低ランク素材もリアルなら使いよう
ギミックを説き、重くなった荷物入れを背負い二層へ進む。
「この重さもリアルの違いよな……。あれ、ワルグ村に収納できるのかな?」
これから周回して諸々を作成していくに当たり、俺のコレクションをどこに収納するんだ!?
ゲームなら勝手に開けたけど……。
「う~ん。ワルグ村に家をクラフトして、地下にでも収納するか?」
元々、ワルグ村は何とかしないといけないとは思ってた。
ゲームではボロボロにされる運命だったと割り切れたけど……。
リアルで見殺しにするとか、後味が悪すぎる。
「かといって、ストーリーが崩壊しないようにはしないとだし……」
内装や生活の質だけ上げて、外観はボロボロを維持できるようにの塩梅が難しい。
クラフト技能も上げて、リアルだからこそできる調整も楽しみかも!
「一先ず、荷物を持てなくなるぐらいまで周回したら手を付けるか!」
その方が気分転換にもなるしな。
よしよし、これからのことを考えると気分が上がって来たぞ!
まずは、ここの五階層――最深部を無事にクリアすることだ。
装備的には、ギリギリというかチャレンジ。
プレイヤースキルはリアルでは活かしにくいから、そこまでにゲームとの差を少しでも埋めて上手い立ち回りを覚えないと!
「おっ! 鉄鉱石! よっしゃぁあああ! 採掘採掘!」
モンスター退治だけに頭を巡らせてる場合じゃなかった!
アカレジェ世界をエンジョイエンジョイ!
鉄鉱石は最低レアの鉱石だ。
まぁ遠征もしてないダンジョンだから仕方ないけど、これがないと装備品の素材も足りなくなる。
めっちゃ集める必要があるから、ワルグ村に建設予定の地下倉庫を拡張可能にしないとなぁ。
「レアクリスタル系なら、社交イベントの装飾品やらプレゼント品にも加工できるし、気は早いけど収集しとかないと!」
先々、スムーズに推しをサポートする為に必須だ。
教室で王子や聖女の机に、社交イベントで双方の好意を上げてイベントを発生させる為の装飾品を置いておく。
そして、肝心なイベントは陰で見る俺。
「くわぁあああ! 数年後の学園編が楽しみで寝てる暇がねぇぞコレ!?」
再び、やる気に火が付いた。
双剣を使い大興奮で鉄鉱石を根こそぎ回収していく。
何てことをしていたら、再び地を這うトカゲが酔ってきた。
クソ、人が推しで妄想している時に水を差しやがって!
「妄想の邪魔をするんじゃないよぉおおお!」
採れたての鉄鉱石を全力でぶん投げ、唾されたトカゲに重力魔法をかける。
あっという間に、息の根が止まった。
「鉄鉱石、強いじゃん!」
本来の使い方と違うなんて言葉は知らない。
ここはリアル!
格好良い勝ち方なんか、別にいいんだ。
大切なのは効率!
「いい周回方法を見つけちゃったなぁ~。ラッキーラッキー」
ハンマーとかを装備するより、よっぽど楽だ。
これは周回に向けて最高の発見だ!
何か鉄鉱石が泣いてるようにも感じるけど、仕方ない。
肩に食い込むバッグの重みが、いつか報われますように!
レベルアップしまくって法具とか揃ったら、魔力もブーストされるから。
そしたら、魔法をバンバン撃ちまくってアイテム回復で無双できるからな。
「鉄鉱石はしばらく、この古代文明ダンジョンのメインウェポンだな!」
ルンルン気分で、俺は奥に奥にと進んでいく。
そして、鉄鉱石では対処できない場所――最深部、五階層のボス部屋前へとやってきた。