1
初めて、だった。
人が目の前で亡くなるなんて。
瑠奈は今までいた瑠璃宮から瑞光の執務室にある仮眠室で過ごしていた。
あのまま、瑠璃宮で居たら辛いだろうからって。
どこにいても、辛いのに。
白麗が亡くなってから、2カ月。瑠奈は部屋から出ることも、誰かと話すこともできなくなっていた。
「番様………。白麗が遺した番様への手紙があるんです」
寝台から上体を起こしたまま、ぼんやりと窓の方を見ている瑠奈に声をかけたのは、夏蓮だった。
「本当なら王の番様にお見せするべきではないと思うのですが……。彼は、私にとって大切な友人でした。読み上げてもよろしいですか………?」
瑠奈は虚ろな瞳を夏蓮に向けて、微かに頷いた。
「お読みいたしますね………?」
夏蓮は封筒から手紙を取り出した。字は読めない瑠奈でも、白麗の筆跡は綺麗なことが分かる。
文章を確認する夏蓮の瞳に涙の膜が浮かび上がった。それを我慢するように、夏蓮はぎゅっと目を瞑って、深呼吸をした。瞳をあけて、読みはじめた。
――――――――――――――――
瑠奈ちゃんへ。………いや、ここでは瑠奈って呼ぼうかな?瑠奈に思いを伝えたくて、夏蓮に手紙を渡すようにお願いしたんだ。
俺が死んでしまったのは、瑠奈のせいではないから、自分を責めないで?
俺は、瑠奈のことが好きだったから、俺のことで、瑠奈に悲しんでほしくない。
あ、運命の番ではないよ?安心して。
きっかけは、一目惚れと言いたいところだけど、瑠奈の体液を口に含んだからだと思う。
王と星輝の逆鱗を飲み込んだ君の血液は、甘くて美味しかった。そこから、瑠奈のことが気になっていった。
瑠奈と過ごす日々は、楽しかった。
それと同時に、絶望もした。
瑠奈は、王と星輝の運命の番で、絶対に手に入る人ではなかったから。
王が目を覚ましたら、王と(星輝もかな?)仲良くする姿を見ると思うと、耐えれなかった。
それなら、ひとおもいにこの世を去りたい。
そう思ったんだ。
だから、この結果は俺が望んだとおり。
悲しまないで。
瑠奈の笑顔が何よりも好きだった。
俺を『運命の番と認識してる』なんて嘘をついて甘えてくる瑠奈が愛おしかった。
来世では、瑠奈の運命の番になりたい。
今世での、瑠奈の幸せを祈ってる。
王と星輝に幸せにしてもらってね?
白麗
―――――――――――――――――
瑠奈の瞳から涙が溢れ出て、止まらなくなった。
体中の水分が、涙となって出ていくみたいだった。
(私が、全て悪い………)
瑠奈が元の世界に還りたいなんて、言わなければ。
自己保身のために、『白麗を運命の番だ』と言わなければ。
夏蓮が心配そうに瑠奈を見ている。ここで、また夏蓮に縋ることなんてしてはいけない。
「わ……わたしは……大丈夫ですから……、1人に……してください……」
久しぶり出した瑠奈の声は酷く掠れていた。




