終幕
2013年11月29日(金)
今日は、旅の最終日です。
今まで、本当に色々なことがありました。
それも今日で終わりです。
というか、何かアラームが鳴っています。
それに、何かノックする音が聞こえます。
「他のお客様の迷惑なので……」
あ、スマホのアラーム、サイレントになっていない!
今まで、スマホのアラームで目を覚ましていましたが、バイブレーションだけで音は鳴らないようにしていました。
それなのに、昨夜は設定を間違ったのか、ガッツリ音が鳴ってしまい、店員さんに注意されてしまいました。
そんな最終日の幕開けということで、少し幸先が悪いですが、まあいいでしょう。
というか、あれだけアラームが鳴っているのに起きられなかったので、バイブレーションだけだったら、寝坊していましたね。
さて、今日は朝の5時ぐらいに起きましてね。
何度目かわかりませんが、牛丼屋で朝食です。
ただ、今朝は味変じゃないですけど、焼き鳥丼にしました。
そうして朝食を終えつつ、家を目指す前に、いくつか行きたい場所があるので、そちらを目指します。
とりあえず、いつも通りメモを見ながら進み……かなり迷いましたが、一つ目の目的地に到着しました。
そこは、祖父のお墓です。
北海道へ向かう前にも来たんですけどね。
また、お墓参りということで、手を合わせました。
そして、ここまで無事に帰ってこられたこと、もしかしたら祖父が助けてくれたのかもしれないなんて考えもあり、感謝しました。
それから、家まで無事に帰れるよう、もう少しだけ助けてほしいといったお願いをしました。
その後、二つ目の目的地に来ました。。
そこは、サイクリングロードの休憩所です。
ここで犬を連れたおばさんなどに会って、色々と話を聞いてもらい、本当に救われました。
そして、北海道を目指そうと思ったのも、この場所です。
そのため、今回の旅のスタート地点は、この場所だったんじゃないかという思いもあり、もう一度来たかったんです。
そんなことを思いつつ、自分はギターが弾きたくなり、ケースから出しました。
そうして、しばらく弾いていたところ……
「おはよう」
当然ながら、待ち合わせみたいなことはしていません。
でも、犬を連れたおばさんは、今日も来てくれました。
「北海道まで行ってきました」
「ああ、行ってきたのかい?」
「それで、これから家に帰ります」
そんな報告をしました。
それから、またギターを弾いてほしいと言われ、色々と弾きましてね。
また、先日は話に聞いただけで会うことができなかった、ハーモニカを吹くおじさんも来て、演奏を聴かせてもらいました。
というか、この場所、偶然見つけた場所ですが、すごく静かで良い場所です。
話によると、夏でもそんなに暑くなくて良いそうですよ。
そして、最後にお別れをしました。
その際、またいつかここに来るといいと言ってもらえました。
まあ、普通に家から遠いので、なかなか来られないと思いますが、いつかまた来たいです。
心から、そう思いました。
さあ、あとは最後の目的地というか……家に帰ります。
この先は、ある程度知っている道なので、あまりメモを取っていませんけど、大丈夫でしょう。
というか、メモが役に立ったこと、ほぼないので変わりません。
ただ、走り始めてから少しして、問題が発生しました。
とにかく眠いです。
まあ、今日は割と早い時間に起きたせいでしょう。
普通にウトウトとしてきて、かなり危ないです。
そのため、途中スーパーに寄って、休むことにしました。
それから、軽食としてパンを買って食べて、ついでに缶コーヒーも飲みました。
そうして、多少は眠気も覚めたので、改めて行きましょう。
ちなみに、前に親の運転などでこの辺りに来た時、行きと帰りで微妙に道が違っていたんですよね。
なので、自分も見慣れた道を行った方がいいだろうと、行きとは少し違った道を選択しながら進んでいきました。
その結果、普通に道を間違えて、迷いました。
考えてみれば、行きの時もよく知らない道を進んでいたところ、偶然見覚えのある場所に出たといった感じで、行き当たりばったりでしたね。
そんなわけで、またコンビニに入り、地図を確認しました。
というか、ここまでするなら、普通に地図を買えよって言われそうですね。
