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「瑠奈ちゃん!!次は王の頭を撫でてみよう!!」
瑠奈は眠っている瑞光の髪をおそるおそる触った。艶々としていて、触り心地がいい。何回か撫でてみる。
「あの……、反応ありません」
朝から瑠奈は白麗のプランに従って、瑞光を起こすべく様々な刺激を与えている。
「そっかぁ〜、駄目だったかぁ……。じゃあ、今度は、王にキスしてみよう!!」
「キッキス……!?それはちょっと……」
白麗の指示は段々と過激さを増している。躊躇する瑠奈に白麗は厳しい目を向けた。
「人助け!!君の為に王がしてくれたことを忘れたの?ほらほら早く!」
「うっ……分かりました……」
瑠奈は目を閉じて、眠る瑞光の頬に自身の唇をそっと触れさせた。悪いことをしている気分になって、ドキドキする。
「無反応かぁ〜〜!!」
白麗の残念がる声が聞こえる。キスでも駄目だったら、何をしたらいいのだろうか。立ち上がった瑠奈は緊張して白麗の次の指示を待つ。
「もっといろいろして欲しいところだけど、これ以上のことをさせたら、俺が逆に王に怒られそうだから止めておこう!」
「星輝さんにはしなくてもいいんですか………?」
瑠奈の言葉に白麗はギョッとする。
「駄目だよ!嫉妬で星輝が王に殺されてしまう!!」
「そういうものですか……?でも、どうしたら2人が目を覚ますか分かりませんね」
瑠奈は肩を下ろすも、白麗の表情は明るい。昨日よりも生き生きとしている。
「瑠奈ちゃんがいれば何とかなると思うんだよね!毎日やってたら反応するかもしれないし。コツコツ頑張ろう!」
白麗は昼食を用意すると言って、部屋を出ていってしまった。
「どうしたら起きるんですか?」
瑞光に話しかけるも、瑞光の返事はない。気のせいかもしれないが、瑞光の血色は昨日よりも良くなっている気がする。
「私が帰ってきて、喜んでくれていますか?」
瑠奈は瑞光に語りかける。瑞光と星輝が亡くなるかもとの思いで、また異世界に戻ってきてしまった。2人が目を覚ましたらどうしたいのだろう。自分でも、どうしていいのか分からなかった。
「運命の番はいらないんですか?」
昨日見た夢が2人の過去だとしたら、少なくとも瑞光は運命の番を求めていないことになる。抵抗することもなく瑠奈を元の世界へ戻したのは瑠奈を求めていなかったからではないか。
星輝はどうだろう。瑞光と同じく昏睡状態にあるのだから、瑠奈が運命の番ではあるのだろうけれど、瑠奈を必要としてるとは思いづらい。マリーナ王女にも気のある雰囲気を出していた。
「星輝さん、星輝さんにとって私は必要ですか?」
寝台で眠る星輝に話しかけるも、こちらも無反応だ。ただ、星輝も昨日よりどことなく体調が良さそうに見える。
「回復に向かってるのかな?そうだったらいいな。ね、星輝さん」
瑠奈は星輝の横髪を優しく撫でた。ふわふわとしていて、柔らかい。星輝は瑠奈が触ってることを知ったらどんな反応をするのだろうか。
「目、覚ましてほしいな……」
瑠奈の発した声がただ部屋の中に響いた。