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【第6章】次に会うのは、デイジーの咲く頃 第15話

トッ……トッ……トッ……


(……? 何……?)


トッ……トッ……トッ……


まどろみの中、遠くから何やら音が聞こえてくるような気がして、目が覚めた。あまりに疲れていたのか……特に気にすることも無く、再び眠りに落ちる……。


――


――


――


(……んー……眩しっ……)


朝。射し込んでくる、眩しい日差し。暗闇の世界から一気に日常に引き戻されるように、わたしは目を覚ます。


(……あー……朝かー……)


「良く寝たな」という感覚と共に、わたしはぐーっと布団に寝たまま、伸びをする。


(……?)


「わーーーー!!!」

枕の真横にある「何か」に、わたしはびっくりして大声を出した。


「何? 何?」

キッチンから春おばちゃんが飛び込むように和室へと入ってくる。


「何? どうしたの」

「えっ……? あ、これ……」

「あははは!! 良かったねー、雪乃ちゃん」

「えっ? 良かった……?」

「そう! プレゼント貰えたんだねー」


わたしの枕元には、カエルとバッタが……置いてあった。目に入った時、瞬間的に声を出してしまった。猫たちも「何だ何だ」と言わんばかりに、和室の隅からじーっとわたしを見つめている。


「これ、この子達からだよ」

「……え? この子達が持ってきたの?」

「そう。好きな人へのプレゼントみたいよ?」

「えー……」

「きっと、雪乃ちゃんのために……深夜、外に出て獲ってきたんだろうねー」

「あ……お風呂場から……」

「そう。頑張って獲ってきたんだよ。お礼言っとくと良いよ」


おばちゃんは、くるりと向きを変えキッチンへと戻っていく。


わたしは猫たちの方にちらりと目を向ける。

「……あなた達が、くれたの?」

「にゃあーん!」

わたしの言葉が分かっているのかのように、ハチくんが返事をする。


「……ありがとね」

「にゃー!」

「カエル……初めてだったから……びっくりしちゃったよ?」

「にゃっ!」

猫たちに近づき、優しく頭を撫でた。


とっても嬉しそうに目を細めながら、グルグルグル……と喉を鳴らしている。猫からプレゼントを貰うなんて思ってもいなかったから……何だか嬉しかった。


(ほんと……人間みたいじゃん……)


「じゃ、私が働いているトコ、行こうか」

朝ごはんを食べ終わると、おばちゃんは職場に向かうために準備を始めた。猫たちも窓際で3匹仲良く、ガツガツと朝ごはんに夢中になっている。


「えっ? 今日って仕事なの?」

「ううん? 休みだよ。買い物よ、買い物」

「へぇ……自分の働いてるとこに、買い物に行くんだ」

「まぁ、雪乃ちゃんに見てもらおうかなってのも、あるんだけどね」


玄関を開けて外に出ると、ふわっと涼しい風が顔を撫でていく。新幹線を降りた時の湿度を、ここではあまり感じない。


「この辺ってさ、あまり湿気が無いよね」

「九州の方でも山の方だからじゃないかな」

シートベルトを締めながら、おばちゃんは教えてくれた。


「じゃ、行くよ」

バックで砂利道を少し下がり、向きを変えてゆっくりとスピードを上げていく。


「結構かかるの?」

「うーん……20分くらいかな」

「へぇ……車が無いと、どこも行けないね」

「そうね。私、向こうで免許無かったからね」

「えっ! どうしたの?」

「そりゃ取ったよ? ……こっち来てから」

明るく笑いながら、当時の話をしてくれた。


「最初は……無い無い尽くしだったから」

「本当に、いきなり来たんだ」

「そうね……あのまま向こうにいたら、たぶん廃人になってたと思う」

「……そっか」

「今から行く所、農業やってるのよ。そういう人、多いんだけどね」

「農業……」

「そ。環境に優しい農業。本も出版してる」

「えー……凄い人じゃん!」

「凄いかどうかは、分からないけどね」


「農業」と聞いて、わたしの頭の中には白い頭巾を被った90歳くらのおばあちゃんの顔しか浮かんでこない。


「畑の横で、取れた野菜やお米を使って、レストランもしてる」

「へぇー……」

「私、たまたま出会えたから……働かせてもらってるのよ」

「そうなんだ」

「タイミングが良かったんだよね」

「ふぅーん……」

「毎日、土を触ってるとね、元気になるんだよ」

「……土」

「大自然だし。でも大きい街まで行きたければ、車で1時間くらいで行けるし。こういう場所の方が合ってたみたいだね。私は」

「活き活きしてるもんね。おばちゃん」

「でしょー?」

おばちゃんが大変だったなんて……ウソみたいに元気に見える。


ただでさえ、田舎なのに……窓の外を見ると、360度の緑。小高い山に囲まれた道を更に奥へと進む。


「そろそろ着くよ」

こんな場所にレストランがあるのかなと思っていると、おばちゃんは細い道を右へと曲がった。目の前には一気に開けた景色が広がり……お店と小さなレストランの姿。


「えー……広いねー……」

広大な土地。目を凝らして見てみると、何人かの人が農作業をしている。わたしのイメージとは全然違って、みんな若く見えた。


『めじろ』

お店の前に書いてる看板。きっとお店の名前なんだろう。


「さ、入ろうか」

おばちゃんは車をお店の裏側に止めて、入口へと向かう。3台ほど車が止まっているから、お客さんもいるみたいだった。





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