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【第3章】砂時計は3度で壊れる 第11話

「ね、洋子ちゃん」

「ん? 何?」

「トイレ。寄って良い?」

「あっ、そうだね。そうしようか」

突き当りの廊下を右に曲がる。少し歩けば……左側には女子トイレ。


(先回りしよう……)


ふわっと宙に浮いた浮遊霊のわたしは、紙飛行機のようにふらふらと縦に揺れながら、2人を追い越した。


(……これで良し)


「でさぁ……」

「えー! ……なんだ」

2人の声が段々と近づいてくる。確か、最初に手を洗ったはず。その時に……。朧気だった記憶が、断片的に浮かび上がってきていた。


「ちょっと手、洗うね」

「うん。……わたしも洗おっかな」

『わたし』が蛇口を捻ったその時……


「あれ?」

「どうしたの?」

「……水、出ないな」

「えー…? 何それ。……あれ? こっちもだ」


(これで……どうだ……)


わたしは『わたし』が捻っている蛇口を、全身全霊で捻ることができないように、押さえつけていた。指がちぎれて無くなってもいい……そんな覚悟を決めていた。


(お願い……もう……回さないで……)


わたしの指、そして腕の筋肉は限界を迎えていた。隣の洋子ちゃんの蛇口には、2人が来る前に、紙をぐちゃぐちゃにして突っ込んである。後でちゃんと取るつもり。


(痛―――っ……ちぎれる……)


「あれぇー? 何で出ないんだろ……」


(お願いーーーーー……神様……)


キー……ンコーン……カーン……コーン……

キーン……コーン……カー……ンコー……ン


「あっ! やばっ……」

「予鈴じゃん! 香織ちゃん、行こ行こ!」

「うん!」

2人はカバンを手に取り、トイレから走って出ていった。わたしが勝利を収めた瞬間だった。


(……やった……! 勝った……)

(指……痛ああ……)


真っ赤に腫れあがった5本の指と手のひら。「これで、もう大丈夫なんだ」と思いながら眺めていた時……また景色が急激に霧に覆われた――


(これで……もう、大丈夫のはず……)


意識を失いながら、わたしは一人、微笑んでいた。




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