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【第7章】やんちゃな彼氏は、子猫で更生! 第5話

(また別のとこ、探すかな……)


5段しかない階段をゆっくり上り、俺は明日からのことを考える。まさか落ちることは無いと思っていた派遣の面接。


(くそっ……もう面倒くさくなってきた……)

(チッ……イライラする)


「新しい所を探す必要がある」ということだけでも、小さなプライドが傷ついたような気がして……無性にイライラしてくる。「金なら何とかなるんじゃないか?」そんな気さえ、してくる。


(はぁ)


足元に落ちている白い紙をぐしゃりと踏みつけて、ポケットをガサゴソとまさぐる。鍵を取り出した時だった。


「……にゃぁー……ん」


俺の足元に、猫がいた。


「うわあ!!!」


小さな黒猫。左足の近くで……俺の顔を見上げて鳴いていた。


「お前……何だよ……」


一応、周囲を見渡してみる。でも……誰もいない。誰かが猫を俺に放ったわけじゃないらしかった。俺の住む平屋は、昼も夜も……働きに出ている人が多い。そのため犬や猫の鳴き声なんか、今まで全然聞いたことがなかった。


「にゃあ!」

「にゃーーー……」


子供の頃から猫を飼ったこともなければ、撫でたこともない。別に嫌いというわけじゃないけれど……積極的に野良猫に近づいていくこともなかった。初めて間近で見る、黒猫の瞳。思ったよりも大きくて、「何だか人間みてぇだな」と思った。


「……あっち行きな」

「にゃああああ……」

「うるせぇなぁ……あっち行けって言ってんだろ?」

「にゃーーー……」

「何言ってんのか分かんねぇよ」


石ころだったら、左足でカン!と蹴とばしていたかも知れない。左足の筋肉が、一瞬だけピクリと動いたけれど……猫を蹴る気持ちにはなれなかった。


「……じゃあな。うち、金ねぇから」

「どっかの金持ちのとこ、行きな」


ピシャリとドアを閉じて、内側から鍵を掛けた。


「にゃああーー……」

「にゃーーーーー……」

「ああああ……」


(はぁ……何しに行ったんだよ、俺は……)


ギュッ……ギュッ……と右手だけでネクタイを緩めていきながら、ヨレヨレのジャケットを椅子に掛ける。「無料で行ってんじゃねぇんだよ」と思いながら、いつものジャージに着替え、煙草に火を付けた。


「にゃああああーーー……」

「あおおおおーーー……ん……」


(んだよ……うるっせえなぁ……)

(まだ鳴いてやがんのかよ)

(面倒くせぇ)


俺が家の中に入ってからも、外で鳴き続ける黒猫。うるさい音をかき消すためにベッドに横になりながら……イヤホンを付けて動画を観ることにした。


――


――


――


(あっ……)


スマホが俺の体に倒れた拍子で、目が覚めた。


(あ……あぁ……寝ちゃってたのか)


「うーん……」と体を起こすと、目の前にはぐちゃぐちゃに投げ散らかされている、俺のTシャツや服が山のようにある。カーテンの間から差し込む光も、だいぶ傾いていて、スマホに目をやると、時間はもうすぐ夕方6時になろうとしていた。


(飯と洗濯……)


晩飯も買いに行かないといけない。それに……真美子がやってくれなかった、俺の服の洗濯。そろそろやっておかないと、次の日に着る服が、もうない。


(……仕方ねぇな)

(行くか……)


金はかかるけれど、仕方ない。俺はコインランドリーに行くために、ゴミ袋に服を適当に投げ入れる。待っている間に、コンビニに弁当を買いに行こうという作戦だ。まだ金はある。


ガサっとパンパンになったゴミ袋を肩に下げ、玄関のドアを開ける。


(……!)


玄関先に……さっきの黒猫が、まだいやがった。


はっと俺の方に振り返って「にゃーーーーー……」と懇願するような顔で鳴いている。


「……邪魔だって。どけよ」


俺は顔を見上げて鳴いている黒猫を無視するかのように、ゴミ袋を車にボンと投げ捨てるように置いて……車のエンジンをかけた。



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