プロローグ 待ち望んだ瞬間のはずが!?
大好きなゲームに推しキャラがいる。
これは人生の充実に必要なことだ。
推しがどうなるかを妄想し、実際にゲーム内で動かすことが出来るとか、最高だ。
恋愛、戦闘などなど多岐の要素を複合させたオープンワールドRPG。
Academy of Legends。通称、アカレジェ。
乙女ゲー、ギャルゲー、本格RPG何でもあり。
というのも、このゲームは制作がまともじゃない。
とある有名なプロデューサーや編集者、制作会社スタッフ達が、『クリエイターの夢を叶える自由な場』として設立した会社が運営しているせいだ。
シナリオやイラストは、有名作家の個性――という名の性癖が存分すぎるぐらい発揮されている。
結果、一応の学園メインシナリオはあるものの、各キャラクターの個別ルートは大暴走。
戦闘能力を高めまくって冒険者として一流を目指したり、モンスターを倒した素材で武器や防具、学園内での社交道具や衣装を仕立てたり……。
挙げ句の果てには恋愛に関しても、NL、BL、GL。
もう、何でもあり。
一応、ゲームの目的は『真実の愛を持って滅びた古代文明の謎を解き明かす』というもの。
遠からず、国を滅ぼした現代人は古代に存在した5人の『魔人』の呪いにより、あらゆる愛を亡くし滅び去る。
人類の繁栄と未来の為に、少年少女が立ち向かうという物語。
キャッチコピーは『愛と力を手にして世界を救え』(愛の形は問わない)。
期限は、共通ルートが終わってから学園卒業までの三年間。
そして今、俺は――何と大好きなゲームの主要キャラ、フェリックス・ローランとして転生している。
それも、物語の幼少期編が始まる前の共通編フェリックスにだ。
「推しキャラではないけど、メインキャラは嬉しすぎる。隣の帝国から逃亡した皇族。少し影のある万能型能力の双剣使いローランとは……。推しを立てる縁の下の力持ちにはピッタリだ」
ラノベとかのお約束、ゲーム内への転生が自分に起きるとは……。
死んだというショックも、前世で家族にも見捨てられゲームを通じて出来た仲間しか話せる人がおらず絶望していた俺には、最高の第二の人生だ。
「物語開始前とか、夢が広がる……っ!」
具体的には、俺の推しである聖女と、ティルタニア王国第二王子の恋愛ルートを近くでみたい!
しかし、このゲームには難点があって……。
前世の俺は、この名作のクソゲー仕様に涙したものだ。
「選択キャラのシナリオ以外見られないとか。今になって思い出しても腹が立つがな」
アカレジェの幼少期編は、共通ルートで無料プレイ可能。
四人の主要キャラ視点から、幼少期編で心を奪われてしまうのだ。
しかし、幼少期編の最後、誰をモンスターの前に立ち塞がらせ学園編へ進むか。その大切な場面で、キャラ選択。
共通編は、ここまで。
キャラシナリオを購入しないと進めない、その先のシナリオへ進めないクソ仕様!
さらにさらに、なんと一度選ぶと、アプリの仕様で他のキャラシナリオは選択できない!
天下一のクソゲーという声を黙らせたのは、各キャラシナリオに多彩なエンドがあることだった。
幼少期の共通編で最も愛したキャラへの愛を、最後まで貫き全てのエンディングを探す者もいた(全員がコレ、しかも選択キャラ全員別)。
結局、課金パッションによる金欠と、パッション溢れる愛から一発逆転を狙い、死ぬ気の同人本制作をギルドの仲間達とやったのだが……。
まぁ、散々な目に遭った上に、階段から転落。
そのまま転生したということだろう。
このゲームでは、村を崩壊に導く負けイベの『滅びた古代文明の守護龍』の襲撃へと立ち向かうキャラ選択場面ので、誰が立ち向かうかで主人公が変わる。
本来なら、自分が推しのキャラを立ち向かわせることで古龍の加護を得て操る主人公が決まる。
当然、自分が主役といきたいが、推しキャラを主役にして活躍を見たい!
「俺の推しは、王道だ。断然、聖女と王子が結ばれていくルートだな」
そうして転生してから、推し活を捗らせるために頑張った。超頑張った。
そんな年月が流れた数年――。
「――な、なんで古代龍が……。私たちだけでは、村を守り切れない!」
「リアム……。俺は、生まれ育った村を捨てては逃げたくない。王子や聖女、優秀な棋士であるお前等は、ティルタニア王国に欠かせない存在だ。……俺を置いていけ。ここで、お別れだな」
「何を言うのローラン!? あなただけを置いていけないわ!」
「とはいえ、僕たちだけでは勝てない! 領都にいる騎士団が駆けつけるまで、耐えれば……ッ!」
やっと、ここまでキタッ!
豪邸ぐらい大きく、歴戦の傷を刻む古代龍の迫力なんて、どうでもいい!
あとは、ここで推しキャラが一歩前に出れば、そいつのルート完成だ!
当然、俺の推しである第二王子――リアムに前に出てもらえばいい。
震える手をリアムの背へ回し、歓喜に震える声を張り上げ――。
「「「「――やろう!」」」」
全員の声が響き渡り、背中を物理的に押された。
ドンッと、全員の背が誰かしらに押されて……。
え、俺も前に出た?
あ、あれ……。
何か、全員一歩前に出されたんだが?
目を見開きパチパチッと瞬きしながら、唖然と見つめ合って……。
待って、待って待ってよ!
これじゃ――誰のルートに入るの?
俺の推しルートの運命は……。
「「「「……え?」」」」
ポカンとした四人の間抜けな声が、迫力ある古龍を前に重なった――。
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