ただ、こういった地図って、基本的に近辺の道しか載っていなくて、都度買うというわけにもいかないものなので、許してください。
そうして道を確認した後、コンビニを離れましてね。
途中、歩道が異様に狭い道があり、でも車道もそこまで広くないので、そっちを走るのも危ないといった感じの道に入ってしまい、ルート選択を間違ったかなと心配になりました。
ただ、そのまま進んでいったところ、広い道に入りました。
その後、時々コンビニで休憩しながら走り続けましてね。
国道4号と同じように、平行して二本の道が伸びている国道があり、間違った方で曲がってしまったところ、普通に迷いました。
というか、道が違うんだから、同じ番号をつけるなよと心の中で文句を入れつつ、またコンビニで地図を確認して、目的の道に戻ります。
そんな遠回りをしつつも進んでいくと、ついに地元が近くなってきて、見覚えのある道に出ました。
まあ、体力的には限界なんですけどね。
あと少しということで、飛ばしました。
というか、これまで何度も通った見慣れた道だし、そもそも約二週間ぶりぐらいなのに、何だか懐かしいです。
……そして、これで本当に旅の終わりです。
無事、家に着きました。
家には誰もいなかったんですけどね。
大きな声で「ただいま」を言いました。
それから荷物を降ろして……ここで、何となく気になっていた、荷物の重さを量ってみました。
量ったのは、自転車の後ろにつけていた、二つのリアバッグです。
一つは、8.2キログラム。
もう一つは、7.8キログラム。
合計すると、16キログラムでした。
……そりゃ重いですよ。
上り坂で苦労するわけですよ。
というか、もっと軽かったら、どれだけこの旅は楽なものになったのでしょうか?
あと、この二つのリアバッグだけでなく、上手く量れなくて重さはわからないものの、ミニギターのリトルマーチンも背負っていたわけで、相当な重量になっていたと思います。
それなのに、タイヤがパンクすることもなく、最後まで走り続けてくれた自転車に感謝しました。
そして、家に着いたと両親にメールしましてね。
それから、汗をかいたので、お風呂に入りました。
その間に物音がして、誰か帰ってきたと思いつつ、お風呂を出てから確認すると、父がいました。
「心配かけてごめんね」
「たく、母さんが病気になりそうだったんだぞ~」
父は、笑いながらそんな風に言いました。
さすがに怒られると思っていたので、かなり意外でした。
それから、北海道に行っていたことを伝えましてね。
とりあえず、会社に連絡しろと言われて、父の携帯電話から連絡しました。
そして、仕事については、これからどうするか、ゆっくり話そうということになりました。
まあ、前の職場に戻るということは確実にないですけど、これからのことは、少しずつ考えていきます。
その電話をしている間に、近くに住む兄夫婦が来ました。
電話している時に大声で名前を呼ばれ、上司にすいませんと言いつつ、上司からは、それだけ心配してくれる人が周りにいるんだから、何かあったらちゃんと相談しないとといった、どこか諭すようなことを言われました。
そうして上司との電話を切った後、義姉さんが泣いてしまいましてね。
釣られて、自分も泣いてしまいました。
そして、心配をかけてしまったことを謝りました。
それから、家族達の間で何があったかという、自分の知らない話を聞きました。
まず、何か部屋に手掛かりはないかと探したところ、中身のないバリカンの箱を見つけて、坊主にしているだろうということはわかっていたようです。
これについては、帰ってくる前にメールした際、坊主にしたんだけどビックリしないでねといった内容を送ったところ、知っているといった返事が来まして、そういうことだったんだなとわかった形です。
また、先日の健康診断の結果で、E判定の項目があることを見つけて、どこかの病院に入院しているんじゃないかといった心配もあったそうです。
そして、警察に捜索願を出したみたいで、大げさでも何でもなく、自分は失踪しているという扱いだったそうです。
ただ、旅に出ているんだろうなとは、何となく思っていたみたいです。
