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【第5章】大きくても小さくても命だよ 第17話

(あ! いた! 黒猫ちゃん!)


ちゃんと来てくれたんだという嬉しさと……大丈夫なのかなという不安な気持ちで、何も考えることができなくなっていた。


(来て……こっちおいで……)


よたよたと歩く黒猫ちゃんに、頭の中からテレパシーを送る。近づくと逃げちゃうかも知れないから……。


いつもより1時間ほど早い。でももしかすると、いつも8時になる前からずっと歩き回っていたのかも知れない。


(来た! ……こっち来た!)


真っすぐわたしの方に向かって歩いてくる黒猫ちゃん。左足が悪いのか……左足を前に出す時に、一気に体勢が崩れるように見えた。「おいで」「おいで」とわたしは心の中でテレパシーを送り続ける……


「あー……猫ちゃーん……」

玄関先をゆっくりと通過して、明るい玄関の中に入ってきた……


「ね、あなた……大丈夫?」

小さい声で話かけても、じっとわたしの膝のところで動かなくなった。


「にゃぁ」

蚊の鳴くような細い声で、一声だけ出す。


(何、これ……)


やっぱり左足だった。黒い毛が明らかに血だらけになっているのが分かるほど……どこか怪我をしていた。


「……ちょっと……あなた大丈夫?」

「……にゃっ」

わたしの顔を見て、また小さく鳴いた。


「ねえ! お父さーん!」

ふすまをガラッと開けて、お父さんに向けて声を出す。わたしはこの場を離れるわけにはいかない。


「ん-? どうしたー?」

スマホを見続けながら、リビングから返事が聞こえた。


「ねー! 来てー! こっちー」

「んー?」

「良いからー! はやくーー」

「もう……どうしたー」

ようやくお父さんが立ち上がって、こっちに歩いてきてくれた。……ちょっと面倒臭そうに。


「どうした……? わあ! 猫か」

「そうなの。ねえ、この子……怪我してるよ?」

「あぁ……左足……血が凄いな」

玄関先に倒れ込んでいる黒猫ちゃんは、おとうさんの顔を見て鳴いた。


「……にゃん」


「……よし。……ちょっと待ってな」

そう言い残し、お父さんはリビングでスマホを調べ始める。


「あぁ……ここなら……」

どこかにお父さんは電話をかけながら、奥の部屋へと入って行った。


「お母さーん! ねえーー!」

お父さんがいなくなり、わたしはお母さんにも声をかける。


「何? どうかした?」

「猫ちゃーん。猫ちゃんが来てるのー!」

「えー? 何? 猫?」

「そうー! めっちゃ怪我してるの!」

「えー? 何、怪我?」


玄関まで歩いてきたお母さんも、黒猫ちゃんを見て驚く。「きっと喧嘩でもしたのかな……」と言っていた。


(喧嘩か……)


「大丈夫―……? あなた……」

わたしはお母さんの前で、黒猫ちゃんの頭をよしよしとさすった。これぐらいしかできることがなかったから。


「よし、連れてきて良いって」

お父さんがタオルを持って、玄関先まで小走りでやってきて言う。


「どこに?」

「ん? 病院だよ」

「え! 病院? 開いてるの?」

「夜間の病院。ちょっと言ってくるよ」


お父さんがタオルで黒猫を優しく包み込む。「にゃっ」と一声だけ鳴いたけど……全く嫌がらなかった。逃げ出しちゃうかと思ったけど。


黒猫ちゃんは段ボールで、お父さんの車へと運ばれて行った――


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