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【第5章】大きくても小さくても命だよ 第15話

カランッ……


「いらっしゃいませー」

店内に女性の声が静かに響く。


「あら? 昨日の……」

「……こんにちは……」

わたしはお母さんと一緒に来た『ねこの家』にやってきた。1人で電車に乗るのは勇気がいったけど、黒猫ちゃんのために頑張れた。学校がお昼までだったから、みんなには内緒で――


「今日も来てくれたんだ」

「うん」

「今日は1人?」

「そう。お姉さんに、聞きたいことがあって」


わたしはお姉さんに、これまでの出来事を聞いてもらった。


最近、家の周りを黒猫がうろついていること。最初は懐かなかったのに、晩ご飯の残りをちょっとあげたら、頭を撫でさせてくれるようになったこと。昨日の夜に怪我をしていたこと。お母さんはまだ言ってないこと――


「……なるほどなぁ」

お姉さんは腕を組みながら、鼻からふぅっと息を吐き出している。わたしはドキドキしながら、お姉さんの言葉を待つ。


「うーん……」

「……」

「美穂ちゃんは? どうしたいの?」

「……ほんとは飼いたい」

「だろうね」


そういうと、お姉さんは「ちょっと待ってて」とカーテンの奥に入って行った。


(んー……良く分からないけど、お姉さん何であんなに考えてるんだろう……?)


少し緊迫した空気でさらに緊張しているところに、お姉さんが戻ってくる。


「はい。サービスだよ」

「わーー! ありがとう!」

「内緒だよ?」

オレンジジュースを目の前に置いてくれた。


「黒猫ちゃん。どうしたら良いかな」

ストローの紙をピリリと破いて、ジュースに差し込んだ。


「飼い猫か分からないからなぁ……」

「うん。分かんない」

「野良猫だったらね。全然良いと思うよ」

「……何が?」

「ん? 保護して病院に連れていってあげて……そのまま一緒に暮らすの」

「そっか……」

「譲渡先を探しても良いね」

「……譲渡先?」

「そう。美穂ちゃんのお家で暮らせない場合は、美穂ちゃんが代わりに引き取ってくれる人を探すんだよ」

「わたしがやるの?」

「そりゃそうじゃない? 病院だけ連れていってさ、そのまま『ばいばい』は出来ないよ?」

「そうなんだ……」

「そう。保護するなら、責任持たないと」

「……」

「前も言ったでしょ?命には変わりないんだよ」

ジュースを飲みながら、わたしは「結構色々と大変なんだな……」と頭が痛かった。もっと簡単に何とかすることができると思っていたから。


「じゃあさ」

「うん」

「もし黒猫ちゃんが……誰かのお家の猫ちゃんだったら?」

「うーん……病院連れて行ってあげて……でもやっぱり美穂ちゃんのお家で預かる感じかな……それでチラシか何か作る感じ? 『黒猫預かってます』みたいな」

「……そっか」

「……ま、そんな感じかなぁ」

「じゃ、わたしが黒猫ちゃん病院に連れていって、そのままお家で暮らしても良いの?」

「野良だったらね。飼い猫の場合……さっき言った通りだけど、しれっと家で暮らしちゃうケースもあるよ」

「なるほど!」

「でもさ、飼い主さん……もしかしたら必死で探してるかもよ?」

「そっか……泥棒みたいな感じになっちゃうのか……」

「……まぁ、イメージはそんな感じ」


「気持ちは分かるけどね」

そう言うとお姉さんは寄って来た猫ちゃんの頭をよしよしした。


「でも、とりあえず何となく分かったよ」

「ありがと」

わたしも猫ちゃんの目の前で、赤い羽根のおもちゃをふりふりとさせた。この前よりは少し上手になった気がする。



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