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【第4章】親不孝者35歳、黒猫と暮らす 第2話

「ゆったりとした時間の中で、お客さんにはコーヒーを楽しんでもらいたい」

喫茶店を思い切って開いた時、僕の心の中は希望に満ちていた。


自分勝手な理想に掲げ、「地域の方の役に立てれば」と思いながらオープンをさせた喫茶「凪」。蓋を開けてみれば、理想はあくまでも理想であって……現実を嫌というほど突きつけられた。


そもそも僕には貯金が全くなかった。お店をオープンさせる直前で、銀行口座に残っていたのは20万円ほど。


什器や機材は幸い中古で全部揃えることができたため、毎月の支払は無かったけれど、家賃や水道光熱費などを入れると……2ケ月間ほどしか生き延びることができないことが分かった。


2010年7月7日。七夕。

僕はこの日を一生忘れることはないと思う。喫茶「凪」オープンの日だから。別に七夕にした理由はまったくない。準備をしていたら、オープン日がたまたま7月7日になっただけのことだった。


朝10時に店を開け、期待と緊張で脇の下に汗をかきながら……サイフォンをじっと見つめていたのを覚えている。


(……おいおい)

(全然来ないな……)


結局、開店初日は2人だけの来店。ネットを見ると「最初は厳しい」と書いてある記事が多くあり、「まぁ、そんなものか」と楽観的に捉えるようにしていた。


(……このままじゃ、まずいんじゃないか?)


そう思い始めたのは、開店1週間が経った時のことだった。1日2~3人のお客さんしか来ない。もちろん来店した方には誠心誠意、心を込めたコーヒーを提供する。


(……もたない)

(これ……もたないぞ)


「このままではどう考えても、開店させた8月9月になったらお店を畳むことになってしまう」祈っても祈っても、お客さんが増えることはなかった。


絶対に必要なもの。それは家賃そして水道、光熱費。水道は払わなくても、すぐに止められることはないとネットで知ったけれど、家賃や電気代はアウトだ。出ていかなくてはならない。


仕事が終わった夜。食事は質素なものになった。白米にふりかけを節約しながらかける。夕食はそれで終わる。そして2階に上がり……付けたテレビをぼんやりと眺めるだけ。


寝ようと思い布団に入ると「明日も来なかったらどうしよう」という考えが勝手に浮かび上がり、眠れなくなってしまった。……そして自然と涙がこぼれ落ちる。


「なんで……こんなことになっているんだ」

涙を流しながら、「これまで何をしてきたんだ?」と自問自答を繰り返すうちに……朝を迎えていた。


そんな自分の生活、人生だけでもぎりぎりだったある日。

僕はパートナーに出会うことになる――


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