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【第7章】やんちゃな彼氏は、子猫で更生! 第11話

「ほら! ここがとりあえず、お前の家だ」

「……」

「ま……ゆっくりしていいぜ。ほら」


俺は段ボールをゆっくりと床に置いた。じー……っと様子を見るように、段ボールからぴょこっと顔を覗かしている。


「……何だよ。出ていいんだぞ? ほら。遠慮すんなよ」

「……」


あれだけミャーミャー鳴いていた黒猫が、うんともすんとも……言わなくなった。


『猫ちゃんは、新しい場所が苦手です』

『しばらく様子を見てあげて下さいね』

『急かしたりしない方が良いかな』


動物病院の受付の人の顔が浮かんだ。


(……そっか。ちょっと放っておいた方が良いのか)


俺も黒猫の動きに合わせて、ピタリと動くのを止めた。後ろから「何をするんだ?」と思いながら……じーっと黒猫の後頭部に視線を送る。


1分ほど経つと、のそっと黒猫が動き出す。段ボールに両手をかけて……箱を乗り越えて部屋に降り立った。包帯が巻かれた部分は痛々しいけれど、それでもゆっくりと部屋の真ん中に向かって……歩いていく。


(おぉ……! やっと動き出したか!)


まるで親にでもなったかのように、俺は嬉しかった。部屋の中をキョロキョロしながら、よたよたっと歩いている黒猫を見ていると、それだけで「成功だ!」と感じていた。


「おい。適当に色々と見ていいからな?」


(……よし。一服すっか)


台所のドアをガラララ……と開けて、いつも通りの帰宅後の一服。俺は胸のポケットから煙草を取り出し、火を付け……


『猫ちゃんは煙草ダメですからね? もちろんワンちゃんも』

『できるだけ控えて下さいね?』


またしても受付の女性の顔が頭に浮かんだ。


(……あっ……)


火を付けて、一瞬だけ吸い込んだ煙草……火の付いた部分を、俺はじっと見つめて……「くそが!」と思いながら、水で無理矢理消した。


(……くそっ)

(まぁ……いい。辞めるわけじゃねぇ。……減らすだけだ)


今まで1日2箱吸っていた煙草。これが減るんだったら……健康にも良いし、金だって……節約できるじゃないか。そう思うことにした。


「にゃぁー」


部屋から黒猫の声が聞こえてきた。俺は慌ててガラッ!と台所のドアを開けて部屋へと飛び出していた。


「……どうした?」

「にゃあ!」

「ん?」

「……にゃあー!」


俺の顔を見て、再び鳴きだす。どうやら、この家にいることが……落ち着いてきたみたいだった。


『最初はたぶん、色々とお部屋のチェックをすると思います』

『自分にとって、安全な場所かどうか? みたいな感じです』

『じきに慣れてくるとは思いますけどね』


女性の言ってた通りだ。もうこれで……「安全な場所」って認識してくれたってことだな。俺はガラにもなくほっとしていた。


「……よし! 慣れたみてぇだな!」

「にゃー!」


よたよたと俺の元に近づいてきて、頭をコツン!とぶつけてきた。


なぜだ……? 

なんでなのか……良く分からない。

でも、溢れて止まらねぇんだよ……涙が……


ぐずっ……

ぐずっ……


俺が鼻をすすっていても……お構いなしに、黒猫は俺に頭をすりすりとすり寄せてきやがる……


「……んだよ。ご挨拶ってか……?」

「……」

「まぁ……よろしくな。狭い家だけどよ」


頭を撫でてやると……これまた嬉しそうにグロロロロ……って喉を鳴らしやがる……こうして俺と黒猫の生活がスタートした。





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