4話 秘密の部屋
5日目 朝
看守たちの足音と共に朝を告げるサイレンが鳴り響く。自衛隊員は朝のサイレンが鳴ると退役後もすぐに目覚めてしまうと聞くが、実際このサイレンは災害警報なみに大きな音、そして耳に残る嫌な音をしているため、この監獄を抜け出した後も、この音がトラウマになるんだろうなと考える。
昨夜、ミヤビは調理当番だっため、この牢には戻ってこなかった。隣の部屋と会話などできるわけもなく、1人寂しく夜を過ごしたわけだが......
何年も共に暮らしてきた相棒がいないというのは、意外にも悲しいものだった。
看守が朝ごはんを配りに牢屋の前に近づく。すると、その背後には、見覚えのある人影があった。
「おはよ!レイ」
「ミヤビっっ!!」
そこにはにこにことしながらも、どこかくたびれた様子のミヤビが手を振っていた。
「お前ら、あまり大きな声は出すな。」
看守が再会の感動そっちのけで、俺らに注意の言葉をかける。それもそのはず、たった一晩で感動の再会みたに抱き合う人たちもなかなかいないだろう。
「今日は自由時間だ。それぞれの牢屋から自由広場への道は開放している。各自節度をもって過ごすように。」
看守は自由日の簡単な注意を言い残し、看守室へと戻っていった。
「いや〜。なんだか久しぶりだね!」
「本当だよな。昨日は寂しかったぜ。」
「ところで、そっちはなにか進捗あった?」
ミヤビが早々に本題に入ろうとする。
「あぁ。もちろんだ。とりあえず、最初のうちはここでいいだろ?」
そして、俺らは牢で進捗報告をしあうことにした。
「じゃ。まずは僕からかな?」
そう言うと、ミヤビはポケットから鍵と紙切れを取り出した。
「!?!?。鍵!?......と。なんだその紙」
「僕もわからないんだ。とりあえず、調理室内でもこの鍵は使えなかったんだ。牢屋の鍵は全部電子だし......多分どこか古い施設のものだと思うんだ。」
鍵を触ってみても、「宝箱の鍵」というのがしっくりくるような、細長い形状になっている。
「で、この紙切れはきっと地図なんだと思う。」
紙切れを開いてみると、いくつかの四角形、そしてマークが描かれている。
「多分この刑務所のどこかのエリアを俯瞰してみた図......って考えるのが妥当じゃない?」
あまりにも的確な推測に驚くが、ミヤビはもともと頭の回転が速い奴なのでと納得をする。
「じゃ。とりあえず今日はこの地図のエリアを特定するか?」
「そうだね。鍵の使用用途も早いところわかっておきたいし。......で?そっちの成果は?」
完全に自分のことを忘れていて、慌てて喋り出す。
「俺の方は物品じゃなくて情報だ。まず、16番が脱獄を考えているようだ。」
「脱獄......そっか、同志がいたわけだ。」
「あぁ。それと、そこにいた14番。アイツはハッカーだったらしくて、色々ここの情報を教えてくれた。」
「へぇ。どんな情報?」
「この艦が3つの決まったルートのどこかを通っているということ。そして、この艦のセキュリティは弱いということ。」
「セキュリティ?あぁ、そういえば。鍵を持っててもとくになんの検査もなかったぁ」
「そう。とりあず、囚人エリアには監視カメラも無ければ金属探知機もないらしい。監視カメラに関しては、狭い艦内だから必要ないだけ......とも言えるけどな。」
「なるほどねぇ。それで全員?」
「あ。後もう1人いたな。えっと名前は......悪い覚えてねぇや。だいぶ寡黙な奴でな。まぁ、あの感じだと看守に告げ口。なんてこともないだろ。」
「そう......まぁ、大丈夫だといいね。」
「それで、そこの3人と協力関係を気付いたんだ。とりあえず、このあとみんなで集まろうとしてるとこなんだ。お前のことも紹介しちゃったけど、いいよな?」
「もちろん。じゃあ早く向かわないとね。行こっか?」
ミヤビはどこか警戒しているよに。それを隠すように牢から出た。
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自由広場
ここ自由広場には、牢屋とは思えないほど設備が充実している。
ゲートをくぐると、まず正面には噴水を模したオブジェ。そこを中心に円形の広場が広がっており、そこに隣接して各施設がくっついている。
施設は全部で5つ。換金所、プライベートルーム、売店、ゲームルーム、カフェエリアだ。
ここ以外にも、広場の近くにはシャワールームなどがあり、自由に行き来することができる。
換金所というのは文字通り換金をするところで、俺らは刑務作業が終わるこどにコインを渡される。1コイン=100円で、そのコインを使って売店、ゲームルーム、カフェテリアなどで使用することができる。
正直、艦内でしか使えないのだからわざわざ換金する意味があるのかは謎だが、看守側にもなにか考えがあるのだろう。
