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 瑞光は俯く星輝を寝台から出るように促し、自身も寝台から抜け出して寝台に腰掛けた。

 星輝のことよりも瑠奈のことを早く決めないといけなかった。


 「瑠奈が私の番であることは、白麗はもちろん、配下の者全てが知っていると思う。瑠奈はこれからどうしたい?このまま白麗が来れば瑠奈は私の番としての人生を歩まないといけない」


 皆が瑞光の番に気がついてしまった今は、王たる瑞光は番を拒むことなどできない。いや、許されない。


 瑠奈を解放するとしたら今しかなかった。


 「兄様……………!!それは…………!」

 「星輝、これは瑠奈の判断だから」


 瑞光は優しく瑠奈の意見を促す。瑠奈がいなくなって10年間昏睡していたのに、それでもなお瑠奈の意思を尊重しようとする。そんな瑞光が愛おしい。


 瑠奈が気づいていないところで、支えてくれていた星輝。星輝が瑠奈の存在を必死に求めてくれるのが嬉しい。


 「私は…………。2人の側にいたいです」


 瑠奈は2人の顔を見た。真剣な表情で話を聞いてくれている。だから、自分の気持ちに正直になっても、きっと受け入れてくれる。瑠奈は言葉を続けた。


 「でも、私はこの世界で生きていける自信がない。2人が私がいなくても大丈夫なら、もしまた帰れるなら、元の世界に戻りたい」


 瑠奈が瑞光と星輝に告げたのは、出会った時と同じ言葉だった。


 「私と愚弟が瑠奈を支えると言っても?」

 「瑠奈さん、君に害をなす者は消えるから大丈夫だよ」


 瑞光と星輝は瑠奈の不安を取り除こうとしてくれてるけど、瑠奈は元の世界には帰らないとは言えなかった。


 説得しても翻意しない瑠奈に瑞光は、そっか分かったと悲しそうに呟いた。


 「瑠奈の望みが私の望みんだよ。強く願ったら、今、戻れるかもしれない。願ってみて?」

 「……………兄様!駄目だ!瑠奈さんがいなくなったら、僕たちは………!!!」


 瑞光はまた同じことを瑠奈に告げる。その表情は凄く辛そうで、瑞光の悲痛な思いが伝わってくる。瑠奈は瑞光の本当の思いが聞きたいと思った。


 「瑞光さん、わたし、瑞光さんの本音が聞きたい」

 「…………っ!言えない、言ったら瑠奈に迷惑がかかってしまう……!!」

 「それでもいいんです……。教えてください」


 瑠奈があまりにも真剣に見つめてくるから、瑞光は重い口を開いた。


 「私は、瑠奈と離れたくない!でも、瑠奈のことを縛りたくない。だって……、瑠奈は私のこと、なんとでも思っていないんだろう……?だからいいんだ。私はもうどうなっても………」

 「瑞光さん、またそんなことを言わないで!私ばかりじゃなくて、自分も大切にしてよ!!」

 「瑠奈以外に、大切なものはないんだ………」


 どうして自分は瑠奈に好かれていないんだろう。自分は瑠奈がいないと無理なのに。心が、ちぎれそう。


 瑞光の頬に涙が流れた。


 慌てて瑞光は自分の目元を拭き、俯いた。

 瑞光から嗚咽が聞こえてくる。


 「瑞光さん………………!!!」


 瑠奈にとって、瑞光は年上のお兄さんで、いつも堂々としていた。瑠奈には柔らかなところを見せてくれたこともあったけど、強い人だった。 

 

 そんな瑞光が、震えながら嗚咽を我慢している。

 瑞光をここまで追い詰めたのは、わたしだ。


 「ごめんなさい…………!私、瑞光さんのこと何も考えずに行動してた………!!瑞光さんのこと何にも思ってないってこと、ない……。本当にごめんなさい………!私、この世界に残ります………!」


 瑠奈の言葉に、瑞光が顔を上げた。黄金色の瞳が揺れている。


 「瑠奈、自分を大切にしてほしい。無理して残ってくれなくて、いいんだ」

 「無理してるわけじゃない!瑞光さんと星輝さんと一緒にいたいから………」


 瑠奈は心を決めた。この世界で行きていく。


 「瑠奈……っ!!こんなことがあるなんて……!」

 「瑠奈さん………!!ありがとう……!」

 

 瑞光も星輝も喜んでくれて、良かった。

 瑠奈は2人の手を取った。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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