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星の子 〜護るとは、一緒にいたいと願うこと〜  作者: 猫様のしもべ
第2章 家族と仲間、霞みゆく星
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第20話 母と娘 届かぬ願い

〜前回のあらすじ〜

第二王子ティルニスを見つけた騎士団。

けれどそこに、戦闘音が響いた。

命の恩人を見捨てられないティルニスに、付き添う。

その先で見たのは、大切なあの人の姿ーー。

視界が少し、ぼやけて見えた。


声よりも、姿よりも、胸と心を突き刺すもの。

「虚星の堕天」の腕に嵌められた、その腕輪。


紫の星がつけられた、小さな腕輪だった。

形は崩れ、色褪せ、光も宿さない。

それでも、覚えていないけど、大切なものだった。


「その、腕輪は・・・」


ティターニアが、小さくつぶやいた。

その声は震えて、涙を呑むような言葉だった。


「虚星の堕天」は、自分の腕を見た。

その瞬間、緑の瞳が虚になる。

まるで心が抜けたかのような、虚無になった。


けれどすぐにまた、その瞳に景色を映す。


「あら、これは何かしら」


その言葉には、記憶はおろか、感情もーー。

覚えていないのではなく、残っていなかった。


ティターニアの黒曜石のような瞳が潤む。

まるで星の雫のような涙を、ひとつぶ落とした。

陽の光を受けて、淡く煌めく雫。

それは地面にぶつかると同時に、小さく弾けた。


『“家族”とみんなは違うよ!』


偽りの母と出逢ったあの日、ティターニアが叫んだ言葉が、蘇る。


ようやく、本当のお母さんに会えたのに。


「あら、泣かないで。あなたは独りじゃないわ」


あまりにも優しくて、母親らしい言葉だった。

けれどそこには、心が宿っていなかった。

まるで決められた台詞のような、機械的な言葉ーー。


それでも、ティターニアの想いを揺さぶるには、十分すぎる言葉だった。


「・・・もういいだろう」


ネフィラの言葉と共に、キンッと甲高い音が響いた。

「虚星の堕天」の剣と、ネフィラの剣がぶつかる音。

ルフィーナはそれを見て、つぶやく。


「私の剣と、似てる・・・」


ルフィーナの星を纏う剣と、よく似た剣。

「虚星の堕天」の剣は、見た目こそ似ているものの、纏っているものは瘴気の塵だった。


(いや、剣だけじゃない・・・)


剣の構え、振り方、残る軌跡まで、ルフィーナの戦いと酷似している。

セルヴィーロも、ルビアスも、騎士団たちも驚く。


その瞬間ーー。


虚星閃(ラ・アスティア)


星ではなく、瘴気を纏った剣で、斬りつける。

ルフィーナの技を、反転させたようなものだった。

同じ方向から、同じ太刀筋で、斬っている。

なのに、黒かった。


ルフィーナは反射的に、一歩前に出た。


星閃(アスティア)!」


光と闇、白と黒、星と影がぶつかり合う。

星の光は、瘴気の塵と打ち消し合った。

互いの剣は、ただ掠るだけ。


「虚星の堕天」は少し目を見開いた。

だがすぐに、穏やかな口調で問いかける。


「・・・あら、どうして効かないのかしら?」


その問いに、誰も答えない。

だがセルヴィーロだけ、一歩前に出ようとした。

その行動が、何を表すのかは、わからない。


「ルナ、退がって。ここは俺が・・・」


一歩だけ踏み出した、その時。


バチンッーー!


