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【第2章】君たちを繋ぐパレット 第12話

(……何、そんなことがあったんだ)

(あぁ。こりごりだよ、もう)


わたしはハチに何と言って良いのか……分からなかった。パパもママも、わたしにとっても優しいから。


(お前はよく家にいれるよな)

(……えっ?)

(人間なんてさ、俺達のこと道具みたいしか見てないだろ?)

(道具……)

(そうだよ。自分の好きな時に自分の側に置いておきたいとか)

(……)

(なでたい時に頭なでるとかさ)

(……うん)

(自分の言うこと聞かないと、『何で言うこと聞かないの!』みたいな感じだろ?)


(俺の気持ちなんかさ、何一つ考えてくれないじゃんか。あいつら)

(学校で習ったことと、全然違うじゃねーか)


わたしとハチを隔てている窓は、とっても薄いのに……何だかすごく分厚い窓になっているような気がした。ハチの性格は良く知ってる。一体、どんなことをハチに伝えれば良いんだろう……?


(いや、ほら! ……その人が、あんま良くない人だったのかも)

(はぁ? 何だよお前。人間の肩、持つのかよ)

(えっ? そういうわけじゃないけど……)

(ふん。随分と飼いならされてるじゃねーか)

(何よ……その言い方)

(言葉の通りだよ。お前、騙されてるぞ)


そこまで捻くれた性格じゃないはずなのに……よっぽどハチにとっては嫌な体験だったみたい。


(そうだ! わたし、ハチがお家に入れるように……パパとママに頼んでみるよ!)

(……)

(良くない? 外……寒いでしょ?)

(いらねーよ。余計なことすんな)

(……えっ?)

(だってさ……)

(余計なことすんなって言ってんだろ)

(……何で……)

(外の方が、せいせいするよ)

(風邪引いちゃうよ……?)

(うるせーな。お前はそこで騙されて生きてりゃ良いだろ)

(……)

(……じゃあな)


ハチはくるりと向きを変えて、ゆっくりと歩き出した。少し震えているようにも見える。


(あぁ、そうだ)


わたしの方に振り向いて、ハチは言った。


(トラも、逃げ出したみたいだぞ)

(えっ?)

(昨日、あいつっぽいヤツ、見かけたから。たぶんトラだと思う)


そう言うと、再びわたしにお尻を向けて歩き出した。


(ねえ!)

(ねえ!)

(ハチってば!)


ハチは振り向くことなく、向かいの家の裏に消えた。

せっかく会えて嬉しかったのに……わたしの心は雨が降る直前の空のように、もやもやとしていた。


(パパとママも……わたしのこと騙してるのかな)

(ハチも……あれじゃ風邪引いちゃうよ……お家の中でもこんなに寒いのにさ……)


「わたし達、何のためにここに来たんだっけ……?」そんなことを思いながら、襲ってきた睡魔に勝てず、わたしはゆっくりと瞼を閉じた。


(……どうしたら良いんだろう)



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