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【第5章】大きくても小さくても命だよ 最終話

「えーーー!!!」

「ほんと!!?」


どうせなぐさめられるんだろうなと思っていたわたしは、お父さんの言葉で一気にテンションが上がった。お兄ちゃんも。


「ああ」

「やったー! やったー!」

「引越しだー!」

飛び跳ねて喜ぶお兄ちゃんの横で……わたしは涙が止まらなかった。お母さんがそっとわたしの頭に手を乗せてくれる。


わたし達は引越しをすることになった。猫ちゃんと暮らせるように。この「ひらや」だと猫ちゃんと暮らせないからって。


「……そんなに泣くなよ、美穂」

「だって……嬉しいんだ……もん……」

お父さんとお母さんが顔を見合わせて笑っているように見える。


「ね! いつ? いつ引越すの?」

泣いているわたしの横で、お父さんに大声で話かけるお兄ちゃん。


相変わらず空気が読めない。恐らく新しい猫ちゃんが来ても……あんまり懐かない気がしている。


「まだ決めてないよ。これから探すから」

「そうね……色々サイト見てみないとね」


こうしてわたし達は、猫ちゃんと暮らせる家に引越しをすることが決まった。


「なぁ、良かったなぁー!」

寝る前なのに、ベッドでお兄ちゃんはずっとテンションが高いまま。


「うん」

「念願の猫かぁ! 次は絶対に一緒に寝るぞ」

「……頑張って」

「何だよ、その言い方。きっと大丈夫だって」

「なら良いけどね」


カチャリと鍵を開けて、久し振りにガララ……と窓を開ける。


「ん? 懐かしいなぁ」

「うん」

「黒猫ちゃん、お前……毎日見てたもんな」

「……うん」


「うるさいから……早く寝なさい」

お母さんが部屋に入ってきた。あまりないから珍しい。きっとお兄ちゃんの声が予想以上に大きいんだと思う。


「あっ……お母さん」

「何よ、窓開けてんの? 寒くない?」

「いや……」


お兄ちゃんが「ここからいつも黒猫ちゃんを見てたんだよ」と言うと、お母さんは笑った。


「何よ」

「……知ってたよ。美穂がいつも窓から見てたこと」

「えっ……?」

「夜の8時くらいでしょ? 確か」

「……知ってたんだ」

「それくらい分かるわよ」

「何だ……誰にもバレないように作戦立ててたのに……」


お母さんは少し間を空けてから、優しく私に話しかける。


「ずっと猫飼いたいんだろうなって思ってたよ?」

「……」

「お父さんといつも、『美穂がまた外見てる』って言ってたからね」

「……そうなんだ」

「うん。あなたが黒猫ちゃんの飼い主さんに言ったでしょ?」

「……え?」

「小さくても、大きくても『命』なんだよって」

「うん」

「それを聞いて、『これなら猫飼っても良いかもね』って決めたのよ」


「で? どんな猫ちゃんにするの?」

「黒猫! 絶対!」

「でね、また行くの! 猫カフェに。報告に行くの!」


今度はわたしが大きな声を出してしまった。


そっか。猫カフェのお姉さんが教えてくれたお陰で……うちにも黒猫ちゃんが来るんだ。


「ね! お母さん、また連れてって」

「そうね。お礼言わなきゃね」

「うん! 恩人だよ。恩人」

「ははっ……大げさねぇ」


窓の外。向かいの「ひらや」に

黒猫が姿を現すことは

2度となかった――




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