星の光が、強く弾けた。

その勢いと共に、セルヴィーロが押し戻された。

まるで何かが、彼を拒んだかのようだった。


セルヴィーロは後退り、言葉を失った。

ネフィラが横目に睨みながら、言う。


「・・・星の敵であるお前が、星同士の戦いに入れるとでも思ったか?」

「・・・!俺を、拒絶したのか・・・」


セルヴィーロはそう、つぶやいた。

その声は、深い闇に沈んでいった。

拳を強く握りしめ、視線を落とす。


「虚星の堕天」は、それを静かに見つめていた。

その瞳が、ゆっくりと動いた。

そして視界のうちに、ルナシアを捉えた。


「あら、あなたは・・・」


ルナシアはビクッと肩を跳ねさせる。

「虚星の堕天」が少しずつ、歩み寄る。

そしてルナシアの前で、しゃがんだ。


まるで、迷子を見つけた母のように。


「な、なに・・・?」

「あなたは、独りなのね・・・」


その手が、ルナシアの髪に触れる。

優しく、撫でようとするかのよう。


だが、その光景はあまりにもーー。


「お願い、やめて・・・!」


ティターニアが小さく、叫んだ。

微かな星の光が、ポロポロとこぼれ落ちる。

涙よりも、その胸の内を表していた。


「虚星の堕天」の手が、一瞬止まる。

ティターニアの星の光すら、その瞳は映さない。


「ここは、あなたの家ではないわ」


ふいに、そんな言葉が放たれた。

ルフィーナはそれがまるで、自分に向けられた言葉のように感じた。


ルナシアは剣を強く握り、立ち尽くしていた。

怯えているのではなく、何かを決意したかのように。


そして一歩、後ろへ退がる。


「ごめん、あたしがここにいたら・・・」


ルナシアは暗闇の中へ、姿を消した。

「虚星の堕天」は彼女を追わなかった。


その目がまた一瞬、景色を見失う。

どこか悲しんでいるような、諦めのような。

けれどすぐ、また瞳に景色を宿す。


ルフィーナには、ルナシアが退いた理由が、わかってしまった。


(あのままだったら、ティターニアが・・・)


壊れてしまうーー。

きっとルナシアも、そう感じたはず。


ルフィーナは剣を構え直した。

手に持たれた守護武器に、煌めく星が纏う。

ティターニアは小さな手で、涙を拭った。


「・・・ネフィラさん、手を貸してくれますか?」

「・・・ああ。それが俺の、使命だから」


ルフィーナの問いに、そう答えが返る。

セルヴィーロがその言葉に、拳を震わせる。

何もできない歯痒さに、もがくかのように。


「虚星の堕天」も、剣を握る。

その刃には、瘴気の塵が纏われる。

ルビアスの霧がなくとも、戦わねばならない。


「もう二度と、ティターニアを悲しませないために」


ルフィーナは震える手を抑え、前へ飛び出した。

けれど、ほんの一歩、踏み込みが浅くなる。


「虚星の堕天」の姿が、羽のように揺れた。

瘴気でくすんだ剣が、横から迫る。

ルフィーナは剣を横に持ち、防いだ。


星流(シェアスト)!」


煌めく星が、紫の軌跡を残す。

星の軌跡は後ろから、弾けて消える。

その剣は流れるように、連続で斬りつける。


だが、どこかずれてしまう。

ほんの少し、剣先が離れてしまう。

斬るのを、傷つけるのを、ためらうように。


虚星流(ラ・シェアスト)


ルフィーナに合わせるように、剣がぶつかり合う。

「虚星の堕天」の剣は、黒い影の軌跡を残す。

それは星の光に呑まれ、相対して消える。


「虚星の堕天」は休む間もなく、剣を振る。

ルフィーナの反応速度を、はるかに超えた剣筋。


「ルナ・・・!」


ティターニアが叫ぶより早く、ルフィーナの周りに結界が現れた。

ペンダントが輝き、守護神獣より速く主を護る。


ティターニアは震えた羽を、萎ませる。

瞳を伏せて、地を見つめた。

その姿はどことなく、あの日の姿に重なって見えた。


今は涙を流していないし、声を抑えている。

それでも、あの悲痛に満ちた声が、頭から離れない。


その時、静かな声が耳に響いた。


「なぜかしら・・・懐かしいわ」


ルフィーナは思わず目を見開いた。

その言葉は哀しく、失われたものを思い起こさせるように聞こえた。


「虚星の堕天」はまた剣を振る。

けれど先ほどとは、動きが違った。


ルフィーナの剣筋を、なぞるかのように振る。

剣の流れを知ってるようにも見える。

剣先が当たらず、同じ動きをしている。


(そういえば私、誰から剣を習ったんだっけーー?)


