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【第4章】親不孝者35歳、黒猫と暮らす 第21話

長崎県長崎市。


別に中学生の頃に就学旅行で来たわけでもない。お父さんの田舎があるわけでもない。イメージで選んだだけの場所。東北地方は寒いだろうからというのが、九州を選んだ理由だ。長崎市でなくても、別にどこでも良かった。


住む場所と仕事を決めるために、僕は予め2回長崎に1人で来ていた。幸い、僕が東京でやっていた半導体の設備関連の仕事は、そこまで特殊な専門性が要求されるわけではないため、全国どこにでも仕事はあった。


一応、仕事が決まった上で、退社してお父さんに報告した。貯金がほぼなかった。どうせ無駄遣いするつもりもないし……もうお金のことは諦めている。自己破産した家だ。


「これまでの人生、もう一度やり直したい」

「今からでも……何とかしたい」

そう思ってやってきた僕の心は、踊っていた。


どこに行っても東京に比べると過ごしやすい。毎朝乗っていた満員電車から解放されただけでも、僕は「来て良かった」と思った。長崎市は階段が多いけれど、さほど気にはならない。


車を買うお金なんて、もちろんない。新しく働くことになる会社の近くに家を借りて、僕の第2の人生が幕を開けた。


(こりゃ、楽だな)


東京にいた時と、ほとんど業務の内容は変わらない。給料は決して高くはないけれど……「新しく仕事を覚えないといけない」というストレスがないことは幸いだった。


「家に顔を出そうか」とか「たまには帰った方が良いかな」という想いはまったくなかった。いや、たまに思うことはあったけれど……「まぁ良いだろう」と思って自分の気持ちに無視をしていた、と言った方が正しい。


(……飛行機代も高いしな)


自炊などはせずに、外食で済ませる毎日。自分に都合が良いことにだけはお金を遣っていたけれど、飛行機代に回そうという頭はない。賭け事やギャンブルの類はしたことはなかったけれど、同年代の人達がお金を貯めて、家を買ったりしているのを、「無駄な買い物だ」と冷めた目で見ていた。


(せっかくの人生だ……)

(自分で何かやっても良いんじゃないか……?)


次第に僕は「自分で何か事業でもやった方が良いんじゃないのか」と思うようになっていた。人生を変えたくて誰もいないところでやり直そうとしていたのに……お金も一向に貯まる気配もない。仕事も……東京にいた時と同じく、「退屈だ」と思うようになった。


(300万円ほど貯めて……やりたいことをしよう!)

(……のんびり喫茶店なんか、良いんじゃないか?)


目標を300万円と決めて、35歳の時に僕は仕事を辞めた。


そして長崎市で小さな小さな喫茶店を開いた――




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