売店には生活必需品や軽食、娯楽用品などが取り揃えられていて、普通のコンビニくらいの規模がある。
ゲームルームには、ルーレットとやポーカー。何人かでできるカジノ的なものが何個か設置されている。
賭け事などで負債を背負い犯罪に手を染めた。なんて人も多いからだろうか、すでに囚人内で熱い闘いが繰り広げられている。
カフェテリア。この艦内にはコックが1人だけ乗っており、その人が飲みのものや軽食を作ってくれるようだ。自由日は基本看守側からのご飯の配給はないので、あそこか売店で買って食べるしかないのだろう。
そして、俺たちが向かっているのはプライベートルーム。誰かに聞かれたくない。身内だけで盛り上がりたい。そんな人たち向けの部屋らしく、防音設備が整えられねいる。1日日に2組までで、午前午後に分けられ、完全予約制になっているようだ。
正直、こんな部屋が刑務所にあっていいのか疑問ではあるが、用意されているものは有効活用させてもらおう。
14,16番よりも先に着いたので、部屋に盗聴器等が仕込まれていないか確認する。
「レイ。こっちは大丈夫そうだよ?」
「あぁ、こっちも特にはないな。」
「それにしても、こんな部屋を用意したり、娯楽をたくさん用意したり......看守たちはなにを考えているんだろね?」
ミヤビの言う通りだ。出所することが可能な監獄なら、更生やメンタルケアを考えてある程度の娯楽を置くのは自然だ。
ただ、ここの監獄にいるのは全員が死刑囚。あと二十数日で処刑されることが決まっている。
「実は超小型の監視カメラがあって、所長とかが僕たちを見て楽しんでたり?処刑場についたころには仲良くなってるだろうと考えて、誰か1人だけが生き残れるデスゲームが開催されたり?妄想が捗るね!」
ミヤビが楽しそうに話す。
実際、この監獄の処刑内容はベールに包まれている。
昨日、14番さんが「この刑務者で処刑された。って報告は聞くのですが。処刑内容が明らかになってはないんです。普通は電気イスとか首吊りとか。書かれるはずなんですが......」と。
残酷非道な処刑や人体解剖、なにかの実験に使われてしまうのではないかと思うと、より一層脱獄をせねばと駆り立てられる。
2人で話していると2人が部屋に到着した。
「悪い。少し遅くなった」
「すみません。遅れてしまって。」
「いえいえ。まぁ、座ってください。」
テーブルはちょうど4人席だったので、俺とミヤビが隣に座り、向かい側に2人を座らせた。
「紹介します。コイツが俺の相棒のミヤビです。」
「こんにちは。ミヤビです。よろしくお願いします。」
「よろしく。」「よろしくお願いしますね。」と2人が挨拶を返す。
「じゃ本題に入るか。」
16番ことユウヤさんが立ち上がる。
「俺は3日後にここを出る。14番を信じてな。俺に着いてきてもいいが、海を渡る自信が無ければやめた方がいい。それで、あと3日間はお前らに全力で協力する。それで問題ないか?」
「ああ。」「もちろん。」「もちろんです。」と、他の3人が頷く。
「じゃ、まずはこの謎を解いて欲しいんだけど......」
そう言いながら、ミヤビは鍵と紙切れを取り出し、机の上に置いた。
2人は不思議そうに、困惑したようにそれを見つめる。
「なんだこれは?」
「調理室で手に入れた鍵と紙切れです。紙には地図のようなものが書いてあるんですですよ。」
ミヤビが丁寧に説明をする。
「これ......この部屋じゃないですか?」
「「「??????」」」
14番さんの突然や発言に皆が呆気に取られる。14番さんは紙の右端にある赤いマークを指していた。
「これ、基本四角形なのに、端っこに円の縁みたいのが見えるんですよ。ほら。」
たしかに、紙の端にはわずかな曲線があった。
「これが自由広場だとして、その隣にあるのがシャワー室だとしたら......多分。このマークはこの部屋を指し示しているのかと。」
「たしかに。みんな、探してみよう。」
先ほど監視カメラを探索した時にはなにもなかったようや気がするが、もう一度辺りを見回す。すると、16番が何かを見つけたようだ。
「おい。このイスの下。なんか穴あるぞ」
この部屋のイスは壁に固定されているソファになっている。16番はその隅にある穴を指していた。
「なんだこれ。さっき探した時は見つからなかったぞ。」
「ん?ああ。だってシールで隠されてたからな。」
16番は板目の違和感に気づき、シールを発見しそれをめくったようだ。
「おい、お前。さっきの鍵は?」
16番はミヤビに声をかける。鍵穴かもしれないということだろう。
「さしてみますね。」
そう言いながら、ミヤビが穴に鍵を差し込むと......
ガタッガタガタと、音をたて、ソファの固定が外れた。
ソファをどかすと、そこには下に続く階段が現れた。
つづく




