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「瑠奈ちゃん!!今日の夕食は王と一緒に摂ることになったよ!!」
宮中に帰ってきてからまた悶々としていた瑠奈を訪れた白麗は、至極嬉しそうに瑠奈に伝えてくる。
「えっ…………?どういうことですか??」
「瑠奈ちゃん、外出したのに全然何も買わずに宮中へ戻ってきちゃったよね?」
「はい……」
「星輝とマリーナ王女が一緒に買い物をしていたのを見て、ショックを受けたんじゃない?」
「そんなことは……」
瑠奈の様子は近くで見ていた明明や白麗にはバレバレだったのだろう。なんて言い訳したらいいのか、瑠奈は分からなくなってしまった。
「瑠奈ちゃんはさ、マリーナ王女に比べて大切にされてない感じがして落ち込んだんじゃない?だからさ、王に伝えて晩餐を共に摂るようにしたよ〜!」
全く検討違いなのに、どこか得意げな白麗の満面の笑顔が憎い。
「白麗さんは馬鹿なの〜!?」
瑠奈の大声が瑠璃宮に響き渡った。
瑠奈は明明と夏蓮に磨き上げられて瑞光の元へ訪れた。夕食を食べるだけで、準備に2時間もかかるなんて恐ろしい世界である。
「この格好変じゃありませんか?」
「そんなことない、可愛いよ」
慣れない格好をして不安を感じている瑠奈に、瑞光はうっとりとした笑顔で答える。
(うっ……)
瑞光は本心から瑠奈を褒めてくれているように感じて照れくさいながらも、嬉しくなった。
瑞光は瑠奈を椅子を引いて座らせた後、自身は瑠奈の右隣に座る。向かい側には2人分の席が準備されていた。
「あれ?もしかして他に誰か来るんですか?」
「うん、実はね……」
扉の開く音がして、入室したのはマリーナと星輝だった。
「瑞光様、お呼びいただき光栄です」
マリーナは、昼間見たドレスとは趣が異なり、艶やかなドレスを身にまとっていた。胸元には紫色の宝石がついた繊細なネックレスをしている。マリーナは、瑞光を見つめて綺麗な笑みを浮かべた。
「マリーナ王女、どうぞこちらへ」
星輝はマリーナを恭しくリードする。
普段下ろしている前髪はオールバックにし、綺麗な紫眼が見えている。マリーナと揃えたのか、星輝も洋装でタキシードを着ている。
(星輝さん……格好いい………)
瑠奈は星輝に思わず見惚れてしまった。
マリーナも星輝も着席し、食事が始まった。
食事中の会話はほとんどマリーナと瑞光で、瑠奈と星輝はほどんど会話に混じることがなかった。
特に星輝は瑠奈の方を見ようとはせず、視線が合うことはない。
瑞光は頃合いを計らっていたのか、食事が終わりそうになったタイミングで外出のことを口にした。
「マリーナ王女、そういえば今日星輝と外へ出られたとか?」
「そうなんですの。よく御存知で。今つけているネックレスを星輝様からいただきましたの」
「それは……………………!」
秘密にしておきたいことだったのか、マリーナの言葉に星輝が焦ったように見えた。
(やっぱりマリーナ王女にネックレスを買ってあげてたんだ……)
瑠奈にネックレスをくれた星輝だったが、マリーナにも同じような物を渡している。星輝が瑠奈のことを思ってくれていると感じていたのは、間違いだったのかもしれない。
瑠奈は、悲しかった。
「星輝が人に物を差し上げるのは珍しい。マリーナ王女、これからも星輝と仲良くしてやってください」
「えぇ。わたくしは、瑞光様とも仲良くしたいですわ」
「そうですね。そろそろ食事も終わりましたし、星輝、マリーナ王女を客室まで送って差し上げて」
瑞光の言葉に頷いた星輝はマリーナ王女の細腰に手を添えて、退出した。
去りゆく姿も絵になる2人だった。