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(どうしよう……どうしよう……!!)
異世界から戻ってきた時、ほとんど時間が経過してないことも分かって、瑠奈は喜びよりも強い焦りを感じていた。大学の講義から抜け出し、下宿中のアパートに向かって一心不乱に走る。
(地球での数分が、向こうでは何時間にもなるのかもしれない!私がいなくなったら、瑞光さんと星輝さんが死んでしまう!!早く異世界へ戻らないと!!!)
瑠奈は肩で息をしながら自宅アパートの中に入った。久しぶりの瑠奈の部屋は異世界へ行く前と変化はなく、瑠奈に安心感をもたらす。瑠奈は息を整えながら、ソファーに座った。
(地球から異世界に行った時、何か変わったことはあった?……特に何もなかったかも。じゃあ、戻るために何をしたら……?)
瑠奈は1人で考えるも、どうしたら異世界へ戻れるのかその方法が全く浮かび上がらなかった。ただただ時間だけが過ぎていく。
血にまみれた瑞光の姿が目に焼きついて離れない。
一刻も早く異世界に戻りたいのに、どうしようもできない。そんな自分が不甲斐なく、瑠奈は心の中で2人に祈ることしかできなかった。
(瑞光さん、星輝さん、必ずそちらへ戻るから、どうか死なないで………!!!)
瑠奈の心の中の叫びがあちらの世界へいって、瑞光と星輝に届いて欲しい。瑠奈は必死に祈った。
瑠奈はいつの間にか疲れて眠っていた。
夢の中に、瑞光と星輝が出てくる。
「瑠奈、私が目の前で倒れてビックリした?瑠奈の人生の中で最も衝撃的な瞬間だったよね?瑠奈の心の中にずっと私がいれるんだよね?命をかけて瑠奈を元の世界へ戻して良かった。だから、瑠奈、嬉しそうにしてよ」
瑞光は柔らかく笑い瑠奈を抱きしめた。瑠奈は瑞光の腕の中、涙する。瑠奈の後頭部を優しく撫でたと思ったら、瑞光の姿が消えた。
「瑠奈さん、僕は瑠奈さん以外好きにはならない。僕たちの世界にまた戻ったら瑠奈さんは二度と元の世界へ戻すことはしない。瑠奈さんのせいで、僕たちの国は滅茶苦茶だよ。だから早く戻ってきて」
星輝は瑠奈を愛おしげに見つめ、瑠奈を強く抱きしめた。
「どうしたら戻れるのか分からないの!!」
瑠奈は涙ながらに星輝に訴えかける。
「戻る方法……?簡単だよ、戻りたいと思えばいいだけ。瑠奈さんは既に逆鱗を飲んでいるんだから」
「戻りたいって思ってたけど、戻れない!!」
星輝は瑠奈を抱擁から解き放ち、冷めた目で瑠奈のことを見る。
「本当に戻りたいと思っているの?戻りたいって気持ちは嘘なんじゃない?」
「嘘じゃない……!戻りたい……」
瑞光がまた現れ、瑠奈に問う。
「せっかく自由にしてあげたのに、いいの?戻ってきたら瑠奈に自由はないよ?」
「それでもいい……!それでもいいから……!!お願い………!!戻らせて………!!」
懇願する瑠奈に、瑞光と星輝は酷く嬉しそうに笑った。でも、2人の目は笑ってなくて、どこか暗さを秘めていた。瑠奈は何故かぞっとした悪寒を感じる。
(あれ………?何か間違ったかな………??)
戸惑う瑠奈に、瑞光と星輝は瑠奈を抱きしめた。