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白麗の発言に、瑠奈は驚きで固まった。
(この、短刀で、自害しろってこと…………)
白麗にそこまで恨まれているなんて、思ってもみなかった。王を喪った責任を取れということか。
瑠奈は白麗から短刀を受け取った。見た目のわりに重くずっしりとしている。瑠奈は白麗の本心を確認したくて、白麗を見上げた。
「ん?」
白麗は満面の笑みを浮かべて、瑠奈を見返した。
邪気のない笑顔のように見えたが、白麗の瞳は昏かった。反論は許さない、と言っているように思えた。
「分かり、ました…………」
瑠奈はまだ大学生だし、こんなところで死にたくはない。でもどうやったら白麗から逃げ切れるかも分からなかった。
この世界で出血死したらどうなるのだろう。
また元の世界に戻るのだろうか。
瑠奈は短刀を鞘から抜き出し、首筋に当てた。
手が小刻みに震えてしまう。こんなことになるなんて、思ってもみなかった。強く、強く瞳を閉じた。
躊躇していたら、一生できない。異世界で死んだら、元の世界に戻るだけ。そう思い込んで、一気に短刀を引いた。
瑠奈の頬に生温かいものがかかった。
生臭い匂いがする。
痛みを覚悟していたのに、痛くない。
瑠奈は恐る恐る目を開けた。
「どうして…………!?」
白麗が瑠奈の首元を押さえていた。
――瑠奈が切ったのは、自身の首ではなく、白麗の手だった。
ごつごつとした骨ばった手から、赤黒い血が滴り落ちている。瑠奈の服が赤く染まっていく。
血が止まる様子がない。
「白麗さんっ…………!!」
「別に首じゃなくても、良かったんだけどなぁ……」
白麗はそう言うと、瑠奈の首元から手を離した。
傷跡が深いのが見える。痛そうで、直視できない。
「ごめ……ごめんなさい…………!!」
必死に謝る瑠奈に、白麗は至極嬉しそうに笑った。
「瑠奈ちゃん、俺も傷つけちゃったね?」
「……………………っ!」
「俺の血で頰が濡れてる………。あぁ、たまらないな………」
白麗は怪我をしていない方の手で、瑠奈の耳に触れた。瑠奈をうっとりとした目で見てくる。
「やっぱり駄目だったね、君とキスなんてするんじゃなかった」
白麗は瑠奈の手を取った。白麗の顔が痛みで一瞬歪んだのを見て、瑠奈は胸が痛んだ。
出血が止まらない手で瑠奈の人差し指を掴んだ。
「俺がして欲しかったのは、瑠奈ちゃんに少し血を出して欲しかっただけ。首は、やり過ぎ」
白麗はそのまま瑠奈の人差し指を口に含んだ。
瑠奈の指が白麗の薄い唇の中に取り込まれていく。
瑠奈は突然のことで、意味が分からない。
動揺する瑠奈に、白麗は目を細めて挑発的な視線を送ってくる。
白麗は、口に含んだ指を舌で軽く舐めた。
(……………っ!)
頰が染まっていく瑠奈の様子を見て満足した白麗は、瑠奈の指を躊躇なく噛んだ。
「痛っ…………………!!」
指からジンジンとした痛みを感じる。どうして急に噛みついてきたのか。瑠奈は白麗をきっと睨んだ。
瑠奈は白麗の口から無理矢理指を引き抜く。
白麗の口元に、瑠奈の指から垂れた血がついた。
「あ………もったいな」
白麗は酷く残念そうに言うと、口元に残っていた瑠奈の血を舐めて、小さな声で美味しいと呟いた。
「その血、王に飲ませてあげてよ。瑠奈ちゃん、王の逆鱗飲んだでしょ?もしかしたら目を覚ますかと思ったんだ」




