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憧れの冒険者ギルド

「冒険者ギルド入口……。ゲームで数え切れないぐらい潜ったから、生で見ると感動が凄い」


 胸がジンとする。

 手を当ててみれば、バクバクバクバクやかましいぐらいだ。

 生きてて良かった!

 一回、死んだけどな!


「扉、こうやって開けるのか」


 ゲームではなかった違いも楽しみつつ、建物内へ足を踏み入れる。


「うおおおッ!? あ、やば……。大きな声出しちゃった。ダメだ、ローランらしくしないと」


 あまりに興奮して、ローランのキャラを無視しちゃった。

 まだ共通ルート開始前だし、主要キャラに関わらないとはいえ、時が来たときに別人になって周囲にツッコまれるのも面倒だ。

 何てこと無いかのようにクールな表情を作りながら、ギルド受付を目指す。

 ヤバい、この制服!

 完全に一致してる!

 ああ、今すぐ近くでガン見したい!

 何なら、触りたい!


「冒険者登録をしたい」


「えっと、坊やが……ですか? その、食い扶持に困るならドブさらいとか紹介するわよ?」


「いや、冒険者登録をしたいんだ」


「そうは言っても、冒険者って危ないのよ。採取とかでも、モンスターと出会うから……。今すぐ食べるものが欲しいのは分かるんだけど」


 共通ルートでも冒険者登録なんて、できないからな。

 それでも、俺はアカレジェの冒険がしたいんだ!

 今すぐ! 素材を集めて剥ぎ取ってコレクションをしたい!


「戦う実力ならある」


「そうは言っても、装備を調えるだけでもお金がね……。荷物袋とかなら、レンタルできるけどメインの武器や防具はなくて」


「武器なら、ほら」


 机の上に剣を二つ置く。


「え……これ、どこから盗ってきたの?」


 盗ってきたと言えば、そうかもしれない。

 昨日の騎士風の男が落として行った剣だから。

 そんな話をしていると、顔に切り傷のある風格漂わす男がヌッと顔を覗かせてきた。


「ほう、エルバー伯爵私兵騎士団へ標準配備されてる剣じゃねぇか」


「ギルドマスター!? いたんですか!? う、酒くさ……」


「がはははっ! 俺の仕事は交流だからな! お偉いさんと社交が忙しいんだ」


「限度があります! 事務仕事もしてください!」


 社交システムで便宜や色々と政治的なシステムはアカレジェにある。

 令嬢ものラノベとか貴族の駆け引きが好きな人は、積極的に社交アイテムを使って、そちらのイベントを起こすルートを選択していたからな。


 まぁ前のオッサンは、自分がサボりたいだけの理由にしか思えない。

 だって、社交イベントって燕尾服やドレス、装飾品に贈り物が大切だもん。

 このオッサンには、モンスター素材の装備や熊の毛皮、まさかりが似合う。

 山で動物と社交会してる金太郎と言われたら信じるな。


「おい、ガキ。この剣を盗んだのか? そうだとしたらシーフや諜報の仕事を目指してみるか?」


「こんな子供に何て仕事を紹介するつもりですか!?」


「生きる為には仕方ない。そんな目をしてるんだよ。見ろ、目がギラギラ血走ってやがんだろ」


 いや、それは俺が興奮してるのを必至に押さえてるからだと思います。

 シーフや諜報クエストは、俺が現実世界で選択したリアム第二王子では受注できなかった。

 それがリアルに体験できるかもと聞いたら、興奮して当然だろう!


 だが、何をするにしても、だ。

 まずは装備とアイテムを揃えないと効率が悪い。

 昨日の痛みで実感したが、この世界に転生した以上はクエスト失敗は実際に死ぬ確率が高いんだから。


「折角の話だが、俺は討伐から採取、錬金や鍛冶もやりたい」


「か~。万能型がいかに難しいのかを知らねぇのか?」


「俺には向いてる」


「自信過剰なのはガキの特権だがなぁ。だいたいの奴は自分の適性があるもんを探して伸ばすんだよ。今の年齢じゃ普通は冒険者登録はできねぇ。俺が認めた分野以外は、特別な配慮にしても絶対にやらせることはできん」


 それはそうだ。

 キャラ育成の基本も適正ある分野を伸ばす。

 主要キャラ以外でパーティーに組み込めるキャラなんて、まさに育成攻略で明言されてるぐらいの基本だ。


「盗めと言われれば、この剣を俺は盗める。だが、この剣は昨日戦って手に入れた」


「あん? 戦うって何を言ってやがる。こっちは生活を思って仕事を斡旋してやろうと――」


「――いたぞ、昨日のガキ! 門衛の報告は本当だったのか!」


 オッサンと話していると、昨日の騎士風の男が二人きていた。

 こいつらの顔を見た瞬間、昨日の傷跡が疼く気がする。


「昨日は、よくもやってくれたな!」


「俺たちの剣も返してもらう」


 ズカズカと入ってくるヤツらに、思わずムッとしてしまう。


「子供と戦って負けたから報復か。剣も奪われたまま逃げたのだから、いらないのだと思っていた」


 煽りたくなるのは仕方ないよね。

 前世から、こういう理不尽な輩や不条理な権力とか、大嫌いなんだよ!

 俺の言葉に騎士風の男が戸惑い足を止めると、ギルドにざわめきが広がる。


「オイオイ、まさか領主様の私兵騎士団が本当に?」


「ガキに負ける奴が税金で食ってるってか?」


「いつもデカイ顔して街を歩いてるくせに、見せかけってことか」


 嘲笑の声が徐々に大きくなり、騎士風の男たちは顔を真っ赤にしてプルプル震えてる。

 ざまぁみろ!


「き、昨日は酒に酔っていただけだ! いいだろう、そこまで言うなら、今から再戦してやろう!」


 大人げねぇ……。

 でも、これはテンプレ――チャンスだ!


「ギルドマスターのオッサン。こいつらに勝ったら、何でも受けられる冒険者として正規に登録してくれ」



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