「へぇー……触ったこと無いなぁ」

「きっと楽しいと思うよ」

春おばちゃんは、意味深な笑みを浮かべる。わたしにはその意味が分からなかった。


「後、ちょっとだね」

「……凄いとこだね……」

「そう? じきに慣れるんじゃないかな?」


県道から脇道へ進み、ポツン、ポツンと家が建っているエリアに入ってきた。ゆらゆらと風に揺られながら、緑の世界がわたし達を出迎えてくれる。


「……のどかだね」

「のどかだよ。何にも無いからね」

軽自動車1台分しか通れないような細い道。アスファルトの道路は少し崩れていて、車が通る度に、ガクンガクンと揺れる。


「……もしかしてさ、あれ?」

細い道を目で追っていくと、正面に綺麗な1軒家が見える。


「そう。あれだよ」


家を出てから約7時間。わたしはようやく目的地に到着した。新幹線の中で食べたシウマイ弁当はすっかり消化されて、「何か食べたいな」とわたしは思った。



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