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 瑞光はマリーナから解放されて、執務室で1人考えていた。


 マリーナが教えてくれた『竜人の大切な物』は恐らく逆鱗のことだろう。上手くいくか分からないが、手掛かりは今のところ1つしかなく、やってみるしかない。

 

 瑠奈は既に1個逆鱗を手にしている。

 何者かに渡されたという、紫色の逆鱗だ。


 残りは1個だ。集めるのは簡単だ、瑞光の逆鱗を使えばいい。


 ただ、そのタイミングが悩ましい。

 逆鱗は竜化しないと取れない。


 (マリーナ王女が帰国する3日後かな……)


 番である瑠奈の希望を一刻も早く叶えてあげたいのだけれど、マリーナのせいで時間が取れない。


 マリーナはやたら瑞光の側にやってくる。いいタイミングで白麗が来てくれたから、今執務室にいれるけれど、そうでなければ今は昼食をマリーナと摂っていただろう。


 番以外の女性と過ごすなんて、瑞光にとって苦痛でしかないのに。












 「あれ………?星輝、お前、瑠奈と話した?」


 瑞光の元へやってきた星輝は、瑠奈の甘い薫りを身に纏っていた。瑞光は低い声でそれを指摘する。

 

 「…………っ!すみません………っ!偶然、通路でお会いして……、ほんの少し、お話を………」

 「ふうん……………?」


 星輝は瑞光に言われて顔を真っ青にしているが、瑞光は星輝にはそこまで嫉妬心を抱いていない。兄弟だからだろうか。


 「兄様は、番様を元の世界へ帰らせる、その気持ちにお変わりはないんですか?」

 「だって、番からのお願いだよ?叶えてあげないと」


 竜人にとって番からの要望は絶対である。そんな当たり前なことどうして星輝は聞いてくるのだろう。  


 「兄様は、本当にそれでいいんですか……?番様は、我々の世界が嫌いではないそうです!だったら、この世界に残ってもらえるチャンスがあるのでは……?」

 「は………………?」

 「番様がこの世界のことを好きになってもらうように、僕も尽力しますので…………!!」


 ただ話を聞いてくれていると思ってた瑞光が、いきなり星輝の口もとを強い力で抑えた。


 「お前、何言ってんの??瑠奈に気があんの?」


 必死に首を左右に振って、星輝は否定の意を示す。


 「それ、本当………?」


 星輝は瑞光の本気の怒りを感じ、コクコクと何回も頷く。星輝の様子に満足した瑞光は、星輝の口元から手を離した。


 「兄様、すみません…………ッ!」


 瑞光が優しい人だから、瑠奈について語っても許してくれると思っていた。どうしても瑠奈にこの世界に残って欲しかったから、星輝はつい口にしてしまった。


 「星輝は私のことを思って言ってくれたって分かるんだけどね。でも、瑠奈の進退をお前に、決めてほしくない。瑠奈の希望が最優先だから。分かった?」

 「はい…………」


 どこか納得してないような表情を浮かながら、星輝は同意の言葉を述べた。


 瑠奈の帰還の手がかりを得られたことが星輝に伝わったら、妨害するかもしれない、内緒にしておこうと瑞光は判断した。








 星輝は、瑠奈の帰還は、全く理解できなかった。


 瑞光は番である瑠奈を深く深く求めている。

 瑠奈は瑞光に愛され、幸せになることができる。

 

 元の世界に戻る必要なんてない。


 僕が、瑠奈の帰還を阻止する………!!!

 何をしてでも。

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