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星の子 〜護るとは、一緒にいたいと願うこと〜  作者: 猫様のしもべ
第2章 家族と仲間、霞みゆく星
18/22

第17話 星に染まる、星花祭

〜前回のあらすじ〜

七堕天の1人「哀歌の堕天」を打ち破った。

ルフィーナが思い出したのは、ひとつの歌。

ティターニアと歌声を重ね、次へと歩み出す。

薄い陽の光が窓辺から差し込み、部屋をほのかに紅く染める。

まだ空は星と朝焼けの境目で、帝都全体が朝の雰囲気に包み込まれていく。


ルフィーナは視線を感じ、目を開けた。

体を起こし、横を見る。


「おはよっ!ルフィーナ!」

「わっ!驚いたよ・・・ルナシア、おはよう」


ルナシアがベッドの横から、眺めていた。

朝焼けのような瞳が、期待を匂わせる。


ティターニアも驚いたように、跳ね起きた。

小さく羽ばたき、星の光がふわりと舞う。

そしてルナシアを見て、頬を軽く膨らませる。


「ルナシアさん、朝から声が大きいです・・・」

「あはは、ごめんね!今日が楽しみすぎて!」

「もう。主様、おはようございます」

「うん、おはよう」


ルフィーナはそう返した。

ティターニアは耳につける飾りを、手に取る。

そして丁寧に、拭き始めた。


ルナシアが言う。


「今日は星花祭の日だよな?3人で行こう!」

「そうだね。じゃあ着替えるね」

「うん!食堂で待ってるな!」


ルナシアはそう言って、スキップで部屋を出た。

ルフィーナは服に着替える。

今日は星花祭なので、魔族の討伐はない。

だから鎧ではなく、普通の服を着る。


ティターニアは飾りを拭き終え、嬉しそうに耳につける。

ピンクの星の光が宙に舞い、ルフィーナは微笑む。


「じゃあ行こっか」

「はい」


ルフィーナは相変わらず、セルヴィーロにもらった服を着ている。

そして、食堂へ来た。


ルナシアとセルヴィーロたちが、同じ机で食べている。

ルフィーナたちは食事をもらい、その机へ行く。


「ルナ、今日は星花祭に行くの?」

「そうだよ、セル。ルナシアと3人で行くから」

「帝国内なら大丈夫かな。気は抜かないでね」

「平気だって。ルナシアもいるから」

「心配だから。俺は城に行くけど、いつでも呼んでね。皇帝より優先するから」

「それはどうなんだろう・・・」


ルフィーナは少し笑い、食事を食べた。

少し離れた席では、シェウが同期と食事していた。

同期であり、親友のフェルが言う。


「団長ってば、副団長になんかあると、すぐ皇帝陛下を無視してすっ飛んで来んだから・・・」

「本当だぜ。しかもその後毎回、俺が皇帝陛下の相手押し付けられるんだぞ?庶民の気持ちを知れってんだ」

「お前は貴族生まれだろ。社交会でも割とモテてるとか聞いたぞ?」

「そりゃ俺といれば、団長に会えるからな」

「なるほど、目当てはその地位か」

「ストレートすぎるだろ」


いつもやっている、気の抜けた会話。

2人が仲良しの証拠でもある。

だが、セルヴィーロが地獄耳であることを忘れているようだ。


「ごちそうさま、ルナ、また後で」

「う、うん。ほどほどにね・・・」

「安心して、ちょっと手合わせするだけ」


セルヴィーロはそう言って、シェウのところへ歩く。

記憶ある堕落族なんて呼ばれる、黒い笑顔で。

この後シェウとフェルは、無傷では済まないだろう。

・・・だがまぁ、いつものことである。


ルフィーナは無事を祈りつつ、食事を終えた。

そしてルナシア、ティターニアと共に、外へ出る。


「わぁ・・・すごく明るいな!」


ルナシアが目を輝かせ、赤紫の焔がポンッと弾けた。

ティターニアもふわふわと上下し、楽しそうだ。

ルフィーナはその様子を見て、思わず微笑む。


騎士団本部を出ると、一気に祭りの雰囲気が押し寄せた。

道端に出された、いくつもの屋台。

美味しそうな匂いが漂い、露旗がひらめく。


子供や守護神獣たちも、走り回り、いたずらを仕掛けては、叱られている。

星の飾りが風に揺れ、花びらが空へ舞う。


星花祭の、始まりだ。


その時、ルフィーナは怪しい人を見つけた。

黒いローブを被り、建物の影に隠れながら、ささっと移動している。


(誰だ・・・?話しかけてみるか)


