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【第6章】次に会うのは、デイジーの咲く頃 第12話

(……はっ!)


何かの重みで目が覚める。


(重……何? これ……)


仰向けで寝ていたわたしのお腹の上には、ハチくんがデンと乗っていた。


(いやー……猫が寝てるー……)

(こんな近くに……)


目を瞑り、手足を器用に折り畳んで気持ち良さそうにしている。……近くで見ると、目尻が少し垂れているように見えて、とっても可愛い。


(目、瞑ってるのに……何だか笑ってるみたいじゃん)


思わず一人、くすっと笑ってしまう。


寝ている体勢のまま、少しだけ首を上げて周囲を見回すと、クロちゃんとペペちゃんもわたしの腰の辺りで丸まっていた。


(いやぁー……可愛いー……)


広い窓にはさっきまで西日が入り込んでいたけど、気付けば夜が近づいている。電車の音も、車の音も何一つ無い……静かな部屋。外に広がるのは辺り一面の緑。そして部屋の中にはのんびりと寝ている3匹の猫たち……


(重いけど……ゆったりできるな……)


目を瞑って、頭の中をからっぽにするだけで、体の中に力がみなぎるような感覚になった。


ぶぅん……と車が近づく。おばちゃんが帰ってきたみたい。猫たちは一斉に反応して、バッと窓に顔を向けた。


(おばちゃんが帰ってきたの……分かるんだ)


そのままじーっと窓を見つめる3匹の猫たちの横顔。「ママを待ってたんだな」と思い、何だかとっても愛おしく感じた。


――


――


――


「大したものは無いけどね」とおばちゃんは言うけれど、用意してくれた晩ご飯はどれも美味しい。ハンバーグは特に格別……デミグラスソースが、レストランで食べてるみたい。


「こんな美味しいなんて……おばちゃんの所に来るお客さん、幸せだよね」

「あら。そう言ってくれるなんて、嬉しいわね」

「だってめっちゃ美味しいよ! これ。毎日お店やれば良いのに」

「たまにやるから良いのよ」


握りこぶしほどの大きさのハンバーグ。ナイフで切ると、中から白い湯気と一緒に、汁がじゅわっと溢れ出てくる。


「たまにやるのが良いんだ」

「そうよ」

「ふぅん……おばちゃんてさ、何で大分に来たの? 前から計画してたとか?」

「ふふっ……」

昔を思い出すかのように、優しく笑いながら……両手でスープを口元に運ぶ。


「……そうだなぁ……」

「え……何? 気になる」

「知りたい?」

「うん。知りたい」

「……私、病気になっちゃってさ」

予想していなかった答えに、わたしは固まってしまう。


「……えっ? 病気?」

「そう。たぶん……雪乃ちゃんと似てるかなぁ」

「わたしと……?」

「うん。雪乃ちゃんが病気って言いたい訳じゃ無いんだけどね」

ナイフとフォークを持ったまま固まってしまった。


「ある日、目まいが酷くなっちゃって」

「……目まい?」

「そう。会社行こうとすると……床が波打つのよ。ぐにゃあ~って」


(あっ……)

(わたしと同じやつ……)


「ずっと我慢してたんだけどね……」

「……」

「熱も出ちゃって。突然涙も止まらなくなっちゃってさ」

何かを穏やかに思い出すような目線で……窓の外を見ているおばちゃん……


「仕事行く前もそうだし。……会社出て、家に帰るのに駅に向かうでしょ? その時なんか……泣きながら歩いてたからね。私」

「……そうだったんだ」

「限界だったみたい。私」

「……」

「多分、私には都会は合わないんだと思う」

「……そっか」


にゃーんと鳴きながら、3匹の猫たちがおばちゃんの元に集まってきた。話の内容……理解できてるのかな……おばちゃんを慰めに来ているようにも見えた。


「大丈夫だよ!」

「僕たちがいるよ!」

わたしには何だか……猫たちが励ましているようにも見える。

この子たちの目。何でこんなにも……真っすぐで、温かいんだろう……?



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