記憶を失い、剣の訓練を始めた。

けれどルフィーナは、迷いなく剣を振れた。

その剣術は、防御は、誰から教わったのか。


なんとなく、わかる気はする。

「虚星の堕天」の動きはまるで、昔教えた剣術を思い出しているようにも見えたから。


星閃(アスティア)!」

虚星閃(ラ・アスティア)


静かにぶつかり合う2人の剣を、ティターニアはただ眺めていた。

一瞬手を伸ばそうとして、また下ろす。

星の光が小さく弾けては、消えていた。


セルヴィーロも静かに、見つめているだけ。

ルビアスが寄り添い、神霧(セルミス)を放ち続けていた。


「くっ・・・!」


瘴気を纏った剣が、さらに激しく迫る。

息つく間もなく、ルフィーナは防ぐことしかできない。

ペンダントが、瘴気の剣を弾いた。


その一瞬の隙を縫うかのように、影が視界を抜けた。


「・・・ペンダントに頼りすぎだ」


ネフィラの低い声が、重く響いた。

その手に握られた、ただの鉄剣が刃を防ぐ。

金属音と同時に、衝撃が地面に伝わる。


ネフィラは半歩、後ろに退がった。

剣を構え直すが、前に出ようとはしない。

全てを防ぐことは、できない。


(頼ってばかりはいられない・・・)


ティターニアの瞳が、ルフィーナを映す。

だがその手から、星の光は放たれない。

回復も、護りも、必要がなかった。


「わたしは、護れない・・・」


ティターニアが小さく、つぶやいた。

けれどその言葉は、ルフィーナの耳に届かない。

キン、キンと乾いた音だけが、響いた。


「虚星の堕天」がもう一歩、踏み込む。


その瞬間、緑の瞳が軽く揺れた。

見つめる眼差しの奥に、何かが映った気がした。

まるで、廃墟となった、あの村のようなーー。


「許せなかった・・・」

「・・・え?」


瘴気が渦を巻き、風と共に舞い上がった。

「虚星の堕天」の瞳から、景色が失われる。


空虚を見つめる瞳に映るのは、瘴気を纏う剣。

ただ、それだけだった。

ルフィーナも、ティターニアも、その瞳には映されなかった。


「私の願いは、届かなかった」


母ならざる者の声が、胸に轟いた。

何かが、壊れるかのようにーー。

今回はティターニアの好物について書きます。


まず結論から言うと、ティターニアの好物は金平糖。

砂糖を固めたような、甘くて美味しいお菓子です。


ティターニアが金平糖を好きな理由は、ひとつ。

星のような形で、甘いから。


角の多い星のような姿をした、金平糖。

それを見つけると、ティターニアの目が輝きます。

上目遣いでルフィーナにおねだりするのです。


「お願いです、主様!」


普段から頑張ってくれているティターニア。

ですが甘いものは高価で、かなり痛手になります。


ルフィーナは渋るものの、諦めないティターニア。

やっぱり、ティターニアは可愛いです。

結局、店主とかなり交渉して買うことになります。


大喜びのティターニアは、1日中元気に過ごします。

ピンクの星光を撒きまくり、金平糖がピンクに染まるほど。

騎士団はあまりの可愛さに、やる気が倍増します。


でも買える金平糖は、5つぶ程度。

慎重に、慎重に食べて、少しでも長持ちさせます。


無くなったら、ものすごく落ち込んでいます。

なのでルフィーナは、交渉材料の貯金を頑張ることに。


ティターニアはよくつぶやきます。


「明日は金平糖食べたいなぁ」

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