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星輝に促された瑞光が話し出すと思ったのに、なかなか喋らない。
(…………疲れたな……)
2カ月ぶりに歩いて喋った瑠奈は体力の限界を迎えていて、瑠奈を抱きしめる星輝に体重を預けながら立っていた。
「瑠奈、大丈夫………?」
朦朧としながら絨毯を眺めていた瑠奈に、瑞光が屈んで目線を合わせてきた。
「私の話をしてもいいけど、急に動き出して疲れたでしょ?しばらく休んだほうがいいと思うんだ」
白麗を喪って、全てを投げ出したくなった瑠奈は、瑞光と星輝と話すことはなかった。
今、元の世界から戻ってきて初めて会話をしている。
元の世界に還ったことや、白麗のことを責められるかと思ったのに、瑞光の口から出たのは瑠奈を気遣う言葉だ。
「………………私は、大丈夫です」
「…………本当に?無理してない?」
瑞光のことも傷つけてしまったのに、初めて会った時と何ら変わらず慈愛に満ちた瞳を向けてくる。
どうして。この人は。
何もなかったように、接してくれるのだろうか。
「……瑞光さんは……!瑞光さんはずるい……!!私に優しくなんかしないで………!!瑞光さんのせいで、現実から逃げ出したくなる………!!」
瑞光の優しさが瑠奈の消耗しきった心に響く。
枯れ果てたと思ったのに、瑠奈の瞳から涙が溢れ出て、星輝の服を濡らしていく。
「私はずるい男だから、瑠奈のためだったら何でもするよ。瑠奈の辛さも、全部受け止めてあげる」
瑞光があまりにも優しいから、瑠奈はありがとうと呟いてしまった。疲労が限界だった。星輝の体温がじんわりと瑠奈を温めてきて、瑠奈は意識が遠のいていく。
「だから、私なしでは生きられないようになって?」
そう呟く瑞光の声は、瑠奈の耳には届かなかった。
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