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一年の暴走の果てに

 ギルド前に到着すると、ギルドマスターは天を仰いでいた。

 俺の姿を見て、フェリックス・ローランという空気の読めないギルドマスターに溜息がでている。


「何度も言っているが、この姿の時はフェスと呼んでくれ」


「うるせぇ。何の祭りをやってるつもりだアホが」


 心外だ。

 俺は別に、祭りを開いてるつもりなんてない。


「大漁を祈願する漁村でも、そんな祭りはせんぞ」


「ふっ、そんな褒めないでくれ」


「褒めてねぇよバカが。というか、その乗り物でくるな目立つだろ」


「俺の愛車に文句があるのか? それに変装は完璧だ。目立ちたくないからこその、フェス偽名だからな」


 ギルドマスターは声が出ないのか、遠い目をしている。

 そこへドン引きした様子の受付嬢が、手鏡を持ってやってきてくれた。

 社交アイテムで使える手鏡があるとは……。

 さすが、伯爵領のギルドといったところか。


「自慢か? 言っておくが、素材さえあれば俺にも鏡が作れる。金に物を言わせるプレイだってな」


「違いますよ。客観的に自分のお姿をご覧下さい」


 ふむ、と頷いて鏡を覗き込む。

 ギルドの扉を潜る前から随分な扱いだ。


「ふっ。全身で統一感があり、眩しい魔動二輪車。完璧だ」


「鮫の着ぐるみに秋刀魚二尾。王都で最近開発されたばかりの魔動二輪車に乗ってるアホの何が完璧なんだ。目立ちたくねぇ? 嘘吐け」


 だって、周回してたらシャーク装備やら一式が作れるぐらい貯まったんだもん。

 それに、ネタ装備のステータスが高いのなんて定番じゃないか!

 アカレジェの序盤、フェリックス・ローランが装備可能な中で最強の装備だ。

 確かに、鏡に映る姿を見るとネタ感がある。

 そんなことは分かってるし、間違ってもシナリオブレイクや主要推しキャラとの関係性が壊れることがないようにとの偽名だろうが。

 まぁ強いて言えば……。


「魔動二輪車はロマンだ。この世界を広く見て回りたくてな」


「良い事のように聞こえるが、何処から盗んだ?」


「盗んでない。俺が作った」


「最先端技術を作れる難民が、どこにいやがる」


 失敬な。

 アカレジェの世界で盗みはできない。

 ただ、この一年で完全に盲点だったことがある。

 そう――ワルグ村の地下都市開発だ。


「生産系のスキル熟練度が上がり、閃いただけだ。素材も遠征してもらって手に入れた」


 俺だって悩んだんだ。

 だけど、仕事がほしくて日々、笑顔になっていく難民に、地下都市開発(俺の倉庫)は充実したから、解雇。

 そんな無情なことは言えなかったんだよ!

 それに、俺だって早くアカレジェの世界で遠くに行きたかったんだ。

 結果、稀少な鉱石やアイテムも手に入れ、開発で上げたジョブスキルもあり作ってしまった。

 魔動二輪車を手に入れて広大なマップを探索できるようになったのは、最高だったなぁ。

 興奮が蘇ってくる。


 それにしても、成長期とは怖い。

 鏡を見ると、共通ルート開始時――王子や聖女と出会うフェリックス・ローランのサイズ感に似てきている。

 もしや、もうすぐなのか!?

 くぅわぁあああ!

 いよいよ、俺の推したちと出会えると思ったら昂揚が止まらない!

 多少、共通ルート開始前とズレてはしまったが、少なくとも見た目は変わらないよう細心の注意を払ってきた。

 漲るぜぇえええ!


「……腰に差した秋刀魚が跳ねてるぞ」


「感情連動で攻撃力向上状態だ。近付くと危ない」


「何なんだよ、その特殊な魚……」


 推しキャラ同士のルートを切り拓く双剣だ!


 ワクワクしながら、俺は共通イベント――『腐敗貴族エルバー伯爵征伐と出会い』シナリオ開始を待った。

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