とはいえ、見慣れない自転車があったり、北海道土産の定番お菓子がテーブルにあったり、そうした情報から、「自転車で北海道まで行っていたの!?」と気付いたようで、当然ながらかなり驚かれました。
そして、母は怒るだろうな~なんて話していたんです。
それから、兄は郵便を受けないといけないと言って、一旦家に帰りましてね。
その後、少しして母が帰ってきました。
でも、母からも、まったく怒られなかったです。
正直なところ、家に帰っていいのかなと、少しだけ抵抗があったんですけど、母は自分の気持ちを理解してくれていたようです。
というか、色々とおかしいと思いつつ、特に何も聞かずに見守っていたら、急に姿を消してしまったといった形で、母としては何かできなかったのかなと反省していたようです。
とはいえ、姉夫婦はどちらもメチャクチャ怒っていたらしいので、さすがに今度怒られに行ってきます。
社会人として、やってはいけないことをしたという自覚はありますからね。
ただ、これについては悪意があってやったことなので、何とも言えないところです。
それから、自宅では久しぶりになる夕食です。
兄がまだ帰らない中、先に食べちゃいましてね。
そして、兄が帰ってきてからは、北海道で買ったモンスターを狩るゲームで遊びました。
このゲームは協力プレイができるので、これから兄と一緒にやりたいと思います。
というか、このゲームを予約したのに買わなかったり、義姉さんから誕生日祝いカードをもらっても何の連絡もしなかったり、自分が何かおかしいというのは、義姉さんも感じていたようです。
だから、このゲームを始めたことで、何だかすごく喜んでいました。
そんなわけで、自分には帰る場所があるということを知った、旅の終わりでした。
でも、本当の意味では、始まりだと思っています。
多くの人に心配を掛けてしまいましたが、この旅をして本当に良かったと思います。
まあ、いいことばかりではなかったです。
きついと思うことの方が多かったかもです。
でも、繰り返しになりますが、この旅をして本当に良かったという気持ちが一番にあります。
誰にも何も言わず、姿を消したこと。
ただただ走り続けたこと。
どちらも自分にとって、宝物となる経験でした。
だから、いつも書いていた、そんな一日でなく、最後はこう書きましょうか。
そんな「しっそう」でした。
―――――
<サイクルコンピュータのデータ>
また間違ってリセットしてしまい、アベレージとマックスは、今日だけのデータになります。
というか、一日目と二日目は、上手くつけられなかったので、何のデータも残っていないし、グダグダな感じですけど、一応これも記録ということで、残します。
・アベレージ
速度: 時速15.3キロ
ケイデンス: 53
・マックス
速度: 時速29.9キロ
ケイデンス: 83
走行距離: 94.9キロ
・総合マックス
速度: 時速43.9キロ
岩手から青森にかけての長い下り坂で出た速度が最高時速です。
ケイデンス: 111
意外にも北海道で出したケイデンスがマックスでした。
総合走行距離: 1069.5キロ
一日目と二日目を入れたら、1200キロは確実に超えています。
総合走行時間: 74時間17分59秒
こちらも一日目と二日目を入れたら、90時間超えです。
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2025年11月28日(金)
最後に、今頑張っている方に、当時の自分が言われた言葉を、今の自分の言葉として送ります。
あなたは今、真面目に頑張るだけになっていないでしょうか?
人生、真面目だけではダメです。
時には好きなことをしてください。
そうすると、その好きなことをするために、自然と真面目に頑張ることができます。
真面目に頑張ることより、好きなことをする方が大切だということを、忘れないでください。
あと、言いたいことは……
関東から北海道まで自転車で「しっそう」しました。
そんな経験、かなり危険なので、絶対に真似しないでください。
まあ、この話は全部フィクションなので、真似するも何もないんですけどね。
今の自分からそんな言葉を送ったところで、この物語は終幕です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




