2話 残された手紙 【後編】
20:00。夕食が終わり、キッチンで皿洗いを始めた。他の囚人達はこの時間帯に牢屋での自由時間が与えられている。
そのため看守達は牢屋付近におり、このキッチン付近にはいない。
そもそも、深夜時間帯は巡回には来ないと聞かされていた。アクションを起こすなら今しかない。
「やるしかないか......」
ポケットから鍵と紙切れを取り出す。鍵は金属製で、今風のものというより古代の城などで使われてそうなものだ。
紙切れは四つ折りにされていて、厚みはなく薄くなっている。
看守から渡されているキッチンの鍵と見比べてみるが、形状はまったく異なっており、ダクトにかかっている鍵穴とも違うように見える。
鍵はいますぐ使えそうにも見えないのでポケットにしまっておく事にした。
次に四つ折りの紙を開いてみると、
「ん?なんだこれ......」
紙にはいくつかの四角形と赤丸やバツ印などが書かれていた。
何かしらの地図と考えるのが妥当だろう。ただ、どこの地図なのか、そもそもこの監獄のものなのか。赤丸やバツ印が示すものはなんなのか。
まだここにきて数日、わかるわけないと言えばそうだろう。
さらにはこの地図のようなものは上から俯瞰してみたもの。
実際は天井があるのでその場所に慣れてなければ即座に場所を特定することは難しいだろう。
紙切れも同様にポケットに入れておく。
今できることがなくなり、明日の朝食を考えることにした。朝食は基本的には看守側が用意してるパンなどの軽食が配られる。
が、コック長であれば勤務時間である翌日8:00までは好きに料理をすることができるので、1人だけ豪華な朝食を食べることもできる。
食料庫には卵やベーコン、レタスやキャベツなど朝食向きのものもたくさんある。
そこに、一つの段ボールがあった。なにかと思って覗くと、大量の麺が入っていた。
ラーメン。この国で嫌いな人は(以下略)
もちろんミヤビの大好物であり、襲撃したカジノでも、一杯10000円という超高級ラーメンを食べ逃げしたほどだ。
麺の他にも豚肉、もやし、ニンニク、海苔。ラーメンを作るに必要なものは全て揃っている。
ミヤビは唾を飲み込んだ。「食料庫にあるものなら何を使ってもいいぞ。」と、いう看守の言葉を思い出す。
2時間後。
「ぷはぁっ〜〜」
監獄生活4日目の夜。ミヤビはこの監獄でだれよりも幸せな顔をしているだろう。
ニンニクにニンニクを重ね、ほぼ暴力のようなラーメンを汁まで飲み干し、洗い物を始める。
脱獄計画中にマシマシラーメンを食べて一体に何をしているんだと我に帰る。
洗い物を終え、ベッドに入る。意外にも疲れが溜まっていたのか、横になった瞬間疲れがどっと出てくる。
そのとき、なにか違和感を覚える。
「ん?」
カンッカンッ。と金属を叩く音と少し風が吹いてくるような音が聞こえてくる。
部屋と部屋の間の壁はだいぶ分厚く作られており、隣の部屋の音が聞こえてくることはほとんどないはず。
あまりにも疲れが溜まっていたので、気のせいということにして寝る。
何かが始まろうとしている。そんな予感が脳裏をよぎった。
つづく




