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【第7章】やんちゃな彼氏は、子猫で更生! 第6話

「ね! ランドリー行くけど……もう服、ないよね?」

「……ん? あぁ。それだけで良い」

「オッケー! じゃ、行ってくるねー」

「おぉ」


思い返してみると、ちょっと雨が降った日……真美子は必ず「他に服、ある?」と俺に聞いていた。俺は何一つ手伝うことはせず、それどころか……真美子の方を向いて答えたことがない。


コインランドリー。


俺は人生で初めて来た。いつも真美子の仕事だったから。


(乾燥……?)

(……洗濯?)


壁によく分からないことが書いてあり、洗濯機のようなものが全部で12台ほど置いてある。そのうちのいくつかは、すでにゴウン……ゴウン……と音を立てながら、動いていた。


(へぇ……)


とりあえず、俺は1,000円札を3枚だけ財布に入れて持ってきた。「流石に3,000円以上はしないだろう」と思って。コインランドリーが一体いくら必要なのか?すら……俺には分からなかった。


(……いくらだ?)


『洗濯のみ……800円』

『洗濯+乾燥……1,100円』

『洗濯+乾燥(除菌)……1,300円』


(……種類、選べんのか)

(まぁ……乾燥までやった方が良いよな)


「1,100円か」と思い、ビニール袋に詰め込んである服を、乱雑にドラムの中に放り込む。


(よし……)


1,100円を投入しようと、金を入れるところを探すと……俺は驚いてしまった。100円玉しか、使うことができなかったから。


(はぁ? 札しかねぇぞ……)


俺はランドリーの中をぐるりと見回し、両替機を探す。……どこにも両替機は見当たらない。そんな時、1枚の張り紙が目に入った。


『両替不可』


「……おいっ!」


思わず店内で声を出してしまった。「どうすんだよ……」と少しの間、途方に暮れる。


(仕方ねぇ。コンビニに先に行くか……)


ドラムの中に服を入れっぱなしにしたまま、俺は車に乗ってコンビニへと向かう。弁当を買うついでに、両替をするために。


「いらっしゃいませー……」


気だるそうな声で、高校生らしきアルバイトが俺を声で出迎える。まだ夕方だと半額シールがないことは分かっているから、いつものからあげ弁当を手に取った。通常料金だけれど仕方ない。そしてコーラを1本手に取って、いつものレジへと向かう。


(……)


「いらっしゃいませ」

「お弁当……温めますか?」


(……)


「……どうされますか?」


「あ、悪りぃ。……ちょっと1回、なしにしてもらえるか?」

「買い忘れたものがあって」

そう言うと、俺は弁当とコーラをキャンセルしてもらい、カゴを持ってレジを離れた。


(……)

(んだよ……ったくよぉ……)


人生で初めての、「ペット用品売り場」。キャットフードが山のように置いてある。俺はしゃがみ込みながら、1つ1つ手に取って見てみることにした。


(カツオ味……)

(マグロ味……? 知らねぇよ……一緒じゃねぇのかよ……)


どうやら色々な味があるらしい。色も様々だった。紫色……緑色……色々なパウチが置いてある。


(これで良いか……)


もちろん俺が選んだのは、マグロ味。理由は一番安いからだった。レジに持って行くと、店員は「猫……飼ってるんだ」と言わんばかりの目をしていたけれど……俺は気付かないふりをした。


再びコインランドリーに行って、ようやく1,100円分。100円玉を11枚機械の中に入れていく。どうやらちょうど1時間かかるらしかった。


(……一度戻るか)


車をまた2分ほど走らせて、家の駐車場にとめる。5段の階段を上って……家の前まで……


「にゃああああ……」


また黒猫が鳴いている。さっき俺が出掛けたところと同じ。……どうやらずっと待っていたらしい。


(お前……マジか……)


「ああーー……ん」

「にゃああ……ん」

切なそうな目で、俺をじっと見つめながら……何度も何度も鳴き続ける。


「ったくよぉ。……ちょっと待ってろ」

俺は一度家に入り、台所へ。ガチャッ……と皿を1枚取り出して、そのまま外へと再び出ていく。


「ほら。腹、減ってんだろ?」

コンビニで買ったパウチをビリリ……と破ると、黒猫がガッ!とパウチに向かってくる。クンクンクンクン……と鼻をひくひくさせながら、超真剣な目で、パウチの匂いを嗅いでいる。


「待てって。ちゃんとやるからよ」


パウチを持ちあげると「えー! なんで!」「ちょうだい!」という表情をしながら、俺の膝に手をつきながら、背伸びをしてくる。目は皿をじっと見つめたまま。


「お前……どんだけ腹、減ってんだよ……」

「……ほら、食えよ」


皿を地面にゆっくりと置くと、必死な様子で黒猫はキャットフードを食べていく。


「うにゃむにゃむにゃ……うにゃむにゃ……」


声とも音ともとれない……不思議な音を出しながら一心不乱にがっついている。そして俺は、じっとその様子を見つめていた。


「そんな、がっつくなよ……まだあるからよ……」

「旨いか?」


皿の上のキャットフードを一気に食べ終わると、俺の方に輝く瞳を向けながら……ぺろりと口の周りを舐めた。


「にゃぁーー……ん」

「……おかわりってことか……?」


俺はパウチに残ったキャットフードを、全部皿の上に乗せる。


「ま、食ってろよ。俺は洗濯もんがあるから」


そう言って黒猫の元を後にして、車へと向かう。途中ちらりと黒猫の方を振り返ってみると……まだ必死にキャットフードにがっついていた。


(……)

(そろそろ……1時間近く経つよな)


車のキーを回し、コインランドリーへと向かった。


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