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 (暖かい布団最高!でも柔らかくない〜!!)


 いつの間にか眠っていた瑠奈は、近くにあった布団に抱きついた。布団のくせに硬い。そしてやけに甘い香りがする。まるで瑞光の香水のようだ。


 (ん……?瑞光さんの香水……??)


 布団の方から瑠奈に絡みついてきた。瑠奈の背中に手を回し、瑠奈に顔を近づけた。


 「瑠奈、朝から積極的で、嬉しい………」



 ――瑞光の声が、した。

 ――瑞光の瞳が、瑠奈を見つめている。



 「瑞光さん………!!!!!」



 どうして瑠奈が瑞光の寝台にいるのかとか何をきっかけに意識を取り戻したのかとか気になることがあったけれど、それよりも、瑠奈は瑞光が目を覚ましたのが嬉しかった。


 「瑞光さん………目を覚ました…………」

 「瑠奈、泣かないで……」


 瑠奈の瞳から涙が溢れ出る。


 「良かっ……良かったぁ………」

 「私のことを心配してくれてたんだね。ありがとう……」

 「心配するに決まってます……!!」


 よく寝たと思ったら、何故か瑠奈がいる。瑠奈は、元の世界へ帰ったのではなかったのか。状況がよく分からないけれど、瑞光は瑠奈が心配してくれるのが嬉しかった。


 「あっ、星輝、星輝さんは……!!」


 瑞光は甘い雰囲気を堪能したかったのに、瑠奈は星輝のことを気にして、瑞光の側から抜け出してしまった。


 「瑠奈、これはどういう状況なの?」


 周りを見渡せば、ここは瑠奈が過ごしていた瑠璃宮である。星輝が寝台で横たわっている。


 「瑞光さんも、星輝さんも、10年間昏睡状況だったそうです……。瑞光さんが目を覚ましたのに、星輝さんは目を覚ましてない……。早く起きてよ……」

 「星輝だったんだね。瑠奈に逆鱗を渡した男は」


 星輝の側で回復を祈る瑠奈の横に来た瑞光は低い声で呟いた。あんなに星輝が瑠奈のことを気にしていたのも、瑠奈が運命の番だったからか。瑞光は腑に落ちた。


 星輝にこのままでいてくれたほうが、瑞光としては良い。でもそれだと瑠奈が悲しむだろう。自分の番を求めるだろう男を起こすのは癪だが、仕方がない。


 「星輝?起きなよ」


 瑞光は星輝の右頬を思いっきり引っ張ったが、起きない。じゃあ次は、もっと強い刺激をと、口と鼻を抑るため手を星輝の顔元に近づけると瑠奈に止められた。


 「白麗さんが星輝さんにもいろんな刺激を与えたらしいんですけど、星輝さんは起きなかったみたいで……」

 「それは私も?」

 「そうみたいです!私も、あの、瑞光さんに刺激を与えさせてもらいましたが、起きなくて……」


 眠っている瑞光にそっとキスをしたことを思い出して瑠奈は顔がぼっと赤くなった。


 「それはどんな刺激だったのかな………?」


 瑞光は瑠奈の腰を掴み、瑠奈に問う。瑞光の熱の籠もった瞳が瑠奈を見つめてくる。


 「なっ、内緒です………!!今は、星輝さんを起こさないとっ………!!瑞光さんが急に起きたのは、私が側で寝たからだと思います……!!だから、今から……!!!」

 「瑠奈が寝ていたというよりも、人肌が良かったんじゃない?だから私が寝てみるよ」


 瑠奈と星輝が一緒の布団の中に入るのは絶対無理だ。それならいっそ私が、と瑞光は思う。


 「えっ……………?瑞光さんが…………!?」

 「うん、でも瑠奈の香りがあったほうがいいかもだから、ギュッてさせて?」


 瑞光は瑠奈を包み込むように抱きしめた。瑞光の腕の中で恥ずかしそうにしている瑠奈と目が合う。


 「もっ、もう大丈夫じゃないですか……??」


 瑠奈が可愛くて仕方がなく、ずっと抱きしめておきたいとこだが、暴走して瑠奈に嫌われたくない。


 瑞光は瑠奈にお礼を言って、星輝の布団に入った。






 







 星輝が目を開けると、目の前には瑠奈がいた。


 心配そうに星輝のことを見ている。瑠奈は元の世界へ帰ったのでは?状況が分からず、混乱する。


 「星輝、おはよう」


 何故か横には瑞光が隣で寝ていた。



 「これは…………どういう…………!?」


 瑠奈の瞳に涙が浮かんだ。


 「星輝さん………!良かったぁ………」


 上体を起こした星輝に瑠奈が抱きついてきた。何かが良かったらしい。よく分からないけれど、この抱きしめられているという状況は、良い。星輝は顔が緩んでしまう。


 「良かった、良かった」


 そういえば隣にいた瑞光が、星輝と瑠奈を遠ざける。瑞光の顔は全然良かったという表情を浮かべていない。むしろ冷ややかに星輝を見ている。


 「私たちは10年間寝ていて、瑠奈のお陰で目が覚めってたところ。星輝、瑠奈が番だったんだね……?」

 「兄様………!兄様にお伝えしておらず、申し訳ありません………!!!」


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