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初めての宮中の外は瑠奈の想像以上に賑やかだった。人がごった返し活気を感じる。
初夏の爽やかな風が瑠奈の髪を揺らした。
室内で悶々と悩むよりも良かったかもしれない。
白麗のお陰で、明明と夏蓮と外出することができて、瑠奈の気持ちは浮き立つ。
先導する夏蓮について歩くのだが、瑠奈は街並みが物珍しくてつい周りをキョロキョロしてしまう。
「何のお店が見たいとかある?」
隣を歩いていた明明が瑠奈に気を使ってくれた。
瑠奈はいずれ元の世界へ戻る身だ。持って帰れるか分からないけれど、この世界の思い出として何か欲しかった。代金はきっと後ろにいる白麗が何とかしてくれるだろう。
「アクセサリーのお店とかないかな?」
「あるよ!特におすすめのお店があるから案内するね?」
明明は瑠奈に優しく微笑んだ。
明明がお勧めしてくれたアクセサリー店は店内も可愛くて、瑠奈はワクワクしてきた。
店内からはほのかに甘い香りがしてくる。
奥の方へ行くと、店員にネックレスのようなものを見せてもらっている男女がいた。女性の着ている鮮やかなドレスに目が惹かれる。その側には侍女のような女性と護衛のような男性が2人を見守っていた。
「あれ!星輝がいるじゃん」
「ん?隣にいるのはマリーナ王女だね!2人で買い物に来てたんだ!」
白麗と明明の言葉で、ネックレスを見せてもらっている男女がマリーナと星輝であることに瑠奈も気が付く。2人とも美男美女でお似合いに見えた。
星輝がマリーナにネックレスを指差したが、マリーナは気に入らないのか首を振った。
星輝が残念そうな表情になって、マリーナは柔らかく笑った。星輝もマリーナも自然体で、本当に楽しそうに過ごしているのが端から見ていても分かる。
まるで、2人だけの世界だった。
瑠奈は星輝のことがますます分からなくなった。瑠奈に抱きしめてきたり瑠奈が元の世界に帰るのを嫌がるくせに、マリーナと仲良く買い物をしている。
知らなかっただけで、マリーナと星輝は仲が良かったのか。それとも、星輝はいろんな女性に手を出すタイプなのか。考えても、よく分からない。
瑠奈はなんだか落ち着かず、2人を凝視してしまう。
瑠奈達の視線に気がついたのか、マリーナは瑠奈の方を見て、口元を歪めて笑った。
マリーナは、星輝の二の腕を触り、少し背伸びをして星輝に耳打ちする。何を言われたのか、星輝は色白の肌を赤く染めた。
「なんだかラブラブだね?星輝が顔を赤くするなんて」
「確かにね〜!星輝さんにも春がきたねぇ」
白麗と明明は2人の仲を応援しているみたいで、瑠奈はこれ以上この店に居るのが辛くなってきた。
退店すると白麗に告げて、瑠奈は逃げ出すようにお店から出た。
そんな瑠奈をマリーナ王女は嬉しそうに見ていた。