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【第3章】砂時計は3度で壊れる 第17話

黒猫が入ってきたであろう窓。猫の体ぶんだけ開いていて、涼しい風がわたしの髪を揺らす。その間も目の前の黒猫は……微動だにしない。


「ちなみに」

ようやく黒猫が口を開いた。


「戻すこと、できるよ」

「……えっ? 戻す……?」

「うん。そう。今までのことを無かったことにできるってこと」

「……」

「どうする?」

「何で? せっかく……せっかくみんなと昔みたいにやっていけるのに?」

「それって、本当にそうなの?」

「え? ……どういうことよ」

「だってさ、君はこの後……『気付かれなく』なっていくんだよ?」

「……」

「お父さんにだって、お母さんにだって。健二にだって……もちろん真衣ちゃんにもだ」

「……止めてってば!」


確かにそうだ。今のところは、そこまで大したことになっていない。でも……今後はどうなっていくのか、わたしには分からない。もちろん目の前の黒猫にも。


「前に戻ればさ、『気付かれない』ことはないでしょ」

「まぁ……そうだけど……」

「砂時計」

「えっ? 砂時計が何よ……」

「砂時計。それをひっくり返せばいい」

「どういうこと?」

「今回使ったのと同じ人の前で……もう一度使えば良いんだ」

「そしたら戻るってこと?」

「そう。戻る」


淡々と黒猫は説明した。

お父さんやお母さんに健二。そして真衣ちゃん……みんなの前でもう一度砂時計を握れば……これからの未来、わたしは気付いてもらえるってことか……。


(でも……)


真衣ちゃんたちに無視されたり、冷たい言葉を浴びせられたり……お父さんたちが喧嘩をしていたりする毎日に戻るんだ……それも嫌だな……


「どうするの?」

「今のままが……良いかな……」

「ふぅん。そう」

「やっていけんの?」

「……前の方が、もっと嫌だもん」

「ふーん」


またお互いに無言になった。今までの人生のことを考えると……呼吸が苦しくなる。もちろん、それを作ってしまったのは、わたしのせい。それは分かっているけど……


「あー……もう……」

「悩んでるね。どうしたの」

「そんなの……決まってるじゃない。これからどうなるのかってこと」

「どうなるのかって?」

「さっき言ってたことよ。気付かれなくなるのって……どこまで何だろうって」

「……」


「あのさ」

「何」

「……」

「だから何よ。もったいぶらないで早く言ってよ」


じっとわたしの目を見つめながら、悲しそうに黒猫は言った。


「もう……分かってるんじゃないの?」

「気付かれないと……どんな感じになるかってこと」


わたしはまた、頭の中が真っ白になった。予想した内容と全然違ったから。





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