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(またここにいる……。おかしいな……)
怒った白麗に部屋を出ていけと言われて出たのに、瑠奈はまた部屋の中に戻っていた。
瑠奈は寝台に寝かされ、隣には何も知らないであろう瑞光がいた。
(そうだ、部屋の前で気を失ったんだ、私………)
睡眠不足で、食事も取ってなかった。
その上、多量の出血もした。
貧血で倒れたのかもしれない、そう結論づける。
いつまでも寝てはいられない。瑠奈は上体を起こした。
「瑠奈ちゃん…………!?目を覚ましたんだね………!???」
瑠奈が動いたのを見た白麗が嬉しそうに声をかけた。
白麗の隈が更に濃くなっている。倒れた瑠奈を見守っていたのだろうか。
(この人、何がしたいの………)
瑠奈にキスしてみたと思ったら、指に噛みつく。
怒っていたのに、失神したら心配する。
情緒不安定なのだろう。王たる瑞光が目を覚まさない不安でそうなったのは、まあ、分かる。
でも、全ての責任が瑠奈にあるという口ぶりが今更ながら許せなくなってきた。
白麗に振り回されるのは、もうごめんだ。
このまま『王を傷つけた番の瑠奈』でいたら、酷い扱いを受けるかもしれない。
瑠奈は、記憶喪失になったふりをしようと思った。
白麗に大切にしてもらうためには、彼の番のふりをするのが一番いい。
瑠奈が白麗の番のふりをしても、白麗にはそうでないことが分かるのだから、罪に問われることはないだろう。
自分のしてしまったことに責任が取れたら、元の世界に戻りたい。
瑠奈は心を決めた。
「貴方は………………!私の番…………!!」
瑠奈が潤んだ瞳で白麗のことを見たかと思うと、寝台から身を乗り出し抱きついてきた。
「えっ?えっ…………?どういうこと………??」
「貴方様は私の番です………!!御名前を教えてくださいませ……………?」
「いや、意味分かんないから。離れて?」
「嫌です!!離れたくない………っ!!」
瑠奈が白麗に甘えてくる。瑠奈の隣には瑠奈の番の瑞光がいて、気が気でない。
瑞光と星輝の目が覚めることをずっと望んでいたけれど、今この時は目を覚まして欲しくないと白麗は強く思った。瑠奈には散々いろいろしてきたけれど、この様子を見られたら、自分の命が危うい。
瑠奈を無理やり剥がすと、瑠奈の大きな瞳には涙が薄っすら浮かんでいた。
「瑠奈ちゃん、急にどうしたの?」
「その、瑠奈って何ですか?私の名前ですか?」
「はっ…………………?」
「私、何にも覚えてなくて。ただ、あなたが番ってことだけは、分かります!だから…………、嫌って欲しくない」
白麗は分からなかった。
瑠奈が意識を失ったことで、記憶も失ってしまったのか。それとも、白麗を騙そうとしているのか。
瑠奈が白麗の運命の番ではないことはすぐ分かる。
白麗の本能が、そうではないと言っている。
そもそも竜人の男しか運命の番が誰かは分からない。瑠奈も言われるまで、瑞光と星輝が運命の番とは分かっていなかった。
(そっちがそうくるなら、俺はそれに乗るだけだ)
白麗は口元を歪めた。
瑠奈を剥がしたのに、自ら瑠奈を抱きしめた。
「瑠奈ちゃん…………!今まで言えなかったけど………!!君は俺の番だ…………!!!」