ルフィーナはその人に近づき、声をかける。

怪しいけれど、隠れ方は素人だ。


「何をしているの?」


その瞬間、羽織っていたローブから手が出て来た。

そしてルフィーナの腕を掴み、思い切り引っ張って走る。

ルナシアとティターニアはびっくり。


「えっ!?ちょ、ルフィーナ!」


2人は追いかける。

周りの人たちも、何事かと驚いていた。


ルフィーナは引っ張られるまま走り、路地裏へ。

ルナシアとティターニアも追いついた。


「な、何するの・・・」


すると、その人はフードを脱いだ。

ルフィーナとティターニアは目を丸くする。


「久しぶりですね、ルフィーナ、ティターニア」

「姫様!?」

「えっ!だ、だれ!?」

「しっ!静かにして・・・!」


なんとこの国の王女セティラだった。

ただルナシアだけは、誰かわからず混乱する。

ルフィーナが軽く、説明してあげた。


ティターニアが言う。


「姫様、フィアス様はおられないのですか?」

「ええ、フィアスは目立ちます。隠れたいから、少し撒かせてもらいました」

「そうなんですね・・・」


ティターニアはフィアスと会えないからか、少し残念そうに、羽を萎ませる。

羽から溢れる星の光も、軽くパラパラと散る。

セティラは微笑んで、言う。


「ティターニア、そう悲しまないでください。すぐフィアスにも会えます。たぶんそう長く隠れられないですもの」

「そうですね。えっと、姫様はなぜここに?」


ティターニアの質問に、セティラは笑顔を見せる。

その笑顔は、どこかいたずらっぽい、子供のような笑顔だ。


「ふふ、ルフィーナたちに会いたくて来ました。貴女たちを、招待しますわ」

「招待・・・?」

「ええ、王族のみ入れる“星園”へ」


セティラは嬉しそうに、そう言ってみせた。

ルフィーナたちは、驚きを隠せない。

ティターニアの星の光は、黄色く弾ける。


「星園」は、星の花が揺らめく庭園。

星花祭の日のみ咲き誇る、星の花。

それを見れることなど、普通なら一生に一度とない。


「そんな、私たちが行ける場所ではないですよ」

「いいのです。私が招待するのだから。どうせなら、そこで“お茶会”でもしちゃいましょう?」

「ええっ!?」


王女である割には、ぶっ飛んだ発言が多い。

けれどその言葉を聞いた瞬間、ルナシアの瞳が小さく揺れた。

そして、つぶやく。


「お茶会・・・?」

「あら?貴女は興味がありますか?」

「あ、えっと、少しだけ」


ルナシアは何かを誤魔化すように、そう言った。

朝焼け色の瞳が、少し遠くを見た。

興味があるというよりは、どこか懐かしむような、少し哀しむような、瞳だった。

するとそこへ、声が飛び込んできた。


「セティラ!」


薄紫のタテガミを持つユニコーン。

フィアスが走って来た。

その後ろには、たくさんの騎士たちもついている。


セティラはため息をついて、言う。


「見つかっちゃったわ。帝都観光もここまでね」

「もう、セティラったら」

「ふふ、ごめんなさい、フィアス」


セティラは微笑みを浮かべ、そう言った。

フィアスの速さに追いつけず、息切れする騎士たち。

彼らはルフィーナを見て、言う。


「あっ、副団長!」

「みんな、大丈夫?」

「はい!副団長がいたなら問題ないですな!」

「ふふ、そうだね」


騎士たちはルフィーナの笑顔に、顔を赤くする。

だがその瞬間、周りを見回す。

セルヴィーロがいたら、どうなるかと思ったようだ。

幸いにも、セルヴィーロはいない。


セティラが言う。


「じゃあルフィーナ。一緒に行きましょう」

「え、あ、本当にいいんですか?」

「ええ。貴女は私の親友ですから」

「・・・ありがとうございます」


親友という言葉が、胸に沁みる。

少し心動かされているうちに、気づけば馬車に乗っていた。

油断した、と思ったがもう遅い。

馬車は「星園」向けて、進み始めた。



城の裏手に回り、壁に囲まれた場所につく。

帝国庭園より貴重とされる「星園」だ。


ルフィーナたちは騎士に手を引かれ、馬車を降りる。


(こうなるなら、もっと服を選ぶべきだった)


