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初古代文明ダンジョンボス戦

 この世界にきて、初めての古代文明ダンジョン。

 いよいよ――念願の法具が出るかの大一番!

 しかも、セット効果で全身用に五個は揃えねばならないのだ。


「いくぜ、アカレジェ名物地獄巡りぃいいいッ!」


 重厚な扉を開くと――中央には、宙を舞うサメが立っていた。

 硬そうな鮫肌に鋭い牙。

 陸地にもかかわらず空を舞う六メートルはありそうな体躯が恐怖を駆り立ててくる。


「うっひょぉおおおッ! シャークセットの素材じゃぁあああッ!」


 普通ならな!

 アカレジェ大好き人間には、ご褒美だ!

 一瞬、双剣を抜いてホップステップジャンプで近寄ってくる俺に、ボスがビクッと身を震わせたような気がする。


「まずは通常攻撃!」


 空を泳ぐように突撃してくるのを避け、身体へ斬り付けるが――案の定、ダメージが入っているのかすら分からないレベルだ。

 肌が硬すぎて、現状の武器では斬ってるというより叩いてる感じだ。


「手が……痺れる。――ぅおッ!?」


 急カーブで戻って来た鮫が、下から水上へ得物を持ちあげるようにツッコんできた。

 必死に双剣を合わせて防ぐが――車にでも轢かれたかのような衝撃で吹き飛ばされる。

 これ……。ガチでヤバいかも。

 やっぱり、通常なら四人パーティーで挑むようなボスだもんなぁ。

 アカレジェで鍛えたコンボは――キャラを切り替えて強みを出しまくって攻めることが多い。

 学園編に突入までは、孤高なフェリックス・ローランとして一人で挑まざるを得ない。


「これなら、どうだ!?」


 闇魔法で視界を塞ぐが、狂乱状態に陥った鮫が牙や尾をバタバタと無秩序に振り回し始めた。

 かえって近づけない状態になっちゃった!?

 デバフ系も有効じゃない……。

 これ、詰んだ?

 本格的に、装備が整うまで一時撤退を考えていると――鮫がツッコんできて壁にぶつかった。

 ダンジョンの壁面を破壊する轟音に、この世界にきてから一番、死の気配を感じた。


「おいおい、こんなん一人で倒すとか……。考えろ考えろ! アカレジェ知識と、このリアル特有の特性!」


 アカレジェばっかりやってたから、全然リアル知識が思い浮かばん!

 普通、こういうゲーム世界への転生って現代知識を持ち込んで無双じゃん!?

 俺には現代知識が足りなさすぎた!


「ちっくしょぉおおお!?」


 突っ込んでくる鮫を、必死に回旋切りで受け流し――。


「――あれ?」


 一瞬、スタンしたかのように鮫が動かなくなった。

 腹を天井に向けた瞬間、スイッチでも切れたかのように。

 かと思えば、ぐるんと腹が横を向いた瞬間に元の獰猛な動きを取り戻した。


「……まさか」


 もしかしての可能性に賭けるか。

 これでダメなら、尻尾巻いてエリマキトカゲもビックリ。

 リアルで嫌な事から逃げまくる勢いで逃走だ!

 先程と同じように突っ込んできた鮫に――再び回旋切り。

 同じように腹を天井に向けた瞬間、大人しくなった所を重力魔法!


「――おお!? 弱点発見!」


 天井に腹を向けると、精々が床の上で横にビチビチ動く程度しかしない。

 でも、近付くのはまだ怖いしなぁ……。


「そうだ! 鉄鉱石くん、そして壊された壁! きみたちの出番だ!」


 バタバタ暴れる鮫君を埋めるように、重みのある鉄鉱石や瓦礫を積み重ねて重力魔法で重みを増す。


「イケる! チャンス!」


 軽い地震が起きているような揺れを感じるけど、山積みされた上へと飛び乗る。

 そうして曝け出された鮫の腹は、まるで謎のシートで手術部位だけ見えるような状態になっていた。


「さぁ――オペの時間です」


 そこからは、とてもゲームにはできない光景だった。

 できるとしたら、Rー18指定間違いなし。

 取り敢えず、全く動かなくなるまで捌きました。

 途中、双剣の切れ味が悪くなったら鉄鉱石で応急的に研いだ。

 まさに、一石二鳥。

 そして暫くして――。


「――穫ったどぉおおお!」


 昔、テレビの再放送や動画投稿サイトで見たことのある決めセリフを叫びながら、武器素材として有用な牙とヒレを持ちあげる。

 初挑戦、初勝利!

 ギリギリの戦いだったが、やったぜぇえええ!


「人間の知恵、なめんなよ!? 魚類!」


 知能の勝利に違いない!

 俺の推しが、こんなズルい戦い方をしてたら泣くけどね。


「おっ!? 宝箱出た!」


 心臓がドクンと跳ねた。

 ボスの間、中央には光を発する宝箱が急に現れた。

 うわぁ……。もう、実写版アカレジェだ!

 全く同じものがあるって大興奮!

 魚臭い手を震わせ、ゆっくり宝箱の蓋を開く。

 ソロソロ~っと、中身を覗き込み――。


「――ちっくしょぉおおお! なぁんでぇだよぉおおお!? あぁあああ!」


 法具を手に取り、宝箱にもたれかかりながら号泣した。


「あう……っ」


 不思議にも宝箱は消え、床に打ち付けられた。


「これ……回復魔法補助率アップに物理攻撃物理防御小アップの宝玉付き……。バランス意味不明のクソ法具じゃん」


 ヒーラーにしたいのか、それとも前衛にしたいのか意味不明。

 こんなんばっかり出るから、周回が必須なんだよ!


「物欲センサー、許さねぇかんなぁあああ! 俺は、お前が泣くまで止めねぇえええ!」


 死闘を繰り広げた後だからこそ、余計に喪失感が強い!

 まだだ!

 諦めなければ、勝負は終わらない!

 俺のアカレジェ愛は、こんなもんで燃え尽きないんだ!


 何度か周回して荷物が一杯になった。

 終わりのないマラソンを走っている表情でギルドへ戻ったことをギルドマスターや受付嬢に心配された。

 そんなことを繰り返し、加工しようと荷物整理が必要になったのを感じた。

 そうして、俺は久々にワルグ村へと戻った。

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