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共通ルートをやり込めるなら……

 大好きな熱狂的ファンと、凄まじいアンチ数を抱える問題作。

 アカレジェ。


 膨大な制作費と維持費のために、課金要素も多いのだが……。

 課金してでも限定装備を整えたかったり、オンラインイベントに勝利したかったり……。

 少人数ギルドで、あらゆるジャンルのゲーム内イベントで競わせる仕様が、課金パッションを煽ってきた。


 重すぎるデータ量。

 中にはPC、タブレット、サブスマホで全キャラシナリオプレイをする者さえいたが、各キャラシナリオが多彩なエンディングに満ちてるせいで、早く全てのエンディングを見たいと課金アイテムが飛ぶように売れる。


 俺も、ゲームに熱中する度に深刻な金欠に悩まされていた。


 それだけ、俺の人生と呼んでも過言ではない存在だったんだが――まさか、本当に人生そのものになるとは。

 しかも、推しキャラじゃない万能型双剣使いのフェリックス・ローランで、いきなり共通シナリオ開始前に事件を起こしてしまった。


「大丈夫。まだやり直しが利くはずだ」


 物語は、色々とあって主要四キャラが親しくなり……。

 この村の近くで遊んでいる際に、歴戦の古龍に襲われる点が守れれば大丈夫なはずだ。


「そもそも、モンスターの住む魔領が拡大し続けてる西大陸の中で、人類の覇権をかけてティルタニア王国と帝国が争ってるのがおかしい。法国は中立とか言いながら、ガッツリ権力争いに食い込んでくるしな」


 そんなことをしてるから、俺――フェリックス・ローランみたいな不幸な人間が、こんなに生まれるんだろうが。

 結託してモンスターと戦えよ。


 学園編で、お貴族様の社交とか権力争いとか、使い魔の育成対決とかしてる場合じゃねぇだろ。

 冷静になればツッコミだらけなのだが、あらゆるクリエイターのこだわりを詰め込むのが前提のゲームなのだから仕方ない。


「しかし、実物を体験すると……」


 村の人々の衛生状態最悪な姿。

 栄養状態も、居住環境も何もかも目を背けたくなる惨状だ。

 それに加え、下手をしたら俺が反撃をしてしまった兵士が仲間を連れて報復へくる可能性もある。

 身の安全と生活の質に耐えられない。

 下級とは言え、現代日本で文明的な暮らしをしていたのに、これは無理。


「それに、だ。大好きなゲームの世界にきたんだから……やり込みたいよな」


 これが一番。

 推しキャラじゃなかったのは残念だが、推しキャラを中心とした世界を見たい。

 肉眼で見られるとか、最高じゃないか。


 肉体の外観年齢的に、他の主要キャラと交流が始まるのは数年は先だろう。


「それなら、やっちゃうか、やっちゃおう。そうしよう!」


 シナリオの影で超絶やり込んで楽しみ尽くしてやる!

 ついでに、金や社交界アイテムに類似する家具とかインテリア、食事や菓子もゲットしよう。

 困ってる村人を放っておけないからね!


「幸いなことにローランの主要武器である双剣の条件は満たしてる。……バフ魔法がないと、重くて持てないけど」


 子供に大人用の剣は重すぎる。

 片手で振り回すとか不可能だわ。

 そう言えば、共通ルートで使ってた双剣は小型だったな。

 レベリングでステータス上げて武器や防具作りしながら金を儲ける。

 そんなの――冒険者ギルドへ行くしかないでしょう!


「よし、領都へ行ってこよう」


 昨日の連中に見つからないよう、領都に入ったら注意するべきだな。


「素材採取での調合! モンスターを倒しての素材剥ぎ取りに鍛冶! ワクワクするなぁ~!」


 両腰に剣を無理やり縄で縛り付けながら、スキップするように丘陵から領都へ向かう。

 あ、つい素の俺でいたけど……。

 ちょいちょいローランらしい『影があり儚げなのに、怒らせると静かに圧を発するキャラ』を演じていかなければ。

 クセになるぐらい、ロールプレイングさせてもらおう。


 ワルグ村から、子供の早足で歩き続けること一時間弱。


 二本の剣を不格好に腰へ巻き付けて、城門を潜る。

 ちょっと門衛に声はかけられたが、ワルグ村の人間だと言えば通された。

 気の毒なものを見るような目線だったのは、何故だろう。

 もしかしたら、城門を守る彼らも同情や罪悪感があるのかもしれない。


 ファンタジーらしい町並みに胸をときめかせ、記憶にあるギルドへ向かう。

 住民たちから奇異な目線を向けられまくったが、現代日本で上司から向けられていたゴミを見る目に比べれば屁でもない。


 そうして、遂にきてしまった。



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