ルフィーナは少し後悔したが、セティラの笑顔を見ると、まぁいいかなと思えた。

5人並んで門をくぐり、中へと足を踏み入れる。


「なんて綺麗な花・・・!」


その瞬間、思わず足を止めてしまった。

声が喉の奥に張り付き、言葉に出せなくなる。

ティターニアもルナシアも、言葉を失う。


周りの空気が、星の光を帯びた。


淡い星光の粒が、そよ風に吹かれて漂う。

星の花は朝の光を浴びて、淡く輝く。

花びらの縁は星座のように、光を繋いでいる。


周りの木々の枝には、小さな星の雫が滴る。

風が吹くたび流れる光は、小さな星の形をしていた。


ティターニアは言う。


「なんだか、心が落ち着きます・・・」

「そうだね。小さな星の花・・・」


花びらが星を模して、踊るようにひらひらと揺れる。

歌い出したくなるような、穏やかな陽気。

星の光と、少し甘い花の香りに包まれる。


セティラが言う。


「それじゃあ、お茶会を始めましょう」


花畑の中心に、少し開けた場所がある。

そこにお茶会ができるようなセットがある。

セティラが、ひとつの椅子に腰掛けた。


ルフィーナとルナシアも、他の椅子に座る。

侍女がお茶とお菓子を用意してくれた。

香ばしいお茶に、思わず手を伸ばす。


「美味しい・・・」


ルナシアも、一口お茶を飲んだ。

ほっと息をつき、机にカップを置く。

どこか寂しげに、手を添えていた。


ルフィーナは言う。


「星の花を眺めると、なんだか懐かしくなる・・・」

「そうだね。あたしも星の光を見てると、そう思う」

「暖かくて、誰かがそばにいるような気がする」


ルフィーナの言葉に、ティターニアが羽を揺らす。

水色の星の光が舞い、耳の飾りに触れていた。

セティラが言う。


「私はここに来ると、お母様を思い出します。いつも優しく、抱きしめてくれました」

「お母さん、かぁ・・・」


ルナシアがつぶやいた。

星の花が揺れ、風に光が舞う。

ルフィーナは言う。


「姫様、少し歩きませんか?」

「いいですよ。ルナシアさん、ティターニア。一緒に行きましょう」

「はい」


5人は立ち上がり、星花の海を歩く。

水色、ピンク、紫と、カラフルな花が揺れる。

その色は空に映り、空気がどこか色づいて見える。

セティラは言う。


「この花は、王族であるならば誰でも好きです。ですが王族の中でも、私の2人目の義弟が1番好きです」

「第二王子殿下ですか?」

「はい。第二王子、ティルニスは星花をとても大事にしています。今年は残念ながら、南の結界柱の調査に赴いているため、いませんが・・・」

「こんな美しい花を見れないなんて・・・」


王族の使命なら仕方ないが、少し残念だとルフィーナは思った。


(結界のこと、前にセルから聞いたな・・・)


帝国結界は、東西南北4つの支柱と、帝国の中心にある核で、展開されているのだと。

それはこの花より、優先しなければならないこと。


ふと南を見た、その瞬間。

ルフィーナは花畑一角に、黒を見つけた。


「・・・姫様、星の花に黒はありますか?」

「?いいえ、ありません。どれも色がついています」

「では、あそこの花は・・・?」


ルフィーナの指差す方を、他のみんなも見る。

色鮮やかな花々の中に、数本だけ黒い花が混ざっている。

舞い散る星の光は暗く、まるでーー。


「瘴気、みたい・・・」


ルフィーナのつぶやきに、護衛騎士たちが身構える。

その瞬間、一陣の風が吹いた。

風に煽られ、黒い花の隣にあった青い花が揺れる。


そして黒い花と青い花が触れた瞬間。

青い花が、一瞬にして黒く、染まった。


「・・・!瘴気だ!」

「離れてください、姫様!」


騎士たちがセティラの前に立ち塞がる。

ルフィーナはそのさらに前に立つ。


星の光が、瘴気に呑まれていく。

青もピンクも、黒く染まる。

このままでは、星園の花が全滅するーー。


(セルはいない。ルナシアの焔も花を焼いてしまう。私がなんとかしないと・・・)


