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【第7章】やんちゃな彼氏は、子猫で更生! 第3話

真美子が出て行って2日が経った。


(んだよ……)


床にぐちゃぐちゃに脱ぎ散らかしてある服。汗をかいていないやつを選んで、Tシャツを脱ぎ着替える。コインランドリーに行くのも、金がかかるけど……そろそろ着る服が無くなる。


(いつ……帰ってくんだよ)


25万円。


家賃もそこまで高くない。もちろん……何としないといけない事は、俺にだって分かってる。でも、明日や明後日に人生が終わってしまうというわけでもない……


(……飯)


ガラリと台所のガラス戸を開き、冷蔵庫の中を物色する。


(卵……何だ? 挽肉……?)


面倒くさい。「なぁ、飯は?」と言えば、手早く料理を作ってくれた真美子はいない。


(……卵焼きでも作るか?)

(いや……面倒くさい。米、炊かなきゃいけねぇのかよ……)


ジャーは口が開いたまま。昨日の朝にご飯を食べてから……そのまま。しゃもじが入ったままになっていて、誰も洗っていない。


(……)


「今日だけだ」と思い、タンスの中の封筒から1万円札を抜き取る。そして地面にぐちゃぐちゃになって置いてあるジャージに着替えて、そのままコンビニへと向かった。


(……)


コンビニへ向かう足取りが重い。「これを使えば、24万円かよ」自分の命が……少しずつ削られていくような気分になる。


「……いらっしゃいませー……」

自動ドアをくぐると、真っ先に弁当売り場へと向かう。左下からざーっと目を通すけれど、割引が貼られた弁当はまだ置いていない。


(……んだよ……仕方ねぇな)


俺はからあげ弁当とコーラを1本買って、急ぎ足で家に戻る。「1万円札なんか出してくるなよ」と言いたげだった店員の顔は無視をした。


「……真美子」


ドアを開けると、玄関には真美子のサンダル。どうやら帰ってきたみたいだ。本当は「良かった」と思っているはずなのに……急に怒りが沸いてくるのは……なんでだ?


ガーッ……


ふすまを開けると、正面のテーブルに真美子が座っていた。顔は若干俺の方に向いているけれど……目を合わせようとはしていない。


「……なんだ、帰ってきたのか」


がさり……とビニール袋を台所に置いて、真美子を気にする素振りも見せずに、弁当のラッピングをはがす。


「……どこ行ってたんだ?」

ちらりと真美子の顔を見て、割り箸を割りながら話かける。「俺は問題なかった」という雰囲気を出しながら。


「……ちょっとこっち来てよ」

「……え?」

「そんなの食べてないで……こっち来てって言ってんの」

「飯ぐらい食わせろよな」

俺はからあげを口に放り込み、ご飯を食べる。


「……いらいらさせないでよ。こっち来てって」

「……」

「聞こえない? もう言わないよ」

「……面倒くせぇな」


弁当を台所の横において、しぶしぶ真美子のところへ歩いていく。


「……どうするの」

「何が」

「これからよ」

「これからって?」

「お金。無いのに。……働かないわけ?」


俺は座ることなく、腰に手を当てて、真美子の横に立って話を聞く。


「誰もそんなこと……言ってねぇだろ」

「じゃあ何で……面接行かなかったの」


朝10時からだった面接。派遣社員ではあったけれど、かなり仕事を抱えている会社らしく、真美子は「良かった」と喜んでいた。俺は、朝起きることができなかった。夜中までずっとスマホで動画を見ていたからだった。


「……仕方ねぇだろ」

「理由を聞いてんのよ。……理由を」

「行きたくなかったんだよ」

「……はぁ?」

鋭い目で真美子は俺をにらみつけ、腹の中から押し出したような声で迫ってきた。


「もう、お金ないでしょ」

「……まだ何とかなるだろ」

「翔ちゃん……本気で言ってる?」

「25万あるだろ。真美子だって働いてるし」

「……」

「まぁ、俺だって……このままでいるわけじゃないしな」


「……ふんっ……」

真美子は小声で鼻で笑い……そのまま立ち上がった。


「……しばらく、出てくわ」


そう言うと、敷きっぱなしの布団の横にある押し入れに向かい、ボストンバックを取り出した。ジィーッ……とチャックを開けて、洋服を適当に詰め込み始める。顔は無表情のまま……。


「おい。何やってんだよ」

「……」

「何やってんだって言ってんだよ」

「……」

ちらっとタンスに目をやり、化粧品をバックに無造作に詰めている。


「おい」

「……」


「おいって!! 聞こえねぇのか!!!!」

俺はありったけの声で、感情に任せて怒鳴りつけた……


「……よし」

目をくれることもなく、小声で真美子は呟いた。そして、テーブルにカチャリ……と家の鍵を置く。


「……そういうとこだって」

「……じゃあね」


スッと俺の横を通り過ぎ、そのまま家を出て行った。


ガサッ……ザザッ……


外で何か音がしている。どうせ真美子が荷物でも外で整理してるんだろう。俺はいらいらしながら、「中でやりゃ良いのによ」と思いながら音を聞いていた――






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