2話 残された手紙 【前編】
食事の時間が始まると、囚人達の目は輝いているように見えた。
1日の過酷な労働を終えた後の夕食、今日のメニューはカレーとサラダだ。
カレー。この国で嫌いな人はいないのではないかというくらい皆に愛されている料理。
ちょうどいい大きさにカットされ、美味しそうに輝く具材。湯気のたつ白米。
疲労困憊状態の体は、それを見るだけで疲れが浄化されていくといっても過言ではない。
囚人の飯と聞くと質素で粗悪なものが提供されるようなイメージだが、この監獄ではその真逆だった。
鶏肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ。基本的な具材はもちろん。サラダにはドレッシングまでついている。
まあ、その日の飯の豪華さは担当しているコック達のよるとはいえ、食材も新鮮なものが多かった。
「めっちゃ美味そう〜」「早く食べようぜ!」「こんな飯久しぶりだわ〜」
がやがやとたくさんの声が聞こえてくる。自分の作った料理を美味しいそうに食べている人を見るのは、なんとも幸せな気持ちを感じさせる。
脱獄したら、足を洗って料理人。なんてのもいいのかもしれない。
て、いうのはさておいて。食堂に入ってからずっと気になっていることがある。
そこそこの広さのこの食堂の端にある本棚。昔ながらの中華料理屋にあるマンガや雑誌などを置いている棚を想像してくれればわかるだろう。
そんな棚には難しそうな言葉が並ぶ分厚い本がびっしりと並べられていた。
その中に1つ、明らかに材質の違う本があった。
古びた金属特有の色感で、タイトルは書いていない。ほとんどが同じような本の中、1つだけ違うというのは異様だ。
(あの本を動かせば隠し通路が出てくるとか?......でもこんな大勢のまえで開かれたらそれはそれで困るよねぇ......)
ただ、食堂に入れるのは夕食の時間だけ。コック長とはいえ、好きに食堂に出入りすることはできない。
覚悟を決め、恐る恐る本棚に近づく。近くで見ても、やはり違和感を感じた。
そして、その本を手に取ると......
本棚の裏の隠し扉が......なんてことはなく。普通に取れてしまった。
(あれ?でも、やけに軽いな。)
金属製。というのは当たっていて、缶ケースのような構造になっていた。
本型のケースを開くと、鍵と四つ折りにされた紙が入っていた。
(鍵?......と紙切れ?看守側の持ち物ってわけでもなさそうだし......)
"他の囚人が隠したもの"と考えるのが必然だった。
その直後、入口付近のベルがなり、看守の声が聞こえてきた。
「飯の時間は終わりだ。片付けてすぐに出てこい。」
突然の事に慌てて本型ケースを戻す。鍵と紙切れだけをポッケに入れて......
2話前編まで読んでいただきありがとうございます。
1話からだいぶ空いての投稿となってしまった2話ですが、前編と後編にわけさせていただいています。
後編は明日の19:30に投稿させていただきます。