ルフィーナが剣を持つ。

すると、ティターニアが言う。


「この瘴気は濃くありません。ルビアスくんがいなくても、星で染め直せるはずです・・・」

「星で、染める・・・?」

「わたしも技を使います。主様も、星を与えられるような技を使ってください」

「・・・わかった」


2人は息を合わせ、同時に技を放つ。


星祈斬(オルシアス)

星涙(ラルミアス)


ルフィーナの剣から、星屑が舞う。

それらは軌跡となり、黒い花に纏う。


そして天から星の雫が降り注ぐ。

恵みの雨のような、慈愛の星が黒い花に注ぐ。


それらが黒い花を、染めていく。

星の光が、瘴気を包み込んだ。

黒い花は紫色に、染まった。


「ふぅ、これで大丈夫かな?」

「ルフィーナ、ありがとうございます!」


セティラがルフィーナの手を握った。

そして笑顔でそう言った。


「はい。星の花が無事でよかったです」

「あら、この花・・・他と少し違いますね」


ルフィーナが星で染めた花。

他より明るく輝き、星型がより際立っている。

明らかに星の花とは違う。


ルナシアが言う。


「なぁ、この花に名前つけようよ!」

「名前を?」

「うん!」


セティラとフィアスも、賛同する。

ルフィーナとティターニアは、顔を見合わせた。

そして、染められた花を見る。


風に吹かれ、小さく揺らめく花。


「・・・じゃあ“星染花”にしよう」

「星染花、いい名前ですね」

「星に染められた花、でそのままだけど」

「ふふ、綺麗な響きですよ」


名付けられた花が、喜ぶようにふわりと揺れる。


5人は互いに笑い合った。

魔族も同じように、星で染められたらーー。

そう、願った。


青い星と赤い星の間にできた、小さなつながり。

まだ知ることのない、星の架け橋だ。


「・・・お母さんも、どこかで見ているかな」


ルフィーナがそうつぶやいた。

ルナシアも同じように、空を見上げる。

星の光が、空へと舞い昇る。

それを見て、セティラが言う。


「・・・星が空にある限り、お母様たちはきっとーー笑ってくださいます」


ルフィーナは微笑みを浮かべた。

午後の祭りも、明るく楽しめた。


ティターニアは祭りが終わったあと、つぶやいた。


「もし、お母さんに会えたらーー主様は、何を願いますか?」

「・・・わからない。でも、一緒に星を眺めたいな」

「ーーわたしもです。昔みたいに、明るい星空を見上げたいです・・・」


空に瞬く星は、薄い雲に遮られ、淡く光っていた。

まるで願いが、届かないような気がしてーー。

ルフィーナは、言葉を続けることを、やめた。

今回はフェルについて書きます。

シェウの同期、フェル・カーティス。


フェルはごく普通の家に生まれた、少年でした。

守護神獣の名は、シュライア。

炎の力を持つ、ライオンのような姿です。


カーティス家は、シェウの生家、ナトゥール家のそばにありました。


フェルはシェウと同年代ということもあり、たまに会うこともありました。

けれど昔のシェウときたら、なんとも傍若無人。

フェルは困らされることもよくありました。


特にシュライアに関して、よく嫌味を言われました。

そんなある日、フェルの妹ユリアが病気にかかります。

フェルは治療費を稼ぐために、騎士団へ入団。


ほどなくして、セルヴィーロにボコされたシェウも入団します。

相変わらず続く、シュライアいびり。

むしろ子守のようなものだと、思い始めます。


そんな日々が続く中、シェウの性格が改まります。

そしてとうとうある日、シェウがなんとフェルに、治療費代を肩代わりしてくれました。

フェルはあまりの驚きに言葉が出ずにいると、シェウは恥ずかしげに言いました。


「助けられると知って、見過ごすことはできねぇよ」


どの口が?と初めは思いました。

けれど言葉通り、シェウはユリアの病気が治るまで、ずっと支えてくれました。


一緒に過ごす中で、シェウとフェルはいつしか親友のような間柄に。

幼馴染でもあるし、悪友とも言える。

2人の仲は、変わりながらも続いています。


明日も一緒に、いられますように。

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