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 (瑠奈が……!来てくれた…………!!)


 瑠奈に一刻も早く会いたくて、瑞光は自ら扉を開けた。



 



 扉の先には、瑠奈がいた。

 瑠奈は白い寝衣を着ていて、髪の毛を下ろしていた。日中とは違う艶やかな雰囲気に、瑞光の胸が高鳴った。


 瑠奈からはほのかに甘い香りがする。

 これは番からするという香りだろうか。


 (かっかわいい……………!!!)


 不安げに瑞光を見てくる瑠奈が可愛くて堪らない。

 ニヤけそうになる顔を瑞光は必死に我慢する。


 先ほどまでの不安定な気持ちは瑠奈の姿を見ただけで、瑞光からあっという間に消え去っていた。






 

 部屋の中の椅子に瑞光は瑠奈を座らせる。

 瑠奈の向かい合わせで座った瑞光は、瑠奈に聞いた。


 「夜遅くにどうしたの……?」

 「あの、王様に確認したいことがあって……、夏蓮さんに相談したら今がいいよってアドバイスもらったんです」

 「私は問題ないけど、瑠奈、こんな夜遅くに男の所に1人で来たら危ないよ?」

 「そうですか?明明が言ってたんですけど、王様は、運命の番以外には興味ないんですよね?だから大丈夫かと思って」


 瑠奈は満面の笑みで答える。


 瑠奈が瑞光を信じてくれるのは嬉しい。ただ、瑞光の運命の番は瑠奈である。


 (瑠奈、君にとって一番危険な男は私かもしれないよ?)


 それは瑠奈に一生伝えられない言葉だった。

 瑠奈の発言に答えることはせず、瑞光はただほほ笑んだ。



 「あの、私は元の世界に帰ってもいいんでしょうか……?」

 「瑠奈が帰りたければ、帰っていいんだよ?」

 「そう、ですよね……。夏蓮さんも明明ちゃんも私に良くしてくれてるから何だか心苦しくなって……」


 瑠奈は少し良くされただけで周りの人に心を傾けている。番が他の人を気にしているのが気に食わないが、心根の優しい瑠奈が瑞光はますます好きになった。


 「瑠奈は優しいね」

 「優しいだなんて……!!」


 王である瑞光に褒められて、瑠奈は恐れ多い気持ちになった。

 瑠奈は右手を左右に振って否定する。


 「瑠奈はそもそもこの世界の人間じゃないし、この世界に囚われなくてもいいんだよ。大丈夫、瑠奈が来てくれただけで救われている」

 「そう……ですか……?」

 「瑠奈の気持ちを最優先にしてくれていい」

 「ありがとうございます……」


 瑞光は、急に夜遅くに執務室を訪ねても、同じことを何回も聞いても、優しく答えてくれる。瑞光こそ優しい、と瑠奈は思った。


 「ところでといっては何だけど、私のことは名前で呼んでくれない?」


 瑞光は自分の番が自分以外を名前で呼ぶのに、自分は肩書呼びで、それが寂しかった。

 いずれ別れることになろうが、元の世界に戻るまでは瑠奈にとって一番親しい人になりたい。


 「えっ……!?御名前で呼ぶなんて恐れ多すぎます!」

 「瑠奈はこの国の人間ではないでしょ?だから、王としてではなく、対等な者として見てほしいんだ」

 「でも…………」

 「お願い、お願いだから……。瑞光って、呼んで」


 瑞光の黄金色の瞳が瑠奈を捉える。その表情は切なげで、瑠奈は心が揺さぶられた。


 本人からの要望だから、名前で呼んでもいいかも。瑠奈は小さな声で呟いた。


 「瑞光、さん」


 「……………………ッ!!!!」


 瑠奈の言葉を聞いた瑞光の色白の肌が一瞬にして真っ赤に染まる。


 「ヤバっ……!!今、私のこと見ないで………!!!」


 瑞光は自分の顔を両手で隠して俯く。それでも、瑞光の耳は真っ赤で赤面しているのがバレバレだ。


 「こんなん、全然かっこよくないよ………恥ずかしすぎる………失敗した………」

 

 瑠奈は落ち込む瑞光の肩に優しく触れた。恐らく自分よりも年上であろう瑞光がなんだか可愛く見えてきた。


 「瑞光さんはいつだって素敵ですよ」

 「えっ…………?本当………!?」


 顔を上げた瑞光は、目をキラキラ輝かせていて、凄く嬉しそうだ。


 (瑞光さんって、思った以上に優しい人だな。それに、なんだか可愛い)


 今日話に来て良かった、瑠奈は思った。






 




 

 「昨夜、番様が来られましたか…………!?」


 瑞光は何も伝えていないのに、昨夜瑠奈が執務室に来たことに星輝は直ぐに気が付いた。

 

 「実はね。昨日お前に勧められて、会わないって言ったのに、会ってしまって。ごめん」

 「いえ、それは別によろしいのですが……。兄様が、お呼びになられたんですか?」

 「それがね、瑠奈から来てくれたんだ」


 昨夜の瑠奈を思い出した瑞光は、星輝の前なのに、顔が緩んでしまう。


 瑞光を見る星輝の顔は、冷ややかだった。


 「そうですか、分かりました」

 

 それだけ瑞光に述べると、何も言わず足早に出ていった。

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